【補完食とは】
補完食とは、WHO(世界保健機関)が提唱する、科学的根拠のある赤ちゃんのための食事の考え方です。英語では「Complementary Feeding」と呼ばれ、その日本語の訳が「補完食」です。離乳食、英語では「Weaning Food」と言いますが、母乳やミルクから離れるための食事と言う意味です。一方、補完食は「母乳やミルクだけでは足りないエネルギーや栄養を補っていく」ことを目的としています。離乳食と大きく変わるものではありませんが、補完食は「食べる練習」だけでなく赤ちゃんの成長に必要な栄養をしっかり届けることを大切にしています。
【日本の離乳食のガイドラインとWHOの補完食のガイドラインの違い】
まず、離乳食では生後5〜6ヶ月で開始となっていますが、WHOでは6ヶ月です。また、日本では「10倍がゆ」から、「野菜の次に豆腐や白身魚」など、進め方や食事の順番が細かく記載されています。しかし、補完食では「この食材から」「この順番で」などの細かな記載はありません。
【WHOの推奨する補完食のポイント】
- 生後少なくとも4ヶ月間、そしてできるだけ6ヶ月間は母乳だけを与えましょう。母乳は、赤ちゃんを下痢や他の感染症から守る感染防御因子を含むとともに、赤ちゃんが健康に発育するために必要なエネルギーと栄養素を含んでいます。
- 生後4ヶ月から6ヶ月の間で赤ちゃんが次のようなら補完食を与えます。
- 適切に母乳育児をしているにも関わらず体重増加が不良な場合
- 頻繁に母乳を与えていても、そのあとすぐ空腹になっているような場合
- 2年かそれ以上、母乳を与えましょう。
- 補完食を開始しても、以前と同じように子どもが欲しがる度に授乳は続けましょう。授乳時間の長さも以前と同じように続けましょう。
- 次のような補完食を与えましょう。
- エネルギーと栄養素が豊富なもの
- 衛生的で安全なもの
- 家庭の食事から簡単に準備のできるもの
- 地域で入手可能かつ購入可能なもの
- 小スプーン2〜3杯から始め、徐々に量と種類を増やしていきます。生後6〜7ヶ月の母乳で育っている赤ちゃんは、補完食を1日3回与え、12ヶ月までに1日5回へと増やします。
- 食事や間食の時間に、子どもが食事するように積極的に促しましょう。
- 全ての用具がきれいに洗われていることを確認しましょう。
- 補完食はカップまたは茶碗からスプーンで与え、決して哺乳瓶で与えないようにしましょう。
- 補完食を冷蔵庫で保存しない場合には、準備してから2時間以内に与えましょう。
- 病気のときや回復期には、いつもより更に頻繁に母乳を与え、そして追加の食事も与えましょう。
- 病気をした後は、子どもが減った体重を取り戻し、再びよく発育するまで、食事ごとにできるだけたくさん食べるように促しましょう。
- 子どもの体重を表につけましょう。発育を観察することは、子どもが十分に食べていて、健康であるかを知るための有効な方法です。
(小スプーンはティースプーンを示します)
【補完食のはじめ方・進め方】
1)補完食を何時頃から始めるか?
- 舌をうまくコントロールできるようになる
- 口を上下にもぐもぐ動かし始める
- 歯が生え始める
- 口に物を入れることを好む
- 新しい味に興味を示す
補完食の開始が早すぎるのも望ましくありません。
- 少なくとも生後4ヶ月であること
- なおかつ、頻繁に母乳を与えてもすぐに空腹になってしまう
- あるいは、適切な体重が増加しない
2)補完食が早すぎると危険な理由
- 子どもはまだ他の食物を必要としていないし、母乳から置き換わってしまうかもしれない。食物を与えられると、子どもは母乳を飲む量が減り、母乳の分泌量は減ってしまう。それによって子どもの栄養必要量を満たすのがさらにむずかしくなってしまうかもしれない
- 子どもが受け取る母乳中の防御因子が少なくなってしまい、病気にかかるリスクが増加する
- 補完食は母乳ほど衛生的ではないかもしれないので、下痢になるリスクも増加する
- 母乳の代わりに、赤ちゃんが食べやすいように薄く水っぽい粥やスープを与えることがある。これらの食物を食べると満腹になるが、母乳より栄養素が少ないため、子どもの必要量を満たさない
- 母親は乳房を吸われる頻度が少なくなり、妊娠するリスクが高くなる
生後6ヶ月ではピューレ状、マッシュ状、半固形状の食べ物を食べられるようになり、8ヶ月ではほとんどの児は「フィンガーフード(手づかみで食べられる食品)」も摂取が可能となります。生後12ヶ月までには、多くの子どもが家族と同じ種類の食品を食べられるようになりますが、肉、鶏肉、魚、卵、乳製品などの動物性食品を含む栄養価の高い食品を摂取することに留意する必要があります。
補完食開始時、10倍がゆではエネルギーが足りないので最初から5倍がゆをなめらかにすりつぶして進めてください。野菜とともに、鉄分の多い肉・卵・豆製品なども少しずつ取り入れましょう。
3)補完食が遅すぎるのも危険である理由
- 子どもはエネルギーと栄養素の「差」を満たすために必要な食物を得ることができない
- 子どもの成長が止まるかゆっくりになる
- 栄養失調や微量元素不足のリスクが増加する
【よい補完食とは】
- エネルギー、タンパク質、微量元素(特に鉄、亜鉛、カルシウム、ビタミンA、ビタミンC、そして葉酸)に富んでいる
- 衛生的で安全
- 病原体がない(たとえば、病原微生物や他の有害な微生物)
- 有害な化学薬品や毒素がない
- 子どもが喉を詰まらせるような骨や硬い小片がない
- 沸騰するほどの熱さではない
- 辛すぎない、塩辛すぎない
- 子どもが食べやすい
- 子どもに好まれる
- 地域で入手可能かつ購入可能
- 準備しやすい
【5〜6ヶ月の目安】
- ひとさじの「5倍がゆ」から始める
- なめらかなペースト状、スプーンを傾けて、こぼれ落ちないくらいのとろみ
- 授乳はこれまで通り継続
- 5ヶ月は1日1回、6ヶ月は1日2回
- 「鉄」をプラスすることを意識する レバー粉やカツオ粉をプラス
- 6ヶ月に卵黄から卵をスタート まずはかた茹でから
- 基本的に調味料は使用しない
- 6ヶ月頃から少量の卵白を試してよい
【7〜8ヶ月の目安】
- 1日2回
- 授乳は継続
- 8ヶ月までに卵チャレンジ完了
- 「鉄」と「タンパク」をプラスすることを意識 肉か魚を毎食取り入れる レバー粉やカツオ粉をプラス
- おかゆの水分を徐々に減らす
- 3mmくらいまでの細かなみじん切り
- 上あごと舌でつぶせる硬さ
- 調味料は原則使用しない
【9〜11ヶ月の目安】
- 1日3食
- 授乳は継続
- 手づかみ食べを開始
- 「鉄」と「タンパク」をプラスすることを意識 肉か魚を毎食取り入れる レバー粉やカツオ粉をプラス
- 少量の調味料や油(バターやMCTオイル)をプラス
- 8mmくらいまでの細かなみじん切り
- 歯茎でつぶせる硬さ
- 5倍がゆ〜軟飯程度の水分量
【12〜18ヶ月の目安】
- 食事の好みが分かれてくるので赤ちゃんに合わせて献立をアレンジ
- 1日3食+補食2回
- 授乳継続
- 補食でエネルギーやタンパク質をプラス 肉か魚を毎食取り入れる レバー粉やカツオ粉をプラス
- 1cmくらいの角切りやイチョウ切り 歯茎で噛める硬さ
- 少量の調味料や油(バターやMCTオイル)をプラス
- 興味を持ったら、赤ちゃんにスプーンを持たせる
これらはあくまでも目安ですので、堅苦しく考えなくて良いのです。
【鉄の供給源と鉄の吸収率】
子どもが食品から吸収する鉄の量は、以下によって決まります。
- 食品中の鉄の量
- 鉄の種類や性質(肉と魚からの鉄は、植物・ミルク(乳汁)・卵からの鉄よりもよく吸収される)
- 一緒に食べるその他の食品の種類や性質(あるものは鉄の吸収を促進し、あるものは阻害する)
- 子どもが貧血かどうか(貧血があると鉄は吸収しやすい)
1)鉄を多く含む食品の例
| 鉄を多く含み、吸収がよいもの | 鉄を多く含むが、吸収は乏しいもの |
|---|---|
| 全ての種のレバー その他の内臓、とりわけ赤い内臓と血 動物の肉、特に赤い肉 鶏肉、特に色の濃い肉 鉄を強化した食品(幼児用強化シリアルのようなもの) |
卵黄 豆類 緑色葉菜類 |
2)鉄の吸収に影響するもの
- 一緒に食べることで吸収率をあげるもの
- ビタミンCが豊富な食品
- 動物、鳥の肉と内臓
- 魚、及び他の海産物
- 飲むと吸収率が妨げられるもの
- お茶、コーヒー
また、発酵させた穀物を食べると、鉄の吸収が増します。
【重要な栄養素を多く含む食品】
1)亜鉛
- すべての種のレバーとその他の内臓
- 血液と一緒に調理された食品
- 動物、鳥類、魚類の肉
- 貝類
- 卵黄
2)ビタミンA
- (ヒトの)母乳
- すべてのレバー
- 赤いパーム油(漂白されていないもの)
- 卵黄
- オレンジ色の果物―マンゴー、パパイヤ、パッションフルーツ(オレンジは除く)。色の濃いものほどビタミンAを多く含む
- 黄色野菜―にんじん、かぼちゃ、黄色さつまいも、赤/オレンジのピーマン(トマトは除く)。色の濃いものほどビタミンAを多く含む
- 緑色葉菜類―ほうれん草、アマランサスの葉、ケールの葉、キャッサバの葉、かぼちゃの葉、ブロッコリー。緑色が濃いものほどビタミンAを多く含む
3)ビタミンC(調理によってビタミンCの一部が破壊される)
- 新鮮な果物―グアバ、オレンジ、レモン、みかん、マンゴー、パパイヤ、ベリー類、メロン、パッションフルーツ、桃
- トマト、ピーマン
- 緑色葉菜類―ほうれん草、アマランサスの葉、ケールの葉、キャッサバの葉、さつまいも葉、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー
- バオバブの果肉
- 新鮮なデンプンの多い根菜と果物は、たくさん食べた場合にはよい供給源である―ジャガイモ、さつまいも、キャッサバ、プランテーンの実
4)カルシウム
- ミルク(乳汁)と乳製品―チーズ、ヨーグルト
- 骨ごと食べられる魚―小魚、乾燥魚をすりつぶしたもの、缶詰の魚










