【概念】
いくつかの臓器にわたる奇形が偶然以上の頻度で生じ、その原因が明らかでない時に連合と呼ぶことになっています。
症候群との違いは、症候群ではその原因が遺伝子の異常や病因が特定されていますが、連合では不明あるいは複数の原因が考えられるところです。
椎骨異常(Vertebral defect)、鎖肛(Anal atresia)、食堂閉鎖を伴う気管食道瘻(Tracheoesophageal fistula with Esophageal atresia)、橈骨および腎の異形成(Radial and Renal dysplasia)の頭文字をとってVATER連合と呼ぶようになりました。
心奇形(Cardiac malformation)、四肢異常(Limb anomalies)があればVACTRL連合になります。
【症状】
椎骨異常
70〜90%に見られる症状です。
椎骨の低形成や椎体異常(半椎、蝶椎、椎体夢ほ号など)、尾骨の欠損などもあり、側弯のリスクもあります。
心奇形
 
75%程度に見られます。
心室中隔欠損症が最も多く、そのほかにはファロー4徴症、心房中隔欠損、動脈管開存を認めることがあります。
鎖肛(瘻孔の有無に関わらず)
50%程度に認めます。
高位鎖肛が低位鎖肛よりおおいです。
完全な鎖肛ではなく肛門狭窄のときもあります。
気管食道瘻を伴う食道閉鎖
約70%に食道閉鎖、気管・食道瘻を認めます。
必ずしも食道閉鎖を伴うわけではありません。
腎奇形
50%程度にみられます。
腎無形成、低形成、腎の位置異常、膀胱尿管逆流現象など腎不全の原因になることがあります。
上肢の異常
50%程度にみられます。
母指欠損、橈骨欠損、橈骨・尺骨の低形成、多指症、合指症などが挙げられます。	
単一臍帯動脈
35%程度にみられます。
臍帯動脈は通常2本あり、胎児期に胎児から胎盤へ血液を送る動脈です。
単一臍帯動脈は色々な先天異常でみられるので、先天異常の早期発見のきっかけになります。
【ときにみられる症状】
胎児期あるいは出生後の成長障害。
喉頭狭窄、気管支形成異常、耳介変形、大泉門開大、下肢欠損(23%)、肋骨奇形、外性器異常(停留精巣、尿道下裂、性別不能な外性器など)、神経管奇形(脊髄係留症候群を伴う潜在性二分脊椎)などが時にみられます。
【頻度】
1万人あたり1.6人等報告がありますが、詳細はわかっていません。
【原因】
上記の通り原因は不明です。
ほとんどが散発例です。
【経過】
各種症状のために発育障害を認めることもありますが、知能は通常正常です。
先天性心疾患、消化器異常、呼吸器障害などが重症であれば予後は悪くなります。
【治療】
それぞれの異常に対する治療を行います。
根本的な治療は確立されていません。
【鑑別診断】
主要症状が2種類以上あればVATER連合(VACTREL連合)の可能性が高くなります。
しかし、鑑別診断として水頭症を伴うVACTREL連合(VACTRL-H連合)、ガンコニー貧血(心臓、四肢、椎体の異常)CHARGE症候群、Holt-Oram症候群(心臓、上肢特に橈骨側の欠損)、Towns-Brocks症候群(拇指の異常、鎖肛、鰓弓由来組織の低形成)、18トリソミーなどがあります。
VACTRL-Hは遺伝性疾患で常染色体潜性またはX連鎖性遺伝が示唆されており、神経系の異常を伴うため、精神・運動発達遅滞を認め、予後もあまり良くありません。
ファンコニー貧血でも見られるFANCB遺伝子の異常が報告されています。










