【インフルエンザとは】
インフルエンザというウイルスによる感染症で流行性感冒(流感)とも呼ばれます。
16世紀に冬に流行し春先に収束するこの病気が星やその他の環境に影響することにより起こるのではないかと考えられ、影響するというインフルエンスから名付けられました。
ちなみにインフルエンザ菌、代表的なものとして乳幼児のワクチンで予防されるHibは1800年代にインフルエンザが流行したときに分離された細菌で、その後、このウイルスとは異なることが判明しましたが名前だけが残っているのです。
【インフルエンザウイルスについて】
インフルエンザにはA、B、Cの3つの種類がありますが、ワクチンに含まれているのはAとBだけです。
Cは散発的に発生し、軽度のインフルエンザ様の症状を呈するだけです。A型インフルエンザはHAとNAというタンパク質の種類で分類されています。
ヒトではHAは3種類(H1、H2、H3)、NAは2種類(N1、N2)あります。2009年に大流行した新型インフルエンザはH1N1pdmです。
現在流行しているのはH1N1pdmとA香港型H3N2であり、Aソ連型はH1N1ですが今後流行する可能性は低いとされています。
B型の分類はヴィクトリア株と山形株の2つの分類になっています。2015年から日本でもワクチンにA型2種類とB型2種類の4つの株が含まれるようになりました。
ヒトのインフルエンザは毎年突然変異を起こして上述のHAとNAの抗原性が少しずつ変化するため、毎年ワクチンを打たなければなりません。
【感染様式】
飛沫感染
【潜伏期】
1〜4日(平均2日)
【症状】
典型的な症状は突然の発熱に始まり、悪寒、咽頭痛、頭痛、関節痛、倦怠感などの全身症状を呈します。
一般的には数日で解熱し、その頃から鼻汁、咳などが目立ってきます。解熱しても完全な回復には1〜2週間ほどかかることが多いようです。
下痢、嘔吐などの消化器症状は少ないと言われています。低年齢では全身症状は軽い傾向があり、急性中耳炎の重要な原因としても知られています。
解熱傾向を示し再び発熱する2峰性の発熱がみられることもあります。
ふくらはぎの痛みを訴え歩かなくなるような筋炎も生じることがあり、嘔吐や腹痛などの胃腸症状が強い傾向もあります。
【合併症】
最も問題になるのは脳炎(脳症)と肺炎です。
【診断】
臨床症状、流行などから疑い、迅速検査をして診断をつけるのが一般的です。
初期には陽性に出ることは少ないため、発症後12時間以降の検査が良いとされています。最近では発症初期から陽性に出やすい方法もあります。
【治療】
現在5種類の抗インフルエンザ薬が小児に使用されています。
- オセルタミビル(タミフル):1日2回、5日間服用します。
- ベラミビル(ラピアクタ):1回の点滴静注です。
- ザナミビル(リレンザ):1日2回、5日間吸入します。
- ラニナビル(イナビル):1回の吸入です。
- バロキサビル(ゾフルーザ):1日1回だけ服用します。
オセルタミビル(タミフル)投与後の異常行動が問題となったため10代のインフルエンザ患者でのオセルタミビル(タミフル)の使用は禁止となっていましたが、最近使用できるようになりました。
いずれも発症48時間以内の使用でないと効果を期待できないとされています。
バロキサビル(ゾフルーザ)は12歳未満の小児における使用経験が少ないこと、および、変異ウイルスの出現率が高いことから、日本感染症学会では慎重に投与することを検討すべきとしています。簡単に言えば現時点では、推奨できないということです。
軽症のインフルエンザは治療の必要はありません。
現在はアメリカCDC、アメリカ小児科学会でも全ての罹患者に抗インフルエンザの投与を考慮するとなっています。
ちなみに日本小児科学会でも「基礎疾患を有さない患者であっても、症状出現48時間以内にインフルエンザと診断された場合は各医師の判断で投与を考慮する。一方で、多くは自然軽快する疾患でもあり。抗インフルエンザ薬の投与は必須では無い。」となっています。
【予防・ワクチン】
日本で現在認可され使用できるワクチンはA型2種類とB型2種類の入った不活化ワクチンだけです。
アメリカでは点鼻のよる生ワクチンがあります。詳細は予防接種の中のインフルエンザを参考にして下さい。
当院では経鼻生ワクチン(フルミスト)を接種しています(予約が必要です)。
【登校登園基準】
発症した日を0として5日、解熱した日を0として乳幼児では3日、児童。生徒では2日間経過していることの両方を満たしていることが条件です。以下の表を参考にしてください。