機能性ディスペプシア(FD:Functional Dyspepsia)
【機能性ディスペプシアとは】
ディスペプシアとは、心窩部を中心とした上腹部の慢性・再発性の不快な症状を示すものです。心窩部痛、心窩部灼熱感、食後膨満感、早期満腹感などが含まれます。
成人の機能性ディスペプシアは「症状の原因となるような器質的な、全身性、代謝性の疾患がないにもかかわらず、食後の胃もたれ感や早期飽満感、心窩部痛、心窩部灼熱感のうち1つ以上があり、これらの症状が少なくとも6ヶ月以上前からあり、最近3ヶ月は上記の基準を満たすもの」とされています。小児の診断基準は下に書いておきます。
ディスペプシア症状を訴える患者の70~80%が本症に該当すると言われています。
【病態】
FDの病態はまだ明らかではありません。しかし、胃十二指腸運動能異常、内臓知覚過敏、心理社会的因子、胃酸分泌、遺伝的要因、生育環境、感染性腸炎の既往、運動・睡眠・食事内容や食習慣などのライフスタイル、消化管の微細炎症などの多因子が複合的に関与しているものと考えられています。
【頻度】
一般人口における有病率は約7~16%とされています。
【診断基準】
ここではRome IVの診断基準を示します。
つらいと感じる下記症状のうち1つ以上が、月に4日以上あり、少なくとも最近2ヶ月持続する
- 食後の胃もたれ感
- 早期飽満感
- 排便に関連しない心窩部痛または心窩部灼熱感
- 適切な評価の後、症状を十分に説明できる他の疾患がない
サブタイプ
(1) 食後愁訴症候群(postprandial distress syndrome:PDS)
- 通常の食事摂取が妨げられるほどつらい食後の胃もたれ感または早期飽満感がある
補足的特徴として、上腹部飽満感、食後の悪心、過剰な噯気(げっぷやおくび)がある。
(2) 心窩部痛症候群(epigastric pain syndrome:EPS)
以下のつらいと感じる症状がすべてある
- (日常生活に支障をきたす)心窩部痛、灼熱感
- 腹痛は腹部全体ではなく、心窩部以外には限局せず、胸部でもない。そして排便や放屁によって改善しない
補足特徴として
- 焼けるような痛みだが、胸骨後部にはない
- 一般に痛みは食事で誘発もしくは軽減するが、空腹時に起きてもよい
PDSは頻度が高く全体の約67%を占めます。
EPSは約15%、両者の重複型が約18%とされています。
【FDの診断と治療のチャート】

出典:日本消化器病学会 編「機能性消化管疾患診療ガイドライン2021―機能性ディスペプシア(FD)(改訂第2版)」南江堂
【鑑別診断】
消化性潰瘍、逆流性食道炎、Helicobacter pylori菌感染による慢性胃炎、十二指腸炎などがあげられます。
【治療】
原因に応じた治療が基本になります。ヘリコバクター・ピロリ除菌(陽性例)、PPIによる酸抑制療法、プロキネティックスなどがサブタイプに応じて選択されます。
1)生活習慣の指導
- 規則正しい食事、朝食を抜かず、摂取回数を整える
- ストレス軽減、学校や家庭でのストレス因子を可能な範囲で調整
- 十分な睡眠・運動・自律神経バランスを保つために有効
2)薬物療法
- プロトンポンプ阻害薬(PPI)
- ランソプラゾール(タケプロン):1~2mg/kg/日、分1~2回
- オメプラゾール(オメプラール):上記と同様に使用されますがrapid metabolizerでは効果は乏しい可能性があります
- エソメプラゾール(ネキシウム):日本人の一部にみられるPPIが効きにくい遺伝子多型を持つ場合、エソメプラゾールに切り替えることで改善することがあります。
体重20kg未満:10mg/日 体重20kg以上:10~20mg/日を1回投与
- 腸蠕動薬
- ドンペリドン(ナウゼリン)
小児用量:0.25~0.5mg/kg/回、1日3~4回まで
QT延長などの副作用に注意が必要です。2週間程度で効果がなければ中止が推奨されています。開始前と開始後7~10日に心電図を取ることが勧められています。 - メトクロプラミド(プリンペラン)
小児では0.1~0.2mg/kg/回を1日3回が目安です。錐体外路症状に注意が必要です。 - プルカロプリド:日本では未承認です。
- ドンペリドン(ナウゼリン)
- 漢方薬
六君子湯0.1~0.2g/kg/日、分3回 - コリンエステラーゼ阻害薬(アコチアミド:アコファイド)
成人用です。 - 抗うつ薬(低用量)
- アミトリプチリン(トリプタノール)
思春期以降で10mg/日から開始、1週間ごとに5mgずつ増量し25mg/日まで、効果発現には3~4週間要します。 - ミルタザピン(リフレックス、レメロン)
7.5mg/日から開始し、15mg/日まで増量可能です。
- アミトリプチリン(トリプタノール)










