【便秘とは】
なんらかの原因によって排便回数や便の量が減った(便が滞った状態)、または排便するのに努力や苦痛をともなう(便が出にくい状態)状態のことです。
ちなみに便秘により腹痛や腹部の不快感、不安、または排便する際の痛みや出血があり治療が必要な場合を「便秘症」とよびます。
【便秘の種類】
急性と慢性、器質的と機能的に分類されます。
急性は一過性のもので、慢性は長期に渡るものを指します。器質的はもとに何かの病気があるものや、全身性の疾患に伴うものです(基礎疾患をもつもの)。
機能性は器質性を除いたもので、特発性便秘ともよばれます。
【慢性機能性便秘症の診断基準】
国際的に使用されている診断基準を示します。
「こんな症状も便秘です」
〈出典〉
EAファーマ
【診断】
上記の票を基準として診断治療になりますが、診断基準を満たさなくても、排便に苦痛を伴う場合は治療対象になることも少なくありません。
問題は便秘をきたす基礎疾患があるかどうかです。この場合は専門病院への紹介となります。
以下のような症状があるときは要注意です。
- 胎便排泄遅延(生後24時間以降)の既往
- 成長障害・体重減少
- 繰り返す嘔吐
- 血便
- 下痢(paradoxical diarrhea)
- 腹部膨満
- 腹部腫瘤
- 肛門の形態・位置異常
- 直腸指診の異常
- 脊髄疾患を示唆する神経所見と仙骨部皮膚所見
【治療】
上記の診断基準により便秘と診断されたのち、便塞栓があるかを確認します。
簡単に言えば糞詰まりがあるかどうかです。糞詰まりがあれば浣腸などの手段によって糞詰まりを除去します。 その後、維持療法として生活、排便、食事指導とともに各種の薬物治療を行います。
1. 生活・排便習慣
水分不足に注意し、朝食後にトイレに行く時間を確保してください。規則正しくバランスのとれた、食物繊維の多い食事をとりましょう。また、日常的に適度な運動をすることも良いとされています。排便をしたくなったら我慢せずにトイレに行くようにしてください。
幼児期のトイレットトレーニングは時に便秘を悪化させることがあるので、叱らずに我慢強く見守ってあげてください。トイレに行くことを嫌がる子は服を着たまま便座やおまるに座らせてもよいのです。
トイレでできた時や、排便がなくても5〜10分座っていることができたらご褒美をあげてもよいでしょう。
2. 食事療法
規則正しく3食、バランスのとれた食事をとりましょう。食物繊維の多いものが勧められています。ヨーグルトなどのプロバイオティクスも効果があることがあります。試されてよいと思います。また、よく水分を多めにとるように指示されることがありますが、脱水傾向がなければ通常は必要ありません。
3. 薬物療法
下剤には①浸透圧性下剤、②刺激性下剤、③消化管運動賦活薬、④漢方などがあります。
① 浸透圧性下剤
腸管内に水分を移行させ腸管内容を軟化増大させ、その刺激により便通促進効果が現れます。代表的な薬として、マルツエキス、ラクツロース(モニラック)、酸化マグネシウム、ポリエチレングリコール(2歳以上)などがあります。
② 刺激性下剤
主に大腸を刺激することにより排便を促します。効きすぎるとお腹が痛くなることもあります。代表的な薬としてビコスルファートナトリウム(ラキソベロン)があります。
③ 消化管運動賦活薬
代表的なものにモサプリドクエン酸塩(ガスモチン)がありますが使用されるのは学童期以降になります。
④漢方
代表的なものとしては大建中湯、小建中湯、大黄甘草湯、調胃氶気湯。桂枝茯苓丸などがあります。
【参考にした文献】
小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン(日本小児栄養消化器肝臓学会、日本小児消化機能研究会編集)
乳児排便困難症
通常6ヶ月未満でウンチが硬くないのに何日も便が出ないことがあります。
これは便を出そうとして肛門が開くという一連の動きがうまくいかないために生じます。
これを乳児排便困難症といい、基本的には治療の必要はありません。
将来の便秘にもなるわけでもありません。
綿棒浣腸に関しては意見がいろいろですが、基本苦痛を与えている可能性があるのであまりお勧めいたしません。
稀少排便
母乳栄養児では生後1ヶ月までは1週間くらい排便がないこともあります。
便が柔らかく機嫌も良ければ経過を見るだけで大丈夫です。