【熱性痙攣とは】
主に生後6〜60ヶ月までの乳幼児期に起こります。通常は38℃以上の発熱に伴う発作性疾患(けいれん性、非けいれん性を含む)で、髄膜炎などの中枢性神経感染症、代謝異常、その他の明らかな発作の原因がみられないもので、てんかんの既往のあるものは除外されます。
【単純性熱性けいれんと複雑型熱性けいれん】
熱性けいれんのうち、以下の3項目の一つ以上をもつものを複雑型熱性けいれんと定義し、これらのいずれにも該当しないものを単純型熱性けいれんとします。
- 焦点性発作(部分発作)の要素
- 15分以上持続する発作
- 一発熱機会の、通常は24時間以内に複数回反復する発作
【再発頻度と再発予測因子】
1. 熱性けいれんの再発予測因子は以下の4因子です。
- 両親のいずれかの熱性けいれん家族歴
- 1歳未満の発症
- 短時間の発熱・発作間隔(概ね1時間以内)
- 発作時体温が39℃以下
いずれかの因子を有する場合、再発の確率は2倍以上になります。
2. 再発予測因子を持たない熱性けいれんの再発率は約15%、予測因子を有する症例を含め他熱性けいれん全体の再発率は約30%です。
【熱性けいれん患児のその後の転換発症頻度とてんかん発症関連因子】
1.熱性けいれんの既往を有する患児が、のちの誘因のない無熱性発作を2回以上繰り返す、すなわち、熱性けいれん後てんかんの発症率は2.0〜7.5%程度であり、一般人口におけるてんかん発症率(0.5〜1.0%)に比べ高いです。
2.胃痙攣後の転換発症関連因子としては以下の5因子が挙げられます。
- 発達・神経学的異常
- てんかん家族歴(両親・同胞)
- 複雑型熱性けいれん(i:焦点発作、ii:発作持続が15分以上、iii:同一発熱機会の反復のいずれか一つ以上)
- 短時間の発熱・発作間隔(1時間以内)
- 3歳以降の熱性けいれん発症
【入院可能な病院への搬送を考慮する目安は?】
- 発作が5分以上続いて抗てんかん薬の静脈注射が必要と思われる
- 髄膜刺激症状、発作後30分以上の意識障害、大泉門膨隆が見られたり、中枢神経感染症が疑われる場合
- 全身状態が不良、または脱水初見が見られる場合
- 発作が同一発熱器官に繰り返し見られる場合
- 上記以外でも診察した医師が入院が必要と考える場合
【ダイアップ座薬の使用適応】
「遷延性発作(15分以上)の既往がある場合」、
または
「①焦点性発作または24時間以内に反復
②熱性けいれん出現前から存在する神経学的以上・発達遅滞
③熱性けいれんまたはてんかんの家族歴
④生後12ヶ月未満
⑤発熱後1時間未満での発作
⑥38℃未満での発作
のうち2つ以上を満たした熱性けいれんが2回以上反復する場合」です。
つまり、単純性熱性けいれんについて、発熱時投与は通常必要ないとの考えです。
病院を受診した際にすでにけいれんが収まっている場合にもジアゼパム座薬を挿入する必要はありません。
【解熱剤について】
1. 発熱時の解熱剤使用が熱性けいれんの再発を予防できる証拠はないため、予防のための使用は推奨されていません。
2. 解熱剤使用後の熱再上昇による熱性けいれんの再発の証拠はありません。
つまり、解熱剤の使用により熱性けいれんを引き起こすということはないと言うことです。