【病態生理】
免疫学的機序が関与して血小板が減少(100,000/mm3未満:正常150,000から450,000/mm3)することにより出血傾向をきたす病気です。急性と慢性、一次性と二次性があります。
私の若い時には特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura)と呼ばれていました。
急性ITPは、通常2〜4歳の健康な小児に起こります。
1〜4週間前にウイルス感染があることが多いです。
血小板の表面にあるタンパク質に対して自己抗体が生じ、産生された抗体と血小板の複合体が、さらにFcγ受容体に結合してマクロファージに捕捉され、貪食され破壊されます。
【急性と慢性、一次性と二次性】
ほとんどの場合は急性であり、6ヶ月〜1年以内に自然に改善されますが、25%程度で慢性化する症例があります。
単独で発生する一次性と他疾患と関連して発症する二次性があります。
特定の薬剤(ペニシリン、スルファメトキソゾール・トリメトプリム製剤(ST合剤)、ジゴキシン、キニーネ、シメチジン、ベンゾジアゼピン、ヘパリンなど)、自己免疫疾患、先行するウイルス感染症が原因となります。
風疹を含むワクチンでも生じますが、自然発症に比べるとその発症比率は極めて低いことがわかっています。
【症状】
急性に発症する点状出血が特徴です。
血小板値が10,000/mm3以下になると歯肉やその他の粘膜からも出血しやすくなります。
頭蓋内出血の頻度は0.2〜0.8%程度と低いですが、頭蓋内出血をきたした例の40〜50%に死亡または神経学的後遺症を残します。
【検査】
過度の出血がない限り血小板減少が単独で減少します。血小板の大きさは正常もしくは増大しています。
凝固因子の欠乏を検査するプロトロンビン時間(PT)、活性プロトロンビン時間(APTT)は正常です。
通常骨髄穿刺は行いませんが、骨髄では巨核球数は正常または増加を示します。
【治療】
通常、発症から1ヶ月以内に半数以上が、6ヶ月以内にさらに30%が自然に軽快するので治療の必要はありません。血小板の値を注意深くモニターしていきます。6ヶ月以上持続すると、慢性ITPとなります。
血小板の値が20,000/mm3未満になると重度の出血傾向が見られる恐れがあるため、積極的な治療が必要となります。
ファーストラインの治療としてはガンマグロブリン製剤投与とステロイドになります。
セカンドラインの治療としてはトロンボポエチン(TPO)受容体作動薬、リツキシマブおよび脾臓の摘出です。脾臓の摘出後は肺炎球菌ワクチンとペニシリンによる予防が必要になります。