【風邪とは】
一般的に風邪とは「咽頭炎」や「感冒」などと呼ばれています。
定義ははっきりとしたものはありませんが、2011年小児呼吸器感染症診療ガイドラインによれば、「鼻汁と鼻閉が主症状のウイルス性疾患で、筋肉痛などの全身症状がなく、熱はないか、あっても軽度なものを指す。鼻炎と言われるが、より正確には鼻副鼻腔炎(rhinosinusitis)である」と定義されています。
幼児は1年間で平均6〜7回かかり、子どもの10〜15%は年間12回くらいかかるようです。
また、保育所、幼稚園なのに通っているお子さんは50%かかることが多いとの報告もあります。
つまり、子どもの風邪のほとんどは治療が必要ではありません。溶連菌感染症以外では抗生剤は必要ありません。問題は風邪かどうかと言うことです。
また、一部の患者さんが重症化します。
その中には中耳炎、副鼻腔炎(蓄膿)、肺炎、脳症などがありますが、初期にはそれらに進行するかどうかを判断することは出来ません。
【風邪の代表的な原因ウイルス】
ライノウイルス:4月、5月、9月、10月
パラインフルエンザウイルス
I型:8月、9月、10月
Ⅱ型:9月、10月、11月
Ⅲ型:4月、5月、6月
RSウイルス:10月、11月、12月、1月、2月
インフルエンザウイルス:12月、1月、2月
エンテロウイルス:5月、6月、7月、8月、9月
【症状】
数日の潜伏期間ののち、咽頭痛から始まり、鼻汁や鼻閉などの症状が主体となります。咳嗽は約30%に認められます。
インフルエンザやアデノウイルス、RSウイルスでは発熱やその他の症状を伴うことが多いです。
症状の大部分は1週間以内に軽快しますが、約10%は2週間程度持続するとされています。
鼻水、鼻づまりは風邪を起こしているばい菌(ほとんどが細菌ではありません)とからだが戦った産物です。
また、鼻づまりは鼻の粘膜にある血管が拡張したために起こるとされています。これらはからだがばい菌を洗い流すための役割がありますが、時に子どもにとってはわずらわしいこともあります。
鼻汁の色や粘稠度が変化してくることはよく見られますが、副鼻腔炎や細菌感染症のためではないことがほとんどです。つまり、鼻汁が透明ではないからと言って抗生剤が必要になるわけではないと言うことです。
咳は気道に入ってきた異物や過剰な分泌物(痰など)を排出するためのものです。
咳は主に湿性咳嗽(湿った咳、あるいは痰の絡む咳)と乾性咳嗽(渇いた咳)に分けられます。
気道の分泌物の量を反映しています。咳がひどく吐いてしまったあと、咳が一時的に止まることを経験したことはありませんか?これは吐くときに痰が一緒に出て楽になるからです。
ですから咳も基本的には止める薬は必要ありません。ただし、あまりにも咳がひどいときには止める必要は出てきます。
咳が出ている期間により、3週未満を急性の咳嗽、8週未満を亜急性咳嗽(長引く咳)、8週以上を慢性咳嗽と呼びます。
風邪などでも3週位は咳が続くことがあるので3週未満を急性の咳嗽としたのです。ただし、子どもの場合は2週と4週で線引きをしている先生もいらっしゃいます。
熱はウイルスや細菌の増殖を抑えるための生体の防御機構です。発熱自体は危険なものではありません。
ほとんどの場合で数日、せいぜい5日以内に自然に解熱します。大切なことは熱の原因が何であるかと言うことです。
通常の発熱のほとんどは感染症ですが9割以上はウイルスのよるものであると言うことは最初にも記載いたしました。
「高熱が持続すると馬鹿になるのではないか?」と質問されることがありますが、それなら今の大人のほとんどは馬鹿になっています。
熱の原因が髄膜炎や脳炎、脳症の時の後遺症として障害がのこることがあるのです。
【治療】
抗ヒスタミン薬が処方されることが多いと思います。
しかし、抗ヒスタミン薬の多くは脳に移行し眠気や集中力や判断力、作業能力の低下など(impaired performance)の副作用として報告されています。
また、痙攣を誘発する可能性があるとも言われています。
非鎮静性の抗ヒスタミン薬はこれらの副作用が少ないことが知られていますが、アレルギー性鼻炎には効果はありますが風邪による鼻汁、鼻閉には効果は期待できません。アメリカ小児科学会では鼻汁吸引が推奨されています。
アスベリンやメジコンなどが代表的な鎮咳剤ですが、効果は証明されていません。
ホクナリンテープは気管支拡張薬ですが、アレルギーをもっているこの咳以外にはあまり請おうかはないと思われます。
また、ホクナリンテープは貼ってから効果が出るまで5時間かかると言われていますので、貼ってすぐ効くことはありません。
1歳以上の子どもではハチミツをティースプーン1杯のお湯などに溶かして飲むと夜間の咳がへることがあります。
また、6ヶ月以上であれば市販のベポラップも効果があるときがありますので試して良いと思われます。
前述したとおり「体がバイ菌の増殖を抑えるために熱を上げている」ので元気であれば熱を下げる必要はありません。
子どもに使用して良いことがわかっている解熱剤はカロナール、アンヒバなどのアセトアミノフェンとブルフェンなどのイブプロフェンだけです。
小児用PLにはアスピリン様製剤が入っており、特にインフルエンザが流行する冬場には使用しないようにして下さい。
アメリカ食品医薬品局(FDA)では市販の風邪薬は「まれに重症の副作用を起こすことが報告されている一方で、市販の風邪薬が子どもの風邪症状を改善するという証拠はない」として2歳未満は禁止、5歳未満は原則禁止を推奨しています。
つまり、風邪に特効薬はないということです。