小児・思春期における反芻症候群 Rumination syndrome(RS)
【小児・思春期におけるRumination syndromeとは】
Rumination syndromeは消化管―脳相互作用障害(disorder of gut-brain interaction)の一つで摂取後まもなく努力を伴わずに胃内容物が口腔内に逆流し、その後再咀嚼・再嚥下または吐き出す行動を繰り返す病態です。
胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)と異なり、胸焼けなどの強い痛みや嘔吐を伴わないことが多く、乳児期(3~8ヶ月)と学童期〜思春期の2つに分類されています。乳幼児期のRumination syndrome(反芻)に関してはすでに述べました。
【頻度】
小児での有病率は最大7.2%で成人より多いです。難治性の逆流現象で紹介される小児の22~44%が最終的にRSと診断されるといいます。
【病態】
1)胃内圧の上昇
- 腹壁や横隔膜の無意識な収縮により胃内圧が上昇し、下部食道括約筋(LES)を押して開く形で内容が逆流する
- HRM(high-resolution manometry:高解像度食道マノメトリー)では、胃圧が30mmHg以上上がるパターンが典型的とされています
2)誘因:GERDやストレス
- 一部の症例では最初にGERDがあり、それがきっかけになることもあります。
- 不安やストレス状態が背景にあると、腹筋収縮が増幅されやすいとの報告もあります
3)学習された行動
- もともと他の機能性胃腸障害(機能性ディスペプシアやGERDなど)を発症し、それを軽減する動作として腹筋を収縮させ、逆流させる行為を学習してしまう説もあります
- 後にその刺激がなくなっても、習慣化して繰り返すようになる可能性が指摘されています
【診断基準(小児・思春期)】
| 項目 | 内容 | 留意点 |
|---|---|---|
| 主要症状 | ・食後に繰り返し胃内容物の逆流と再咀嚼、または口腔内への逆流後に吐き出す行為 ・食後間もなく(通常30分以内) ・睡眠中には起こらない |
・月齢・年齢によって症状の表現がことなる場合がある ・逆流した内容物は苦味や酸味などが少なく、再咀嚼しやすいと感じるケースも |
| 噴気(retching)を伴わない | ・発作的な吐き気(retching)を前兆とせずに無意識または意図的に食物が逆流 | ・吐き気や痛みをあまり伴わず、自然な“こみあげ”の感覚として説明されることがある |
| 除外すべき疾患 | ・適切な検査により、他の器質的な疾患(GERD、幽門狭窄など)や摂食障害(拒食症・過食症)が十分に否定される必要あり | ・明確な原因がみつからない場合に初めて機能性障害と診断できる ・食行動の異常(体型や体重に対する不安など)が主因の摂食障害は除外 |
| 症状の期間 | ・症状が診断の少なくとも2ヶ月前から持続している | ・2ヶ月以上の継続的症状が確認できるかが重要 ・家族や本人の観察日誌などが役立つ |
【診断の進め方】
基本的には臨床診断になります。他の疾患を除外するためには以下の検査を行うことがあります。
- 上部内視鏡やバリウム検査で器質的疾患や炎症を除外
- 24時間impedance-pH monitorを行いGERDと鑑別
- 最終的にはHRMとimpedance monitorの同時施行がゴールドスタンダード
- 胃内圧上昇(≧30mmHg)に続いてLESが弛緩し、食道内に逆流が記録されれば診断できます
- 検査中に食事を摂取し、食後3時間はモニタリングすることでイベントを確認できます
【治療】
治療の中心は行動療法(横隔膜呼吸法)であり、必要に応じてバイオフィードバックやバクロフェンなどの薬物療法が併用されます。
1)横隔膜呼吸法(diaphragmatic breathing)
患者は手を胸と腹に置き、息を吸うときに腹を膨らませ、胸は動かさないよう練習します。数分繰り返します。食後が良いとされています。
2)バイオフィードバック
横隔膜呼吸法をマノメトリーや表面筋電図(EMG)などで可視化します。日本では限られた施設でしか対応が可能ではありません。
3)薬物療法
- バクロフェン(鎮痙剤 ギャバロンなど):LES圧を高める作用があります
- 三環系抗うつ薬、抗不安薬:不安やうつ状態が強い場合に考慮します
- PPIや消化管運動促進剤:あまり効果は期待できません
4)その他の行動療法
- ガムを噛む
- カウンセリング・認知行動療法
- Nissen噴門形成術が検討されることもあります。










