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診療案内 急性虫垂炎(盲腸)

【頻度】

本邦での人口1万人に対する年平均虫垂切除数は、5歳未満では男女共0.6人、5〜9歳では男児6.9人、女児4.9人と増加し、10〜14歳では男性13.2人、女性8.5人と高くなります。この年齢以降では減少して15〜19歳では男性10.9人、女性7.1人、20歳以降では男性は4〜8人、女性2〜6人です。

【虫垂炎の種類】

本邦ではカタル性、蜂窩織炎性、壊疽性という分類がせれていますが、海外では複雑性と単純性に分類されています。

  1. カタル性虫垂炎:炎症が粘膜表層のみに限局しており、虫垂は軽度の腫大、発赤をきたしている状態です。
  2. 蜂窩織炎性虫垂炎:炎症が粘膜下層から筋層、漿膜に達し、虫垂間膜に至るまでび慢性に広がった状態です。虫垂は著明に腫大し、漿膜面のフィブリン沈着や炎症性の虫垂壁浮腫を認めますが、虫垂の壁構造は保たれているため腹腔内への細菌感染の波及は見られません。
  3. 壊疽性虫垂炎:蜂窩織炎性虫垂炎がさらに進行すると粘膜の破壊、虫垂壁の壊死、を来した状態で、腹腔内の感染を伴い、虫垂の自壊、穿孔により先行性腹膜炎を生じ得ます。
    1) 複雑性虫垂炎:組織学的診断では壊疽性虫垂炎に該当します。腫瘤形成性の有無や汎発性腹膜炎の合併は問いません。
    2) 単純性腹膜炎:画像診断で急性虫垂炎と診断され、複雑性虫垂炎でないもので、組織学的にはカタル性と蜂窩織炎性に相当します。

【発生機序】

虫垂内腔がリンパ濾胞の過形成や糞石などにより、狭窄、閉塞することにより生じます。

【症状】

右下腹部痛、食思不振、下痢、嘔吐、発熱で救急外来を受診することが多いです。なかでも、右下腹部痛、圧痛(押すと痛む)、嘔吐などは感度が高い症状です。一方、痛みの移動、下痢、反跳痛(痛むところを押して離した時により痛む)は得意度が高い症状です。しかし、実際の症状は時間経過とともに変化し、症状を的確に把握できないことが多いのです。特に乳幼児の虫垂炎は穿孔率が高く診断が難しいのが現状です。

【診断】

① スコアリングシステム

いくつかのスコアリングシステムがありますが、ここでは2002年に小児用に作られてPediatric Appendicitis Scoreに関して述べます。

3点以下では帰宅可能で翌日再評価
4〜6点 二次入院施設は紹介して画像検査による評価
7点以上 手術可能な施設に紹介
となっていますが、あくまでも参考です。

② エコー、CT検査

超音波検査、CT検査の感度、特異度はいずれも高く有用性は高いです。超音波は非侵襲的ですが術者の経験や患者さんの状態に依存し、CT検査はそれがないですが放射線被曝の問題があります。両者の特性を理解し患者の状態や目的に合わせて利用することが望ましいとされています。

③ MRI

MRIは診断制度が高いので、他の検査で診断が困難な時有用です。

④ 血液検査(CRP、プロカルシトニン)

CRPは日常よく用いられる炎症マーカーです。小児の虫垂炎の際のカットオフ値は3.0〜6.0mg/dlであります。
虫垂炎発症1日目では1.5mg/dl、2日目では4.0mg/dl、3日目では10.5mg/dlと日数が経過するにつれてカットオフ値が変化すると言われています。

【穿孔】

小児虫垂炎の穿孔(穴が空いて腹膜炎に進行する)率は15.9〜34.8%です。なかでも幼児期の穿孔率は学童期に比べて高率です。

【治療】

治療にはactive observation、保存的治療、手術があります。
Active observation:急性虫垂炎が疑われるが、画像診断で急性虫垂炎と診断できない場合に、輸液を行い経口摂取を禁じ4〜8時間ごとに、身体所見、白血球数、CRP、エコー検査などで再評価をくりかえし行う診療行為のことを指します。
保存的治療はある程度軽症の場合に抗生剤点滴で治療を行うことですが、いつでも手術できる施設で行うことが望ましいです。事前に抗生剤を使用することにより術後の感染リスクを減らすという報告もあります。
手術には開腹して行うものと内視鏡によって行うものがあります。

【鑑別診断】

急性腹症とは虫垂炎を含め急激に発症し、激しい腹痛を伴う数多くの疾患の総称で、早急に診断・治療(多くは手術)を必要とします。その全てが鑑別の対象となります。鑑別診断は幅広く、多くの消化器疾患、婦人科疾患、炎症性疾患が似たような症状を呈します。3歳未満や思春期の女児は誤診を来たしやすいようです。

などが挙げられます。

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