提携駐車場あり 19:00まで診断

診療案内 小児急性虫垂炎診療ガイドライン2022のCQ.

【はじめに】

  ガイドラインは公益財団法人日本医療機能評価機構が作成した「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に準じてエビデンス総体と推奨グレードを設定しています。ちなみにMindsとはmedical information network distribution serviceの略です。

 それによるとガイドラインとは「診療上の重要度の高い医療行為について,エビデンスの SR(Systematic Review)とその総体評価,益と害のバランスなどを考量して,患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」となっています。

 下記のCQとはClinical questionのことです。

 ガイドラインのCQの外来診療に役立つ部分をまとめました。

【CQ1】小児虫垂炎の虫垂切除数は?

推奨: 本邦の人口1万人に対する平均虫垂切除数は、5歳未満では男女とも0.6人、5〜9歳では男児6.9人、女児では4.9人と増加し、10〜14歳では男性13.2人、女性8.5人と最も高くなる。5歳以降では、男児の発生頻度が高い傾向にある。

解説: このデータには保存的治療が選択された虫垂炎は含まれていない。

【CQ2】小児の虫垂炎は穿孔しやすいか?

推奨: 小児虫垂炎の穿孔率は15.9〜34.8%である。なかでも幼児期の穿孔率は学童期に比べて高率である。

解説: 幼児期の急性虫垂炎はその発生頻度は低いが、穿孔率は高い。幼児期の穿孔率は学童期の約2倍で、26.7〜76.5%と高率である。

【CQ3】臨床指標から作成されたスコアリングシステムの有用性は?

推奨: 小児に使用されるスコアリングは、Alvarado ScoreとPediatric Appendicitis Scoreが代表的である。スコアリングは症状の評価として有用であるが、正診率が低く虫垂炎の診断に用いることは困難である。初期診療でスコアリングを用いることは、虫垂炎疑い
診断例を帰宅させるための評価として有用であり、画像検査など二次評価を開始する際のスクリーニングに使用することが適切である。

解説:
スコアリング

Alvarado Score Pediatric Appendicitis Score
右下腹部に移動する痛み 1 右下腹部に移動する痛み 1
食欲不振 1 右下腹部痛 2
悪心・嘔吐 1 咳・跳躍・打診による叩打痛 2
発熱(37.3℃以上) 1 嘔気・嘔吐 1
右下腹部の圧痛 2 食欲不振 1
反跳痛 1 発熱(38℃以上) 1
白血球数増加(10000/mm3以上) 2 白血球数増加(10000/mm3以上) 1
左方移動(好中球>75%) 1 左方移動(好中球>7500/mm3以上) 1
合計スコア
7点以上で急性虫垂炎と診断
10 合計スコア
7点以上で急性虫垂炎と診断
10

3点以下:帰宅可 
4〜6点:二次入院施設あるいは画像検査による評価
7点以上:手術可能な施設 画像検査による診断

CRPは虫垂炎発症から1日目では1.5mg/dl、2日目では4.0mg/dl、3日目では10.5mg/dl と日数が経過するに従ってカットオフ値が変化しており、発症から時間経過に依存することが報告されている。他の臨床症状、画像検査の結果と合わせて病態の評価に用いることが大切である。

【CQ4】小児急性胃腸炎での超音波検査、CT検査の役割は?放射線被曝の問題を含めて

推奨: 小児急性虫垂炎の診断における超音波検査、CT検査の感度、特異度はいずれも高く、有用性は高い。超音波検査は非侵襲的であるが、画像が術者の経験や患者の状態に依存する。CT検査では画像は検査者に左右されないが、放射線被曝の問題がある。
 両者を理解し、患者に状態や目的にあわせて利用することが望ましい。超音波検査とCT検査がともに普及した本邦の現状を踏まえて小児急性虫垂炎が疑われる場合には原則として超音波検査を第一選択とするのが望ましい。

 超音波検査が技術的に難しい場合や感度の低い場合(肥満、年少児など)、穿孔が疑われる場合には必要に応じてCT検査を考慮する。感度を高め、被曝を軽減するためには1回の造影CTが望ましいが、造影剤による副反応には十分注意する。

解説: 小児急性虫垂炎の診断に画像診断が有用であることに依存はないであろう。スコアリングシステムを採用し、少なくともlowではCTを避けることが必要である。

【CQ5】小児急性虫垂炎の新しい診断技術は必要か?カラードプラ・パワードプラ、MRI検査、プロカルシトニン等について。

推奨: カラードプラ・パワードプラは、虫垂炎の手術を決定する際に有用である。MRI検査は診断精度が高く、他の検査で虫垂炎診断が困難なときに有用である。プロカルシトニンは最近感染症の診断マーカーとして有用であり、CRP、白血球とともに虫垂炎診断に有用である。

解説: エコー検査による虫垂炎診断は、Bモードによる虫垂サイズの同定や壁構造の評価のみではカタル性虫垂炎を除外するには不十分であり、negative appendectomyを回避することが困難である。
MRIは超音波検査で診断不能は症例にCT検査に代わって有用になる可能性がある。

プロカルシトニンは副甲状腺ホルモンであるカルシトニンの前駆体で、重症最近感染症では、炎症性サイトカインの作用で多くの臓器からプロカルシトニンが産生され血液中に分泌される。

【CQ6】小児の急性虫垂炎の陰性切除率を改善させるにはどうしたら良いのか?

推奨: 陰性切除率を改善させるには、診断率を改善することが第一である。スコアリング、画像診断、active observationなどを利用して診断率とともに陰性切除率を改善させる。

解説: 虫垂陰性切除のリスク因子としては5歳未満の乳幼児虫垂炎、女児例が強調されており、都市部と非都市部の差もリスクであると報告されている。また、虫垂陰性切除と関連のある病名は急性胃腸炎、腸重積、腸間膜リンパ節炎、メッケル憩室、卵巣嚢腫であり、これらの疾患と鑑別を適切に行うことにより陰性切除率を低下させることができると考える。

【CQ7】Active observationの有用性は?

推奨: Active observationは、陰性切除率を低下させて、穿孔率、CT検査し効率を減らし、診断の遅れを防止することにおいて有用である。

解説: Active observationとは初回評価で虫垂炎の診断が確定しない場合に、身体診察と検査を繰り返して行い、虫垂炎の除外診断を続けることである。入院して、経口摂取禁、輸液施行下で観察することが多いが、外来経過観察例もある。

【CQ8】どのような症例で保存的治療を選択するのか?

推奨: 単純虫垂炎では保存的に経過する症例があり、画像診断などで進行度を評価し、保存的治療を選択することは、有効な手段である。

解説: 小児の急性虫垂炎は進行が早く、穿孔防止のためには虫垂炎の診断が着いたら早期手術が必要で、そのためにはnegative appendectomyが一定の頻度で生じるのはやむを得ないとされていた。しかし、どのような手術にも合併症の可能性があるため、できるだけ不要な手術を避けることが望ましい。
 
保存的治療後に再発する症例は4〜35%に認めるが、再発しやすい危険因子は未だ不明である。

【CQ9】急性虫垂炎と診断した場合は緊急手術が必要か?翌日手術の適応を含めて

推奨: 単純性虫垂炎では深夜に緊急手術を行う必要はなく、準緊急手術でも安全な治療が可能である。

解説: 単純性虫垂炎では深夜に緊急手術をする必要はなく、準緊急手術でも安全な治療が可能といえる。しかし、汎発性腹膜炎に移行すれば緊急手術が必要であり、注意深い経過観察が大切である。

【CQ10】【CQ11】【CQ12】【CQ13】は手術関係のため省略

【CQ14】抗菌薬の使い方は?は外来で使用しないが、

 非穿孔性虫垂炎に対して、手術前あるいは術後1日間に、広域抗菌薬の単剤投与を行う。
 穿孔性虫垂炎手術例に対する術後抗菌薬投与は、7日間、あるいは臨床基準(解熱24時間、疼痛なし、腸管機能正常化、白血球数正常化)で決定する。穿孔性虫垂炎手術例に対する抗菌薬は、頸静脈投与の後に経口投与を組み合わせてもよい。
 穿孔性虫垂炎にinterval appendectomyを適応する場合の抗菌薬投与期間は、臨床症状・データをより判断する。

解説:省略する。

初診予約はこちら 再診予約はこちら お知らせ
TOP