【風疹とは】
風疹ウイルスにより、発疹、発熱、リンパ節腫脹を主症状とする感染症です。麻疹(はしか)と類似の症状を呈しますが、麻疹より短期間で治るため「三日ばしか」とも呼ばれています。
【感染様式】
飛沫感染
【潜伏期】
2〜3週間(通常16日〜18日)です
【診断】
周囲の流行状況も含め臨床的に診断します。
血液学的にはEIA-IgMという検査で調べますが、偽陰性も多く発疹後3日以内では陽性になっていない場合も多いとされます。
咽頭から採取した検体でウイルス分離やRT-PCR(遺伝子検査)をすれば確実です。現在は全数報告の義務があり、風疹が疑われるとこれらの検査をしなければなりません。
【症状】
症状の出ない不顕性感染であることも多いのですが、感染しても気がつかないため他人、特に妊婦さんにうつしてしまうことが問題です。また、再感染もあり、自然感染しても3〜10%、予防接種では14〜18%再感染が報告されています。
① 発疹
顔面から出現し全身に広がっていきます。麻疹に比べて赤みが淡いのが特徴で、発疹は3日間程度続きます。溶連菌の時の発疹にも似ていて、時にかゆみを訴えることもあります。年少児ではこの発疹だけが症状の時もあり診断に苦労します。発疹出現前に口腔内にrose spots(Forchheimer spots)が認められることがあります。
② リンパ節腫脹
発疹出現前から耳介後部や後頸部、後頭部のリンパ節が腫れます。
③ 関節痛
思春期以降の女性が感染すると関節炎を70%程度に認めますが、小児や男児では多くありません。時に1ヶ月以上持続することもあります。
④ 微熱
熱も麻疹のように高熱にならず、微熱であることが多いです。
【合併症】
一番問題になっている合併症は先天性風疹症候群(Congenital rubella syndrome: CRS)ですが、これは別に記載します。
① 血小板減少性紫斑病
1/3,000例に認められます。ほとんどの場合は急性で慢性化することは少ないです。症状は通常の血小板減少性紫斑病と同じで、全身、特に下肢に細かい紫斑が出現します。血小板の値が20,000以下になると重篤な合併症(頭蓋内出血など)が心配となります。
② 脳炎
1/6,000例に認められ、死亡率は約20%、成人に多いとされています。
③ 肝炎
小児ではまれとされており、多くは急性の経過をとります。
④ 溶血性貧血
腹痛、嘔気、嘔吐、黄疸、顔色不良で発症します。
⑤ 進行性風疹全脳炎
麻疹で起こる亜急性硬化性全脳炎の風疹版とされています。発症は全て男児であり、多くの患者さんは先天性風疹症候群の症状を持っています。
【治療】
有効な治療はなく、対処療法しかありません。
【予防】
ワクチンが極めて有効です。定期接種では1歳児と年長さんで2回接種します。95%以上の接種率を維持できれば流行を抑えることが可能とされています。現在、30〜50歳代の男性は風疹ワクチンを受けたことがない方が多いため、抗体価が低く感染および妊婦さんにうつすリスクが高いと考えられます。是非、抗体価をチェックして低い方は接種して下さい。妊婦さんは風疹の予防接種をすることは出来ません。また、女性は接種後2ヶ月間は避妊が必要とされています。
【登園・登校基準】
発疹が消失すれば登園・登校可能です。
【参考にしたもの】
Red Book 2015 American Academy of Pediatrics
小児感染症マニュアル 2017 日本小児感染症学会編