【乳幼児発症の好中球減少症】
一般に好中球減少症は末梢血の好中球絶対数が1500/μl未満と定義します。
しかし、臨床上問題になるのは500/μl未満での易感染性です。また、200/μl未満では感染症を反復するようになります。
乳幼児に発症する好中球減少症の原因には遺伝性の重症なものから、比較的軽症の自己免疫性好中球減少症があります。
【症状】
通常数ヶ月に一度末梢好中球数が500/μlになり軽度の易感染性を呈します。
しかし、先天性の重症好中球減少症と比べ重症感染症を合併することは多くありません。
通常、上気道炎や中耳炎などになりますが軽症のことが多く、入院するような肺炎などになることは多くありません。
多くは乳児期広後半から幼児期に発症し5歳くらいまでに好中球数が増加しほぼ軽快します。
【原因】
好中球が減少するのは産生が低下するか破壊が亢進するかのどちらかが原因となります。
本疾患は好中球に対しての抗体が作られることにより破壊が更新している状態です。
しかし,何故好中球に対しての抗体が産生されるのかはわかっていません。
【検査所見】
好中球の減少が見られ、単球の増加(1000/μl)を認めることもよくあります(30%程度)。
現在までに明らかになっている抗原としては好中球の表面にある免疫グロブリンであるIgGに対する受容体であることが多いようです。
しかし、通常の外来ではこれらの検査をすることはありません。
【診断】
末梢血の好中球絶対数で好中球減少症と診断し、重症化する重症先天性好中球減少症、周期性好中球減少症などを否定できれば診断が可能です。
必要があれば鑑別のために遺伝子検査、骨髄検査、抗好中球抗体の検出などをすることもあります。
【治療】
重症化することが少ないため、感染症発症時には適切な抗生剤を使用するだけで十分です。繰り返し中耳炎を起こすなら抗生剤の予防投薬(SMX-TMPなど)をします。
重症感染症が起きたなら入院してステロイド、免疫グロブリン製剤を、好中球を増やす薬剤であるG-CSFが使用されます。
3歳までに80%、5歳までにほぼ全例回復します。