機能性便秘(4歳以上)
【はじめに】
ここではRome IVに準じた話をしたいと思います。4歳未満に関しては別項に記載してあるので参考にしてください。
【機能性便秘とは】
便秘によって何らかの身体症状が現れ、診療や治療を必要とする場合を便秘症と呼びます。持続期間によって慢性便秘と一過性便秘に分類されます。発生機序により解剖学的異常を含む器質的便秘とそれ以外の機能性便秘に分類されます。
【頻度】
12%程度ととても頻度は高いです。日本の頻度は明らかではありませんが5.7~31.9%とやはり決して少なくありません。
【好発年齢】
好発年齢は3時期あります。
まずは離乳食(補完食)開始時、これは、便のもとが入ってくるからです。また、まだ腹筋も弱く腹圧をかけることができず、いきみに合わせて骨盤底筋を弛緩させるといった協調運動ができません。
2番目の時期がトイレトレーニング期です。この時期が最も多いと言われています。この時期は腹筋も発達してきて、排便時の協調運動もできるようになってきていますが、逆に骨盤底筋を収縮させて排便を我慢することも可能となります。今まで、オムツを履いて好きなところで、好きな時期に、好きな体勢で排便した子どもが、トイレトレーニングによりトイレでの排便を促されたり、流れる水の音が怖かったり、何らかの要因をきっかけに便秘になってしまいます。
3番目の時期は小学生です。小学校に入ると、朝の登校前に時間がなく我慢してしまい、授業中便意を催してもトイレに行くのが恥ずかしい、友達からからかわれる、学校のトイレが汚い、寒い、和式便器しかないなどの理由で我慢してしまい、悪循環になってしまいます。
【悪循環】
何らかの要因で適切なタイミングに排便せずに、直腸、結腸内に便が長時間保持されると、便中の水分が大腸粘膜に吸収され、便はますます硬くなってしまいます。そのため排便時に痛みを感じるようになり、ますます排便を我慢してしまうのです。さらに、直腸内に便が貯留した状態が続くことにより便意の知覚が鈍ってしまい、本来生じるはずの便意が起こらなくなってしまいます。そうなると直腸内に大きな便塊がつまり(便塞栓)、その脇から漏便(fecal incontinence)をきたすことさえあるのです。便秘は上部消化管の蠕動低下も引き起こし、食欲低下や腹部膨満、腹痛を誘発し、膀胱を圧迫すれば夜尿症の原因にもなり得ます。便秘は患児のQOLを著しくそこなうため治療の必要な病気なのです。
【診断基準】
4歳以上の小児慢性機能性便秘症のRome IV診断基準
少なくとも1週間に1回以上、以下の項目のうち2項目以上を、最低1ヶ月以上にわたり認めるもので、過敏性腸症候群の診断基準を満たさないもの
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 1)排便回数が1週間に2回以下 | トイレで排便する回数が週2回以下 |
| 2)1週間に1回以上の便失禁 | トイレ以外で便が漏れる(fecal incontinence)エピソードが週1回以上 |
| 3)排便を我慢する姿勢がみられたり、過度の自発的な便貯留の既往 | 我慢姿勢(retentive posturing)や意図的に便を我慢しようとする行動がみられる |
| 4)排便時に痛みを伴う、あるいは、排便困難を認める | 排便に対する苦痛が何度も見られる |
| 5)直腸内に大きな便塊貯留がある | 触診や検査で下部直腸に大量の便があると確認される |
| 6)トイレがつまるほどの大きな便の既往 | 便の径が極端に太く、トイレを塞いでしまうような状態 |
適切な評価ののち、症状が他の病態で説明できない場合に診断する(炎症性腸疾患、甲状腺機能異常、神経疾患など)
【便秘の主な症状】
- 腹痛
- 裂肛(肛門痛、出血、肛門部掻痒感)
- 直腸脱、痔核
- 便失禁(overflow incontinence)、パンツへの便付着
- 肛門周囲皮膚びらん
- 嘔気・嘔吐
- 集中力低下
- 夜尿・遺尿
- 尿路感染症
【非薬物療法】
- 水分と食物繊維:水分は多ければよいというものではなく通常範囲の水分摂取、バランスのとれた食物繊維が推奨されています
- 運動:適度な身体活動はよいとされています
- 排便習慣形成:朝食後にトイレに座る習慣(胃結腸反射の活用)、嫌がらない環境を整えるようにします
【薬物療法】
1)便塞栓がある場合
- 高用量PEG(ポリエチレングリコール):1~1.5g/kg/日を3~6日間投与
- 浣腸:1日1回を3~6日
2)維持療法
- 浸透圧性下剤
- PEG3350(モビコール)1歳以上で第一選択
- ラクツロース:1日0.5~2ml/kgを3回に分割投与
- 酸化マグネシウム:1日0.04g/kgを2~3回に分割投与
- グリセリン浣腸:1回2ml/kg(最大1回40~50ml)
- 刺激性下剤
- ビサコジル(テレミンソフト)坐薬:乳幼児2mg、学童5mg、成人10mg
- センナ:1回量センナ錠(150mg)を15歳以上3~5錠、11~14歳2~3錠、1日2回まで
11歳未満は一般的に使用しない - ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン):症状を見ながら滴数を決める
整腸薬やヨーグルトはNASPGHAN(北米小児消化器肝臓栄養学会)およびESPGHAN(欧州小児消化器肝臓栄養学会)ではルーチンには推奨していません。特に、重症例では効果がないとされています。
【治療期間】
少なくとも2ヶ月以上の治療継続が推奨されています。症状消失後1ヶ月程度は維持量を継続します。再発が多いのが特徴です。










