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病児保育室 子宮頸癌予防ワクチン(HPV:ヒトパピローマウイルスワクチン)

当院ではHPVワクチンの接種を積極的に行うことを勧めています。
初めて性交渉を経験する前に接種することが最も有効です。
定期接種で受けることが出来るうちに接種しましょう!

【我が国の子宮頚癌の現状】

子宮頚癌は年間約1万人が罹患し、約2900人が死亡しています。つまり毎日約8人の方がこの病気で亡くなっていると言うことです。
しかも、その数は年年増加傾向にあり、20歳〜40歳台の若い世代の増加が著しいのが特徴です。

 

【子宮頚癌の原因】

1983年にドイツのツア・ハウゼン氏が、初めて子宮頚癌からHPV16型を分離し、子宮頸癌の原因がHPV感染であることを証明しました。
ガンの原因は全て遺伝子の変異によるものですが、何故この変異が起こるのかは遺伝性腫瘍などを除けば不明です。
しかし、子宮頚癌はそのほとんどがHPVによるものであることが証明されていることが特徴です。この研究が評価されハウゼン氏は2008年にノーベル医学・生理学賞を受賞しています。
また、HPVワクチンの開発に尽力したNIH(米国国立衛生研究所)のダグラス・ローウィー所長代行ら2名が2017年のラスカー賞を受賞しています。
ラスカー賞はノーベル賞の前哨戦とも言われており、iPS細胞でノーベル賞を受賞した京都大学の山中教授もこのラスカー賞を事前に受賞しています。

 

【子宮頚癌の予防法】

一次予防と二次予防があります。一次予防はパピローマウイルスの感染を防ぐこと、つまりワクチンを接種することです。
二次予防は早期発見、つまり子宮頚癌健診を受けることです。
どちらも大変重要です。
日本の現状はワクチン接種の積極的勧奨の差し控え、健診の受診率も先進国の中で最低レベルです。健診の受診率を上げればワクチンの接種をする必要がないと言っている政治家がいましたが、健診で見つかれば子宮頚部の円錐切除を行うことになります。

また、健診の感度は50〜80%ですので10人に数名は見逃すことになります。特異度は70〜90%ですので10人に数名は必要ないのに切除されてしまう可能性もあるのです。

円錐切除を受けても妊娠は出来ますが、その後の妊娠における早産のリスクを高めたり、子宮の入り口が狭くなったりする可能性があり、将来の妊娠・出産に影響することがあります。

 

【HPVワクチンの効果】

HPVワクチンの接種を国のプログラムとして導入したオーストラリア、アメリカ、イギリス、北欧などの国ではHPVワクチン感染や前がん病変の発生が有意に低下していることが報告されています。
フィンランドの報告ではHPV関連のガンがワクチン接種した人たちで全く発生していないと報告しています。
日本でも新潟県の研究でHPV16型・18型の感染率が約1/20に減っていることが判明しています。3万人規模で行われた「名古屋スタディ」でも子宮頚癌ワクチンと接種後の症状に関連はなかったと結論づけられています。

 

【世界での考え方】

HPVワクチンは全世界130カ国以上で販売されていて、65カ国で国のプログラムとして接種されています。
WHO(世界保健機関)はHPVワクチンを国のプログラムとして導入すべきと繰り返し推奨しています。
また、WHOのワクチンの安全性に関する諮問機関(GACVS)は「乏しいエビデンスに基づく政策決定」と日本の判断を名指しで非難しています。
海外では既に9価のワクチン(ガーダシル9)が接種されている国もあります(日本では2価と4価)。

 

【アカデミア(学術団体)の考え方】

ノーベル賞を取った本庶佑氏も会見で、日本のHPV接種率の低迷について「国際的にみても恥ずかしい」、「子宮頚癌ワクチンの副作用というのは一切証明されていない。
因果関係があるという結果は全く得られていない。
『証明できない』と言うことは、科学的に見れば、子宮頚癌ワクチンが危険だといえないという意味だ」と発言しています。
また、日本小児科学会、日本産婦人科学会を含めた17学術団体は2016年4月18日に「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(子宮頚癌予防ワクチン)接種推進に向けた関連学術団体の見解」を発表し、本ワクチンの積極的な接種を推奨しています。

 

【副反応】

HPVワクチンの副反応であると言われている代表的なものを記載します。

①HPVワクチン関連神経免疫異常症候群(Human papillomavirus Associated Neuropathic Syndrome;HANS)

2014年、小児科医で元横浜市立大学小児科学名誉教授の横田俊平、政策研究大学院大学シニアフェローの西岡久寿樹氏、帝京大学医学部客員教授の黒岩義之氏らのグループが提唱した概念です。

下記のものが彼らの主張する診断基準です。

ちなみに彼らの実験論文「HPVワクチンと百日咳毒素の併用投与後の血管細胞アポトーシスによるマウス視床下部破壊」は英国の科学誌NatureのScience Reportにいったんは掲載されましたが、撤回されています。また、この概念は国際的には認められていません。

②複合性局所疼痛症候群 (Complex Regional Pain Syndrome; CRPS)
外傷、骨折、注射針等の刺激がきっかけになって数週間以内に発症する慢性疼痛症候群です(約860万接種に1回の頻度)。HPVワクチンに特異的なものではありません。

③急性散在性脳脊髄膜炎(Acute Disseminated Encephalomyelitis; ADEM)

ウイルス感染・ワクチン接種後に急性 (数日~2週間)後に発症する炎症性脱髄疾患。脳や脊髄を散在性におかす病気です(約430万接種に1回の頻度)。
HPVワクチンに限った副反応ではありません。

④ギラン・バレー症候群(Guillan-Barre Syndrome: GBS)

多くは先行感染後に続発する急性四肢麻痺です(約430万接種に1回)。
これもHPVワクチンに限った副反応ではありません。

⑤体位性頻脈症候群(Postural tachycardia syndrome; POTS)

起立時に頻脈と起立性失調症状を来す疾患です。起立性調節障害の一種とされており、ワクチン接種に関係しないでも思春期の子どもに見られます。

⑥血管迷走神経性失神

色々な原因により自律神経のバランスが著しく崩れることにより、脳に行く血液が減少するために脳貧血状態になり、失神やめまいなどを生じる状態のことを言います。失神の原因で最も多いのが血管迷走神経性のものです。原因として代表的なものが痛みと恐怖です。これも、どのワクチンでも起こりうる副反応です。

 

【安全性】

WHOは世界中の最新のデータを計測的に解析して、HPVワクチンは極めて安全であると結論づけています。
200万人以上を対象にフランスで実施した調査結果を照会してCRPS(複合性局所疼痛症候群)、POTS(体位性起立性頻拍症候群)、自己免疫疾患の発生率は接種者と一般集団で差がないとして、「仮にリスクがあったとしても小さく、長期に及ぶ癌予防というベネフィットを考慮すべき」と言及しています。

医師でジャーナリストの村中璃子氏はHPVワクチン接種後の様々な激しい症状をワクチンの副反応とするメディや厚労省、そして上記の横田医師らの研究グループに対する批判を続け、2017年11月「ワクチンについての誤情報を指摘し、安全性を説いた」と言う功績で、由緒ある「ジョン・マドックス賞」を受賞しています。
彼女の著書に「10万個の子宮」があります。

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