【マイコプラズマ感染症とは】
マイコプラズマという細菌にはいろいろ種類がありますが、ここでは肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumonia)についてのみお話しいたします。
【感染様式】
飛沫感染
【症状】
マイコプラズマは小児において上気道(咽頭炎)および下気道感染症(気管支炎、肺炎)を来す代表的な細菌です。
主な症状としては咳嗽、倦怠感、発熱、ときに頭痛などがあります。急性気管支炎や上気道感染症の症状は一般的に軽度で自然に治癒します。
感染した小児のおよそ10%が肺炎を来すとされています。
初期は乾いた咳嗽でやがて湿った咳嗽に変わります。咳は通常3〜4週間持続し、ときにゼーゼーすることもあります。
また、感染したおよそ10%の小児にいろいろな湿疹を来すことが知られています。
【潜伏期】
2〜3週間(1〜4週)
【合併症】
マイコプラズマ感染症には多彩な症状が知られています。以前は肺炎の合併症と考えられていましたが、現在では独立した症状とされています。
代表的な物としては
- 神経:無菌性髄膜炎、脳炎、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、小脳失調症、横断性脊髄症、末梢性神経炎など
- 心血管:心筋炎、心内膜炎、心外膜炎、不整脈、血栓症(右室)
- 皮膚:スチーブンス・ジョンソン症候群、多形滲出性紅斑、じんま疹、アレルギー性紫斑病、結節性紅斑など
- 消化器:肝機能障害、膵炎など
- 血液:自己免疫性溶血性貧血、血小板減少性紫斑病など
- 運動器:関節炎、筋炎、横紋筋融解症など
- 泌尿器:腎炎など
これ以外にも多数報告されています。
【診断】
臨床症状からマイコプラズマ感染症を疑い、血液検査、喉からの迅速検査、DNAを利用した診断などがあります。
確定診断にはDNAを利用する方法が一番良いのかもしれませんが時間がかかることや費用が高いことが欠点です。
血液検査は初期では陽性に出ることが少なく、急性期と回復期に2度採血することが理想とされています。
迅速検査はその場で結果が出ますが、感度が低いことが欠点です。
【治療】
急性上気道炎や軽度の気管支炎には治療の必要はありません。抗生剤の投与なくても自然に軽快します。
長引く咳嗽、発熱のときにはレントゲンをとり、肺炎と診断されれば抗生剤が投与されることが多いです。
第一選択は年齢を問わずマクロライド系の抗生剤です。
代表的な物としてはアジスロマイシン(ジスロマック)、クラリスロマイシン(クラリス、クラリシットなど)、エリスロマイシン(エリスロシンなど)です。
しかし、最近はマクロライド耐性のマイコプラズマが増えています。
48〜72時間以内に解熱しないときには耐性菌と判断し、8歳未満ではトスフロキサシン(オゼックス)、8歳以上ではテトラサイクリン系(ミノマイシンなど)が投与されます。
大切なことは第一選択としてトスフロキサシンやテトラサイクリン系を原則使用しないこと、テトラサイクリン系は8歳未満には投与しないことです。
テトラサイクリン系の抗生剤は歯のエナメル質に親和性があるため歯に色がつくことがあり、永久歯にも残ります。
一部のテトラサイクリン(ドキシサイクリン(ビブラマイシン))はこの副作用がないとされていますが、錠剤しかなく小児への適応がありません。
【登校登園基準】
完全に解熱し、体力が回復し激しい咳嗽がなくなれば登校登園が可能です。咳が残っていればマスクをして下さい。