言葉は人に教えられて覚えるものです。まわりの人の動作を理解し、真似ができるようになり、大人の言葉を理解していくうちに言葉と物が結びついて言葉となっていきます。
言葉を発するには唇から口蓋、舌、喉頭に至るまでの器官が意識しないで動くようになり,初めてできるようになります。
運動・言語発達
構音の完成する年齢の目安
言葉の遅れが最初に問題になるのは1歳6か月健診だと思います。
通常は1歳6か月になると意味のある言葉を5つ以上しゃべるようになります。この場合、問題は親の言うことを理解しているか?指さしができるかです。
特に自発的な指さしは発語の前段階で出てくる意思表示ですので、もうすぐ発語が出る期待がもてます。
しかし、欲しいものがあるときに自分で取るのではなく、保護者の手を引いて取らせるようなクレーン現象があるときは注意が必要です。
【確認事項】
1歳6か月児での言葉の遅れ
- 言語理解の有無、具体的には「ゴミ箱ポイ」程度の簡単な手伝いができるか?
- 身振り・手振り・指さしなどの言葉の代替として、身体を用いた表現ができるか?
- 模倣動作は可能か?
2歳では通常「ワンワンいた」などの2語文を話すことができます。
2歳になっても単語が出ていないときは1歳6か月同様に指さしや理解(「新聞持って来て」ママに〇〇渡してね)など)ができるかどうかで判断します。
指さしもでき、理解もして,その他にも異常(目を合わさない、目をすぐ離してしまうなど)がないときは表出性言語障害として経過観察することが可能です。
3歳になると自分の名前、年齢が言えるようになり、3語文(「パパ会社に行った」など)が言えるようになります。
少なくとも2語文を話すことができなければ詳しい検査が必要になります。
【発達性言語障害】
難聴、精神遅滞、自閉症などの原因がなく、運動発達や非言語性コミュニケーションが良好であるにもかかわらず、言語発達のみが遅れるものを発達性言語障害と呼びます。子どもの数%に認めます。
発達性言語障害には①表出性言語障害と②受容性言語障害があります。
- 表出性言語障害
言語理解は良好なのに発語が遅れるタイプです。言葉による指示に対して、身振り・指さしなどで反応するなど言語理解があるタイプで、就学前には約90%が正常範囲にキャッチアップすると言われています。 - 受容性言語障害
言語理解と発語ともに遅れるタイプで、約60%に就学時にも遅れが認めることが多いため注意が必要です。言語療法士などによる対応を考慮する必要があります。
発音の誤り
- カ行音がタ行音・ガ行音がタ行音になる(おかあさん→おたあさん)
- サ行音がタ行音・チャ行音・シャ行音になる(せんせい→てんてい・ちぇんちぇい・しぇんしぇい)
- サ行音がダ行音・シャ行音になる(ぞうさん→とうさん・じょうさん)
- ラ行音がダ行音になる(らいおん→だいおん)
- 鼻から抜けるような発声
- のどを詰まらせるような発声
- 一つずつ音は正しく発音できるのに、会話になると音の置換が多い
望ましい対応
- 食事の時にしっかりかむ
- 発語器官(口唇・舌)を使う遊びをする(シャボン玉、ストロー吹き、風船、紙風船、口じゃんけん、うがい等)
- 音の聞き出し遊び
発音の誤りに関係なく,話の内容をしっかり聞いて話を広げ会話を楽しむ。おしゃべり好きな子にする。発語器官をしっかり使うことにより動きが器用になり、正しい発語獲得へつながる
避けたい対応
- 発音の注意をする
言い直しをさせられて自己肯定感が下がります。話すことが嫌いになってしまいます。 - 言い直しをさせる
正しく発音できない音を何度も言わせても,間違った音の発音練習を繰り返していることに過ぎないので意味がありません。
【機能性構音障害】
3歳児健診で発音が不明瞭の時には聴力に問題がないかをチェックします。問題がなければほとんどの場合は改善していきます。
解剖学的な以上や神経・筋肉などの異常がないにもかかわらず、発音に誤りがあるときに「機能性構音障害」と呼びます。
発音に関わる運動機能の未熟性と正しい構音と誤った構音の弁別能力の遅れ、言語環境の問題が原因とされます。
4歳までにほとんどの場合は改善されますが、4歳を超える場合には言語訓練が必要となります。
いじめがあったり、自己肯定感をなくしてしまうようであればそれ以前から訓練が必要となることもあります。
以下の場合には専門医療機関(通級指導教室(ことばの教室)、言語聴覚士)への相談が必要になります。
- 年少さんでカ行音・ガ行音を全く発音できていない場合
- 5歳になってサ行音・ザ行音・ツの音が正しく発音できない場合
- 発音の誤りを気にしていて話すことを避けるようになった時
【器質性構音障害】
口蓋裂、粘膜下口蓋裂や鼻咽腔閉鎖機能不全など。これらは医療的な対応が必要となります。
【言葉の遅れの原因】
以下の様な原因が考えられます。
- 聴覚障害
- 中枢神経系の問題
- 発達性言語障害
- 構語障害
- 解剖学的問題(口蓋裂、口唇裂など)
- 環境因子(愛情剥奪症候群、親の精神疾患など
・精神運動発達遅滞
・知的障害
・自閉症スペクトラム
・発音障害
・構音障害
・発語失行症
注意すべきサイン
- どの年齢においても音に対する反応がない
- 9か月までに喃語がない
- 18か月までに有意語がない
- 24か月までに「こちらに来て」「座って」などの指示がわからない
- 36か月で意味のない言葉を多く言う
- 5歳以降に流暢に話せない
- どの年齢においても鼻声が強い、声の強さ、高さ、質に問題がある