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診療案内 甲状腺機能亢進症(Basedow病:バセドウ病)

甲状腺機能亢進症(Basedow病:バセドウ病)

 甲状腺機能が亢進する病気はバセドウ病だけではありませんが、ここではBasedow病に関してお話しさせていただきます。
 甲状腺ホルオン産生・分泌が亢進する甲状腺機能亢進症と甲状腺ホルモンの産生を伴わない甲状腺ホルモン過剰状態を併せて甲状腺中毒症と呼びます。

 甲状腺機能亢進症にはBasedow病の他、TSH産生腫瘍、絨毛癌、卵巣甲状腺腫、中毒性多結節性甲状腺腫(toxic multinodular goiter: TMNG)、中毒性甲状腺腫(toxic adenoma)先天性甲状腺機能亢進症(TSH受容体またはGタンパクの機能獲得型変異)、ヨウ素過剰などがあります。

 破壊性甲状腺炎の原因としては、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、急性化膿性甲状腺炎、放射線性甲状腺炎、薬剤性甲状腺中毒症などが挙げられます。
しかし小児の甲状腺機能亢進症の大部分はBasedow病です。

【定義】

 自己免疫機序により甲状腺がびまん性に腫大し甲状腺機能亢進症状を呈する疾患をバセドウ病と呼びます。
Basedowはこの病気を研究したドイツ人医師の名前ですが、英語圏ではもう一人の研究者であるイギリス人の名前からGraves’ diseaseと呼んでいます。

【頻度】

 20歳代の女性に多いのですが、幼児期から発症例が認められます。
甲状腺疾患の家族歴が多いことも知られています。

【病因】

 自己免疫機序により、甲状腺細胞の表面にある甲状腺刺激ホルモン受容体に対する抗体(TSH receptor antibody: TRAb、thyrotropin binding inhibitory immunogloblin: TBH, thyroid stimulationg antibody; TSAb)が原因となります。
これらの抗体が受容体に結合すると甲状腺が過剰に分泌されます。

【症状】

 甲状腺ホルモンの作用は全身の細胞での代謝の促進です。その過剰が症状としておこります。
甲状腺腫大、動悸、眼球突出をメルセブルグの3徴と呼びますが、全部揃うことはあまりありません。
 健診の際に頻脈(脈が早い)ことで見つかることもあります。
甲状腺の腫大の程度には七条の分類というものがあります。

 

甲状腺腫大

多汗

易疲労感

落ち着きがない

手のふるえ

眼球突出

体重減少

食欲亢進

頻脈

68.4%

53.4%

50.4%

47.4%

45.1%

38.3%

36.1%

35.3%

33.8%

動悸

学業成績低下

運動能力低下

暑がり

排便回数増加

微熱

その他

24.8%

24.1%

15.0%

12.0%

11.5%

10.5%

不眠、口渇、や尿、無月経

 不登校や発達障害だと思われていた子どもが実は甲状腺機能亢進症であったということもありますので、そのような子には検査をしておくほうが良いでしょう。

【検査・診断】

 TSH、fT4、fT3の測定、TRAB(TBH)やTSAbなどの自己抗体の測定、一般血液検査、甲状腺超音波検査、甲状腺ヨード摂取率やシンチグラム検査などを行います。
診断にはBasedow病の診断ガイドラインがあります。

https://www.japanthyroid.jp/doctor/guideline/japanese.html#basedou

【治療】

Basedow病の治療には抗甲状腺薬によるものとそれ以外のものがあります。薬剤以外の治療には外科的に摘出する方法、放射線ヨード内用による放射線治療がありますが、小児では薬剤が第一選択となります。

1. 初期治療

 Methimazole: MMI(商品名メルカゾール)が第一選択薬となります。
初期投与量は0.5〜1mg/kg/日(分1〜2)(最大量30mg/日)で開始後2週間後に副作用をチェックします。
2〜3ヶ月は2週ごとにチェックが必要です。MMI以外ではpropylthiouracil: PTU(商品名プロパジール、チウラジール)5〜10mg/kg/日、分3(最大量300mg/日)があります。

 軽度な副作用には皮疹、軽度肝障害、発熱、関節痛、筋肉痛などがありますが警戒しない場合は薬剤の変更をします。
 重症副作用には無顆粒球症、重症肝障害、多発性関節炎などがあり、これらの出現時には薬剤を中止し無機ヨード、外科的手術、放射線治療に変更します。

PTUの副作用にはMPO-ANCA関連血管円症候群があるので尿検査も必要です。
甲状腺機能が正常化したら減量します。

2. 維持治療

 通常2〜3ヶ月で甲状腺機能は正常化します。維持量はMMIで5〜10mg/日程度です。
その後は3〜4ヶ月毎に甲状腺機能を確認します。

3. 治療中止基準

 最低でも1.5〜2年治療を継続し、維持量で機能正常を維持できれば中止を考慮します。

【鑑別】

 甲状腺機能亢進を呈する疾患には、母親からの移行抗体に一過性新生児Basedow病、非自己免疫性甲状腺機能亢進症を示す機能獲得型TSH受容体異常症、成人に多く年長児でも発症する可能性がある無痛性甲状腺炎や亜急性甲状腺炎などがあります。

【予後】

 小児における寛解率は18〜65%とされ、成人に比べると難治です。再発の可能性は常にあるので、寛解中でも定期的な管理が必要です。

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