【血友病とは】
血友病は血の止まらない病気の代表ともいえるでしょう。血友病(Hemophilia)の名前は、1828年にドイツのホップ(F. Hopff)が、ギリシャ語の「hemo(血液)」と「philia(好み、傾向=出血しやすい傾向)」を組み合わせて命名しました。血液が固まりにくく、出血しやすい体質を指す言葉です。
凝固因子VIII(FVIII)の異常である血友病Aと凝固因子IX(FIX)の異常である血友病Bに分類されます。VIII因子はこう血友病因子、IX因子はクリスマス因子とも呼ばれています。この因子が発見された患者さんの名前がChristmasであったことで名付けられました。また、論文が発表された時期がクリスマスであったことが偶然に重なりました。
【基本病態】
止血には一次止血と二次止血があります。一次止血は主に血小板、二次止血は凝固因子というものが中心になります。血友病はこの凝固因子の欠乏により血が止まりにくくなるのです。
止血のメカニズムに関しては、「出血傾向(血が止まらない・止まりにくい)」を参考にしてください。
【症状】
血小板の異常は全身性の点状出血が特徴的ですが、血友病では斑状出血のように比較的大きな紫斑が見られることが多いです。関節内出血や筋肉内出血などの深部出血が多いのも特徴です。
新生児では分娩時の吸引で頭蓋内出血が2~3%認められます。乳児期後半から徐々に皮下出血が目立ってきます。これは自分でたくさん動くようになるからです。
出血は重症になる程止まりにくくなります。関節や筋肉に出血が起こると、痛み、不快感、腫れ、張り、関節や筋肉の動かしにくさを生じます
【遺伝形式】
遺伝形式はともに伴性潜性(劣勢)遺伝形式をとります。患者は原則男子のみで、女性は保因者になります。遺伝形式をとりますが、家族歴のない孤発例も30%程度存在します。
女性が発病する例は非常に稀で、父親が血友病で母親が保因者の場合だけです(98.5%が男性です)。
【頻度】
出生数1万人あたり1人(男子出生5,000人に1人)で、血友病Aが5657人、Bが1252名以上報告されています。海外での頻度の方が高いです。
【重症度】
血液中の欠乏している凝固因子の値により、3段階に分けられます。
血液中の第VIII因子、または第IX因子活性の正常値は50~150%です。
- 軽症型
(正常の凝固因子活性の5~30%外科手術または大けがをすると長く出血をする可能性がある程度です。怪我をしなければ出血をすることはあまりありません。 - 中等症型
(正常の凝固因子活性の1~5%)外科手術、大けが、歯科処置の後に長く出血をする可能性があります。理由のはっきりしない出血はほとんどありません。 - 重症型
(正常の凝固因子活性の1%未満) 筋肉や関節(おもに膝、肘、足首)で頻繁に出血します。理由側からに出血もあります。
【検査所見】
血液検査で、内因系凝固因子の機能を反映する活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT: activated partial thromboplastin time)の延長が見られますが、外因系凝固因子の機能を反映するプロトロンビン時間(PT: prothrombin time)は正常です。
血液検査にて第VIII因子あるいはIX因子が正常の40%以下の場合診断が可能です。
【治療】
治療は欠乏した凝固因子(VIII、IX因子)を補充することです。
出血時治療(オンデマンド療法)
凝固因子製剤の必要量を補充します。できるだけ早く、疑いがあるときは治療をすることが必要です。
関節内出血、筋肉内出血、特に腕や足、首、口、舌、額、目の傷、頭部のひどい打撲、場所にかかわらず大量出血や出血の持続、場所に関わらず激しい痛みや腫れ、縫い合わせが必要な傷、出血につながる事故の際には補充が必要です。
出血予防療法
歯科処置を含む外科手術、出血の可能性のある活動の際には予防が必要です。
定期補充療法
短期的には出血予防を目的として、長期的には関節症の発症進展抑止を目的として行われる、非出血時に長期間にわたり定期的に補充する方法です。
エビシズマブ
血友病A患者さんに対してはヒト二重特異性モノクローナル抗体(バイスペシフィック抗体)が使用できます。活性型IX因子と第X因子を架橋することにより第X因子の活性化を促進します。インヒビターを誘導しないこと、インヒビターの有無にかかわらず使用できることが特徴です。日本で開発された薬です。
補助療法
出血部を圧迫すること、RICE処置(Rest(安静)、Icing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上))を行います。関節内出血に対して穿刺を行うこともあります
インヒビター保有者の治療
第VIII因子、第IX因子とも繰り返し投与ひているとインヒビターが出現します。出血時にはrFVIIa、活性型プロトロンビン複合製剤(APCC)、感想濃縮人血液凝固第X因子加活性化台VII因子(FVIIa/FX)によるバイパス止血療法が選択されます。血友病Aでは上記のエビシズマブが投与されることもあります。
【注意】
血小板の機能を落とすアスピリンは使用しないこと、筋肉注射を避けること、歯を大切にすること、健康を維持することなどが必要です。
【トリビア】
19世紀のヨーロッパ王族(ビクトリア女王の家系)に多く見られたため、「王家の病」とも呼ばれました。代表的なのは最後のロシア皇帝、ニコライII世の子ども、アレクセイ・ニコラビッチです。彼が血友病であったため、両親が怪僧ラスプーチンに傾倒していってしまったのです。これがまさにロシア革命の原因の一つです。彼らはエカリーナに連れて行かれ、そこで処刑されました。後世になってエカテリーナで大人の骨と子どもの骨が見つかりました。遺伝子検査にてこれらの骨がニコライII世の家族の骨であることが確認されましたが、女の子の骨だけが1人分なかったそうです。これがアナスターシャの話になるのですが、話が長くなるのでこの辺りにさせていただきます。











