【学校検尿とは】
昭和48年5月の学校保健法施行令、施行規則の改正により学校での健康診断の一環として義務づけられ、翌年の49年から全国で一斉に始められました。
腎臓病についての治療法や管理の方法が進歩して、子どもの時期に尿検査を行うことが腎臓病の予防と悪化防止に非常に役立つことがわかってきたのです。
学校検尿はさまざまの面で効果を上げており、世界でも注目されています。
一方、我が国の腎不全による透析患者数は年々増加しており(その多くは糖尿病性腎症,子どもでは先天性の腎尿路奇形:CAKUT)、腎臓病対策を重点的に進める必要があります。
【血尿・蛋白尿とは】
字の如く尿に血液(赤血球)が混ざることを血尿、タンパクが漏れ出しているものを指します。健常者でもある程度の赤血球や蛋白が出ていますが検査で陽性になるほどではありません。
また、尿が赤いと言ってもその原因が全て血液であるとは限りません。薬剤による着色(アセトアミノフェン、フェニトイン、アスベリンなど)、ミオグロビン尿、ヘモグロビン尿も赤くなり検査でも陽性になりますが、尿沈渣の検査では赤血球は観察されません。
熱が高くなる時に出る熱性蛋白尿、安静臥床により消失する起立性蛋白尿は生理的とされます。
1次2次検査では+以上を陽性と取ります。
【血尿の原因】
腎前性の原因としては全身疾患としてのヘモグロビン尿、ミオグロビン尿などがあります。これらは溶血、横紋筋融解などが原因となります。
腎性のもので代表的なものは腎炎です。その他にも特発性腎出血、ナットクラッカー現象、水腎症、高カルシウム尿症も原因となります。
また、膀胱炎、尿管結石でも認めます。
【蛋白尿の原因】
腎炎、ネフローゼ症候群が代表的なものになりますが、上記のように熱性蛋白や起立性蛋白尿のように生理的なものもあります。
また、近位尿細管由来の蛋白尿としてβ2ミクログロブリン尿があります。
腎前性蛋白尿をきたす疾患は全身性疾患で子どもには少ない多発性骨髄腫や筋肉が壊れる横紋筋融解によるミオグロビン尿、ヘモグロビン尿の際にもタンパクが検出されます。
胱炎でも尿蛋白を認めます。
【3次検診で主治医受診を勧められたら】
早朝尿を持参してください。
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まず正しく採尿できたかを確認します。
①就寝前に排尿したか
②早朝第一尿か
③中間尿か
④高学年であれば月経との関連(月経中であれば10日〜2週間程度延期します) -
家族歴をお伺いします
両親の無償厚生血尿の有無、慢性腎炎・腎不全、透析の有無、難聴を伴う腎炎、高血圧、糖尿病など -
既往歴を伺います。
肉眼的血尿、高血圧症、腎疾患、IgA血管炎、尿路感染症、膠原病など、幼少時に原因不明の高熱を繰り返したことがあるか、低出生体重 -
身体所見・問診を取ります
身長・体重、浮腫、血圧測定、易疲労感、食欲不振、頭痛、腰痛、微熱、頻尿、尿失禁、夜尿の有無など
【小児腎臓病専門施設への紹介基準】
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早朝第一尿の尿蛋白/尿クレアチニン比(g/gCr)または尿蛋白陽性が
0.15〜0.4g/gCr(尿定性1+に相当)の場合6〜12ヶ月持続
0.5〜0.9g/gCr(尿定性2+に相当)の場合3〜6ヶ月持続
1.0〜1.9g/gCr(尿定性3+に相当)の場合1〜3ヶ月持続
上記を満たさない場合でも下記2〜6の所見がある場合には小児腎臓病専門施設へ紹介する - 肉眼的血尿
- 低アルブミン血症(<3.0g/dl)
- 低補体血症(C3<73mg/dl)
- 高血圧(米国小児科学会高血圧ガイドラインを使用)
- 腎機能障害(血清Cr、血清シスタチンC、血清β2ミクログロブリンを使用)
その他にも下記の紹介基準に当てはまる有所見者は紹介となります。
- 白血球尿50個/HPF以上が2回以上連続して陽性である
- 赤血球尿50個/HPF以上が2回以上連続して陽性である
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尿中β2ミクログロブリン/尿クレアチニン比(μg/mgCr)が基準値より高い
・3歳児:0.50μg/mgCr以上
・幼稚園児:0.50μg/mgCr以上
・小学生:0.35μg/mgCr以上
・中学生以上:0.30μg/mgCr以上
【小児腎臓病専門施設への紹介基準を満たさない場合は】
血尿のみの場合は、発見後1年間は3ヶ月毎に検尿を行い、以降も血尿が続く限り1年に1〜2回の検尿を行います。
蛋白尿の場合(血尿合併を含む)、最初の3ヶ月は1ヶ月毎に、その後は2、3ヶ月程度毎に検尿を行い慢性腎炎などの進行成腎疾患を鑑別していきます。
【食事管理・運動制限】
無症候性の検尿異常所見者に食事制限が必要になることはほとんどありません。専門施設に紹介されるまでは好きなものを食べてください。
浮腫や高血圧がない限り運動制限が必要なことはほとんどありません。生活の質の向上のためにも運動制限は必要ありません。