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診療案内 小児の頭痛

【片頭痛】

小児にも片頭痛はあります。一般に5〜15歳の小児に発症します。片頭痛の原因は多因子性ですが、遺伝的素因と強く関係しています。約80%に家族歴があり60%は母親に20%は父親に片頭痛の既往歴があると言われています。

【症状】

前兆のない片頭痛は、成人および小児に最も多く見られる片頭痛です。小児における片頭痛は学校の長期欠席や学業不振をきたすため、怠けていると思われることもあります。社会的引きこもりや不安などを引き起こすこともあります。
しばしば嘔気、嘔吐、光過敏症、あるいは音過敏症を伴います。そのため、暗いところや静かなところを好むようになります。

支障度スコアとして小児用のPedMIDASがあります。

  1. 過去3ヶ月の間で、頭痛のために学校を休んだ日が何日ありましたか?
        日
  2. 過去3ヶ月の間で、頭痛のために学校を遅刻、早退した日は何日ありましたか?
        日
  3. 過去3ヶ月の間で、頭痛のために学校の勉強がいつもの半分以下しかできなかった日は何日ありましたか?
        日
  4. 過去3ヶ月の間で、頭痛のために家庭での物事(例えば雑用、宿題など)を行えなかった日は何日ありましたか?
        日
  5. 過去3ヶ月の間で、頭痛のために他の活動(例えば遊ぶ、外出する、スポールをするなど)を行えなかった日は何日ありましたか?
        日
  6. 過去3ヶ月の間で、活動に参加はできたものの、あなたの能力の半分も力を発揮できなかった日は何日ありましたか?質問5で数えた日数は入れないでください)
        日
  7.  PedMIDASの合計得点は何日ですか?    合計   日

     A 過去3ヶ月の間で、頭痛のあった日は何日ありましたか?   日
     (頭痛が1日以上続いた場合は、それぞれの日を1日と数えてください)

     B 頭痛の程度について0-10点で採点するとすれば、平均難点でしたか?   点
     (この場合、全く頭痛がなかった場合を0点、これ以上ないくらい痛かった場合を10点とします)

質問1~6に対して、あなたが記入した日数を合計し、スコア票に照合して支障度を評価し ます。 PedMIDASのスコアは、重症度に応じて以下の4段階に分類されます。

 

評価段階 定義 スコア (合計日数)
I. 日常生活に支障全くなし、またはほとんどなし 0〜10
II. 日常生活に軽度の支障 11〜30
III. 日常生活に中等度の支障 31〜50
IV. 日常生活に重度の支障 51以上

 

質問A、Bをも含む全ての回答結果を評価することにより、頭痛による日常生活への支障度 のみならず、重症度をも確認できる仕組みになっています。

【前兆】

通常5〜60分間持続し、頭痛は前兆の最中または1時間以内に始まります。視覚性、感覚性、または言語(障害)性の場合があります。

【診断基準】

前兆のない片頭痛の診断基準では、少なくとも5回の発作が必要です。

  1. 4〜72時間持続(小児では2時間以上)
  2. 以下の特徴のうち、2項目以上を有する
    a.片側または両側の前頭部または側頭部の痛み
    b.拍動性またはズキズキする
    c.中等度から重度のいたみ
    d.日常的な身体動作によって増悪する、あるいはそれを避ける
  3. 以下のうち、少なくとも1項目を有する
    a.悪心または嘔吐
    b.光過敏または音過敏
  4. 他の疾患によらない

片頭痛の発作中に入眠してしまし、目覚めた時には頭痛を認めない患者では、発作の時間を目覚めた時刻までとみなします。

小児及び思春期(18歳未満)では、片頭痛発作の持続時間は、2〜72時間としても良いかもしれません。

小児および思春期の片頭痛は成人の場合に比べて両側性であることが多いです。片側性の頭痛は思春期のおわりから成人期の初めに現れるのが通例です。片頭痛の痛みは通常、前頭側頭部に起こります。小児における後頭部痛は稀で、診断には慎重になります。

【治療】

急性期にはアセトアミノフェン、イブプロフェンが使用されます。イブプロフェンの方が効果はよいです。6歳以上ではトリプタン系の薬剤のいくつかが使用可能です。

小児・思春期の片頭痛急性機治療薬の投与量
鎮痛薬 投与量
イブプロフェン(ブルフェン) 5〜10mg/kg
アセトアミノフェン(カロナール) 10〜15mg/kg
トリプタン 小児期
(6〜12歳)
スマトリプタン
(イミグラン)
点鼻薬 20mg
リザトリプタン
(マクサルト)
<40kg:1/2錠(5mg)
>40kg:1錠(10mg)
思春期
(13〜17歳)
スマトリプタン
(イミグラン)
1錠(50mg)
点鼻薬20mg
皮下注射1A(3mg)
リザトリプタン
(マクサルト)
1錠(10mg)
ヱレトリプタン
(レルバックス)
1錠(20mg)
ナラトリプタン
(アマージ)
1錠(2.5mg)
ゾルミトリプタン
(ゾーミッグ)
1錠(2.5mg)
ナプロキセン+スマトリプタン
(ナイキサン+イミグラン)
ナプロキセン2〜3錠(100mg/錠)
スマトリプタン1錠(50mg)

 

成人ではCGRP(calcitonin-gene related peptide)に対する抗体を用いた生物学的製剤を使用することもあります。

【予防】

規則正しい生活、適度な運動、刺激物を避けたバランスのよい食生活、頭痛予防体操、バイオフィードバック支援リラクセーション療法などがあります。
薬物療法には抗痙攣剤のトピラマート、バルプロ酸、β遮断剤、三環系抗うつ剤、シプロヘプタジンなどがあります。これらの薬剤の効果は限定的です。

 

予防薬 投与量
三環系抗うつ薬 アミトリプチリン(トリプタノール)錠
10mg,20mg
5〜10mg/日から開始、就寝前
維持量5〜60mg/日(1.5mg/kgまで)
抗てんかん薬 トピラマート(トピナ)錠
25mg,50mg,100mg
細粒10%
25mg(0.5〜2mg/kg)から開始
維持量25〜600mg(9mg/kgまで)
β遮断薬 プロプラノロール
(インデラル)錠10mg
20〜30mg(0.5〜1mg/kg)から開始
維持量30〜60mg/日
Ca拮抗薬 ロメリジン(ミグシス)錠5mg 10mg/日から開始
維持量10〜20mg/日

 

【緊張性頭痛】

締め付けられる、圧迫される、またはバンドでしめつけられるなどと表現される痛みを伴い、軽度から中等度のびまん性頭痛が特徴とします。

厳密には肩の凝りからくるものではありませんが、首や肩の筋肉痛や筋緊張を伴います。痛みは1時間から数日持続します。典型的には嘔気や嘔吐、光過敏、音過敏あるいは前兆を伴いません。
薬物乱用頭痛(MOH)を生じやすいので気をつけましょう。天候にも影響しやすいです。

【小児・思春期学童の慢性連日性頭痛(chronic daily headache; CDH)】

1日に4時間以上の頭痛が1ヶ月に15日以上続く頭痛です。慢性片頭痛、慢性緊張型頭、新規発症持続性連日性頭痛が含まれます。
頭痛が理由で不登校・不規則登校をきたすことがあります。学校との連携も必要です。

【片頭痛に関連する周期性症候群】

再発性消化器障害、周期性嘔吐症候群、腹部片頭痛、良性発作性めまい、小児良性発作性斜頸などがあります。

【二次性頭痛】

髄膜炎、脳炎、または脳膿瘍、出血や腫瘍による頭蓋内圧亢進症、脳腫瘍、脳外傷、薬物乱用、カフェインの離脱症状などがあります。病歴聴取と身体所見で鑑別は可能ですが脳の画像検査が必要になることもあります。

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