【はじめに】
ガイドラインは公益財団法人日本医療機能評価機構が作成した「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に準じてエビデンス総体と推奨グレードを設定しています。ちなみにMindsとはmedical information network distribution serviceの略です。
それによるとガイドラインとは「診療上の重要度の高い医療行為について,エビデンスのSR(Systematic Review)とその総体評価,益と害のバランスなどを考量して,患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」となっています。
下記のCQとはClinical questionのことです。
ガイドラインのCQの外来診療に役立つ部分をまとめました。
【CQ1】早産児のRSウイルス細気管支炎の予防にパリビズマブ(シナジス)は有効か?
推奨: 早産児に対するパリビズマブ投与は、投与しない場合に比べてRSウイルス感染症による入院を減少させるため、パリビズマブの投与を強く推奨する。
【CQ2】慢性肺疾患の治療を受けた新生児、乳児、および幼児においてパリビズマブを投与すると、投与しないときに比べて、RSウイルス感染症による入院を減少させるか?
推奨: 慢性肺疾患の治療を受けた新生児、乳児、および幼児に対するパリビズマブ投与は、投与しない場合に比べて、RSウイルス感染症による入院を減少させるため、パリビズマブの投与を強く推奨する。
CQ1、CQ2に対する解説: 早産児、慢性肺疾患以外にも適応がある。詳細に関しては下記サイトを参考のこと
https://tsudashonika.com/synagis/
【CQ3】RSウイルス細気管支炎にステロイドは有効か?
推奨: RSウイルス細気管支炎にステロイドの全身投与、吸入ともに有用性を示すデータはない。(デキサメタゾン全身投与とアドレナリン投与の併用で入院を減少させる可能性はあるがさらなる研究が必要)
解説: 近年の報告ではステロイドの局所吸入療法、全身投与ともに有効性に関して否定的な報告が多い。
【CQ4】RSウイルス細気管支炎にβ2刺激薬は有効か?
推奨: RSウイルス細気管支炎にβ2刺激薬を使用することは、呼吸障害(呼吸数、心拍数、経皮酸素飽和濃度)、臨床的重症度スコア、入院率を改善せず、入院期間を短縮しなため、ルーチンに使用しないことを推奨する。
解説: アトピー素因(両親、兄弟の喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎など)があるものにはβ2刺激薬投与で臨床的重症度スコアの改善を認めていた。
【CQ5】RSウイルス細気管支炎に抗菌薬は有効か?
推奨: ウイルス感染が主体であり、抗菌薬投与は原則的に不要である。
解説: マクロライド系抗菌薬、βラクタム系抗菌薬ともに有効性を示すデータはない。しかし、RSV細気管支炎では菌血症を伴うことや、肺炎や中耳炎を合併する可能性もあり、臨床症状や経過から細菌感染症の合併が疑われる場合には、細菌検査を行なったのちに抗菌薬を投与することは検討して良い。
【CQ6】RSウイルス感染症後の反復性喘鳴にロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)は有効か?
推奨: RSウイルス感染症後のロイコトリエン受容体拮抗薬の定期内服は、重大な副作用はなく反復性喘鳴の頻度を減らす可能性があり、RSウイルス感染症後の治療として提案される。
解説: RSV感染に伴う急性細気管支炎後のLTRAの投与は再発喘鳴の頻度を減らす可能性があることを示すが、確実な推奨を行うことができず、提案のみにとどまる。