先日、保健所の乳児健診で「食事の時に涙が出るのです」と相談を受けました。「いろいろな眼科で診てもらったのですがわからなかったのです。」「それは「ワニの涙現象」と言うのです」と説明してさしあげました。
偽善者が悲報に触れて嘘泣きをすることを「ワニの涙(crocodile tears)」と呼びますが、人間のこの現象は異なります。これは食事をするときに主に片方の目から涙が出る現象のことを指します。
先天性の場合、生まれつき唾液腺に行く神経が涙腺を支配する神経と迷走してしまうために生じるとされます。
後天性でも重度の顔面神経損傷(ベル麻痺など)が生じたのちに、回復過程で妙に涙っぽく、特に食事をするときに涙が流れてしまう状態になることがあります。
ちなみに、私が涙もろいのは歳のせいのなかこの現象なのかわかりません。
ワニは食事をするときに捕食した犠牲者に対して泣いているという言い伝えからこの名前がつきました。
しかし、ワニが餌に対して哀れむことはもちろんなく、角膜の保護のためや、塩類のコントロールのために塩類腺という分泌腺から涙がでるのです。
特に有効な治療法はありませんが、後天性の「ワニの涙現象」に対しては涙腺へのボツリヌストキシンが効果あることがあるそうです。
似たような症状のものにマーカス/ガン現象がありますので、そちらも参考にしてください。