【クループ性気管支炎とは】
クループは声を出す声門周囲の感染症です。
パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルス、麻疹ウイルス、エンテロウイルスなどのウイルス感染によるものと、主にインフルエンザ菌b型(Hib)などによる急性喉頭蓋炎があります。
ここではウイルス感染によるクループに限って記載します。細菌性の喉頭蓋炎に関しては別途記載する予定です。
3歳までが90%を占め、男児に多い傾向があります。秋〜冬にかけて流行します。また、かかりやすい家族がいるとも言われています。
【感染様式】
原因が様々ですが飛沫感染が主になります。
【潜伏期】
原因により異なります。
【診断】
下記に記載する特徴的な症状で診断することが多いです。
入院が必要な程重い場合には病院で頚部のレントゲン写真を撮り、気道が狭くなっていることを確認することもあります(steeple sign)。
【症状】
風邪の症状に引き続き、発熱、オットセイが鳴くようなあるいは犬が吠えるような咳(犬吠様咳嗽)や声がかれる(嗄声)、息を吸うときにゼーゼー聞こえる(吸気性喘鳴)認められるのが通常です。
これらの症状は主に夜間に認めることが多く、昼間の来院されたときには症状が無いこともまれではありません。
症状が重くなると喘鳴が増強し、肋骨の間や胸骨の上のくぼみがペコペコしてきます(陥没呼吸)。
日本ではまだありませんが、海外のガイドラインではWestleyのクループスコアを用いた治療指針があります。
水分摂取が出来ない場合や酸素濃度が90%以下であったり、クループスコアが5点以上では専門医療機関への紹介が必要となります。
【治療】
有効な治療はなく、対処療法しかありません。
基本はアドレナリンの吸入とステロイドの全身投与になります。
アドレンリンの吸入は海外のガイドラインでは重症度のみの推奨されており、気管挿管を回避する為の一時的な処置と考えられています。
一方、日本では比較的軽症の患者さんにも使用されることが多いですが、効果は一過性なので帰宅後の悪化に注意が必要になります。
投与量は海外の製剤と日本の製剤が異なるため単純に比較することが出来ません。
ブデゾニド(パルミコート)の吸入も同様に効果があると言われていますが、日本では適応外となります。
またその使用量は2mgと多いため使用されることは少ないと思います。
ステロイドの全身投与は外来では経口、入院では点滴になることが多いです。その量はデキサメサゾン(デカドロン)で0.15mg/kgの単回投与になります。
デカドロンには錠剤とシロップがありますが、シロップ(デカドロンエリキシル)にはアルコールが含まれているので勧められていません。錠剤は破砕して服用して頂きます。
ご自宅では水分の補給と加湿をしてあげて下さい。
アメリカの映画でお母様がシャワーを出した浴室に子どもを抱いて入り加湿しているシーンを見たことがあります。
【参考にした文献】
小児呼吸器感染症診療ガイドライン 2017
小児科診療ガイドライン