ステロイドとは
シクロペンタノペルヒドロフェナントレン(ステラン)を基本骨格とし、それに官能基が付随したものを示します。難しいですね。3つの六員環と1つの五員環が繋がった4縮合環構造を取っています。実はコレステロールもステロイドの一種なのです。
私たちの体の中には数多くのホルモンが存在していますがステロイドホルモンはその一種です。女性ホルモン、男性ホルモンなどの性ホルモンや、副腎皮質でつくられる糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドがあります。副腎は腎臓の上にのっている餃子の様な形の臓器です。副腎は表面にある皮質と内面にある髄質に分けられます。内面にある髄質からはアドレナリンやノルアドレナリンなどのカテコールアミンが分泌されます。皮質はその構造によって外側から球状帯、束状帯、網状帯に分かれます。球状帯からはアルドステロンなどの鉱質(ミネラル)コルチコイドが、束状帯からはコルチゾールなどの糖質コルチコイドが、網状帯からはテストステロンなどの副腎アンドロゲンを分泌します。
鉱質コルチコイドは主に塩分と水分のバランス(電解質バランスと体液バランス)に影響を与えます。糖質コルチコイドは主に血糖値を上昇させ、抗炎症作用や免疫抑制作用やストレスから生体を防御する働きがあります。副腎アンドロゲンは男性ホルモンであり、蛋白同化作用を併せ持っています。
我々がステロイドというときは主に糖質コルチコイドを指すことが多いです。
作用機序
ここでは最も用いられる糖質コルチコイドのステロイド薬に関して述べたいと思います。ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体(GR)に結合します。 ステロイドの結合したGRは、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われています。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮されます。
ステロイド剤(内服薬)
副作用
- 易感染性:免疫力が低下するために、風邪やインフルエンザ、細菌にも弱くなります。
- 糖尿病(ステロイド糖尿病):糖を合成する働きを高めるため、血糖が上がります。
- 消化性潰瘍(ステロイド潰瘍):消化管粘膜が弱くなるためにおこります。
- 血栓症:血小板の機能が亢進するためにおこります。
- 精神症状(ステロイド精神病):不眠症、多幸症、うつ状態になることがあります。
- 満月用顔貌(ムーンファエイス)、中心性肥満:食欲が更新し、脂肪の代謝障害によりおこります。
- 動脈硬化、高脂血症:動脈硬化を促進し、コレステロールや中性脂肪が高くなることがあります。
- 高血圧、むくみ:体内に塩分がたまりやすくなり生じます。
- 白内障(ステロイド白内障):白内障の進行を早めます。
- 緑内障(ステロイド緑内障):眼圧が上がることがあります。
- 副腎不全(ステロイド離脱症候群):ステロイドホルモンはプレドニゾロン換算で5〜5mg程度副腎皮質から分泌されています。それ以上のステロイドを長期に内服すると副腎皮質からの分泌が抑制されます。急に飲むことをやめると、体のステロイドホルモンが欠乏し、倦怠感、吐き気、頭痛、血圧低下などの症状が見られることがあります。
- ステロイドざ瘡:にきびができやすくなります。
- 大腿骨頭壊死(無菌性骨壊死):大量投与で稀に生じます。
- その他:多毛、脱毛、生理不順、不整脈、ステロイド筋症などが見られることがあります。
ステロイド軟膏の強さ
5段階に分類されています。
- 弱い(weak):プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン酢酸エステルなど
- 普通(medium):プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、トリアムシノロンアセトニドなど
- 強い(strong):ベタメタゾン吉草酸エステルなど
- とても強い(very strong):モメタゾンフランカルボン酸エステルなど
- 最も強い(strongest):クロベタゾールプロピオン酸エステルなど
アトピー性皮膚炎における皮疹の重症度とステロイド外用薬の選択
投与方法
ここではアトピー性皮膚炎に対しての投与方法を述べます。
- 外用量
必要十分量を外用することが重要です。目安として、人差し指の先端から第一関節まで口径5mmのチューブから押し出された量(約0.5g)が英国成人の手のひら2枚分すなわち星人の体表面積のおよそ2%に対する適量であることがわかっています(finger tip unit)。しかし使用量は皮膚の状態によって変わり得ます。
- 外用回数
急性増悪の場合には1日2回を原則として、炎症が落ちつたら1日1回と減らすことが可能であるかもしれません。
ステロイド外用薬の副作用
- 全身性副作用
副腎機能抑制などの全身性副作用がかんがえられますが、小児では十分な量の外用薬を使用すれば湿疹のコントロールが可能となり、塗布量、回数は減少するため全身性副作用は通常をおこりません。
- 局所性副作用
免疫抑制作用、細胞増殖や間質賛成抑制作用、ホルモン作用により、毛細血管拡張作用、皮膚萎縮、紫斑、酒さ様皮膚炎・口囲皮膚炎、多毛、色素脱失、ざ瘡・毛包炎や皮膚感染症などがあります。
これらの局所性副作用はステロイドの強さ、回数、塗布部位、年齢に影響されます。しかし、ほとんどの局所副作用は外用薬の中止または適切な処置により回復します。皮膚線条は不可逆的です。