【TRAPS】
TRAPSは1型TNF受容体(TNFR1)をコードするTNFRSF1Aの遺伝子変異により発症する自己炎症疾患です。
常染色体優勢(顕性)遺伝形式をとります。我が国では30数家系以上の存在が知られています。
【症状】
TRAPSは帰化発熱発作を認めるものの、間欠期に炎症所見が軽微である、成長・発達障害や臓器障害を伴わない軽症例もあれば、炎症が遷延して社旗生活に悪影響をきたす重症例までいろいろです。
発熱、腹痛、筋痛、結膜炎、皮疹、眼窩周囲浮腫、胸痛、関節痛などの炎症発作があり、幼児期に発症する例が多く、発症年齢の中央値は3歳ですが、60歳を超えて発症する例もあります。
発作期間は平均2週間、発作周期は平均5週間ですが、必ずしも一定であるわけではありません。
我が国では発熱:100%、腹痛:36.4%、筋痛:43.2%、皮疹:54.5%、結膜炎:18.2%、眼窩周囲浮腫:9.1%、胸痛:13.6%、関節痛:59.1%、頭痛:22.7%、アミロイドーシス:0%と欧米に比べて腹痛、筋痛、アミロイドーシスが少ないのと特徴です。
【診断】
1) 以下のAないしBを満たす症例をTRAPS疑いとしTNFRSF1A遺伝子解析を施行する
A 必須条件のいずれかを満たし、かつ補助項目の2つ以上を有する
必須条件:
6ヶ月以上反復する以下のいずれかの炎症徴候が存在する(いくつかの症状が同時に見られることが一般的)
- 発熱
- 腹痛
- 筋痛(移動性)
- 皮疹(筋痛を伴う紅斑様皮疹)
- 結膜炎・眼窩周囲浮腫
- 胸痛
- 関節痛あるいは単関節滑膜炎
補助項目
- 家族歴あり
- 20歳未満の発症
- 症状が平均5日以上持続(症状は変化する)
B 全身性若年型特発性関節炎または成人スティル病として治療されているが、持続する関節炎がなく、かつ再燃をくりかえす
2) TNFRSA1A遺伝子解析
TNFRSA1A遺伝子の解析の結果、疾患関連編を認める症例をTRAPSと診断する。
疾患関連性の不明な変異を有する症例は他の疾患が十分に除外されればTRAPSと診断する。変異が認められない症例、あるいは疾患関連性がない変異のみを有する症例はTRAPSと診断できない。
【鑑別診断】
- 全身性若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis:JIA)・成人型スティル病
- クリオピリン関連周期発熱症候群(cryopyrin-associated periodic syndrome:CAPS)
- メバロン酸キナーゼ欠損症(mevalonate kinase deficiency:MKD/高IgD症候群(Hyper IgD syndrome:HIDS)
- 家族性地中海熱(familial Mediterranean fever:FMF)
- 周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・頸部リンパ節炎(periodic fever, aphthous stomatitis, pharyngitis, and cervical adenitis:PFAPA)症候群
【治療】
1) 発作時間欠的非ステロイド性炎症薬(nonsteroidal ant-inflammatory drugs:NSAIDs)投与
2) 持続的副腎皮質ステロイド全身投与
3) 生物学的製剤
・抗IL-1療法
・抗TNF療法
・抗IL-6療法
【予後】
予後決定因子は薬の副作用とアミロイドーシスの合併ですが生物学的製剤の使用により改善が期待されています。