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診療案内 鼻アレルギー診療ガイドライン2024のCQ.

【はじめに】

  ガイドラインは公益財団法人日本医療機能評価機構が作成した「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に準じてエビデンス総体と推奨グレードを設定しています。ちなみにMindsとはmedical information network distribution serviceの略です。

 それによるとガイドラインとは「診療上の重要度の高い医療行為について,エビデンスの SR(Systematic Review)とその総体評価,益と害のバランスなどを考量して,患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」となっています。

 下記のCQとはClinical questionのことです。

 ガイドラインのCQの外来診療に役立つ部分をまとめました。

【CQ1】重症季節性アレルギー性鼻炎の症状改善に抗IgE抗体製剤は有効か。

推奨: オマリズマブ(抗IgE抗体:ゾレア)は、抗ヒスタミン薬と噴霧用ステロイド薬の併用でも症状の残る患者に対して、くしゃみ、鼻汁、鼻閉、流涙、眼の痒み、鼻の症状、眼の症状スコア 、生活の質を改善する。最適使用推進ガイドラインを満たす場合、抗IgE抗体製剤の投与を強く推奨する。

解説: オマリズマブは(ゾレア)はIgE のマスト細胞結合Cε3に対するヒト化抗IgEモノクロナール抗体であり、花粉症に対する単剤での効果は、エビデンスがあり証明されている。

【CQ2】アレルギー性鼻炎患者に点鼻用血管収縮薬は鼻噴霧用ステロイド薬と併用すると有効か。

推奨: 点鼻用血管収縮薬は短期間に限定して用いるが、鼻噴霧用ステロイドと併用して投与するとリバウンド現象が予防され鼻症状に対して有効であるため、点鼻用血管収縮薬は鼻噴霧用ステロイド薬と併用することを弱く推奨する。

解説: 血管収集薬の短期間使用は有効である。効果は2〜4時間と一過性であり、鼻閉以外の鼻漏、かゆみ、くしゃみは改善しない。

 点鼻用血管収縮薬の長期使用は、鼻粘膜のリバウンド現象を引き起こし、逆に腫脹が生じて、鼻閉が引き起こされることが報告されている。治療には点鼻用血管収縮薬の使用中止と数週間の鼻噴霧用ステロイド薬での治療が必要である。1日1回点鼻用血管収縮薬と鼻噴霧用ステロイド薬を併用して1ヶ月投与すると、鼻症状に対する高い効果が示され、リバウンド現象も予防できる。睡眠時無呼吸をともなう小児アレルギー性鼻炎患者に対しても、1日1回点鼻用血管収縮薬と鼻噴霧用ステロイド薬を併用して2ヶ月投与すると、リバウンド現象なく鼻症状に対する高い効果が認められる。しかし、今後の他施設での検証が必要である。なお、2歳未満の乳幼児には禁忌となっている。

【CQ3】抗ヒスタミン薬はアレルギー性鼻炎のくしゃみ・鼻漏・鼻閉の症状に有効か。

推奨: くしゃみや鼻漏を抑える効果はあるが、鼻閉の症状にも有効な第2世代抗ヒスタミン薬が存在するため、くしゃみ・鼻漏・鼻閉の症状に弱く推奨する。

解説: 第2世代抗ヒスタミン薬はくしゃみや鼻漏を抑える効果を十分に持っているが、鼻閉も抑えることが示されている。
 他の中枢神経抑制薬を同時に内服、アルコールを飲酒すると、中枢抑制作用が強くなることがある。運転には注意が必要。

【CQ4】抗ロイコトリエン薬、抗プロスタグランジンD2(PGD2)・トロンボキサンA2(TXA2)薬はアレルギー性鼻炎の鼻閉に有効か。

推奨: 通年性アレルギー性鼻炎と花粉症において、経口抗ロイコトリエン薬、抗プロスタグランジンD2(PGD2)・トロンボキサンA2(TXA2)薬は、鼻閉の症状スコアを有意に改善するため、強く推奨する。

解説: アレルギー性鼻炎の鼻閉は鼻粘膜の容積血管平滑筋の弛緩と血漿漏出による間質浮腫によって生じる。その発現には、鼻粘膜に存在するマスト細胞や好酸球から遊離されるヒスタミンやロイコトリエン、PGD2、TXA2などの化学物質の直接作用と中枢を介する副交感神経反射が関与するが、前者の作用の方が大きい。プランルカストは抗ヒスタミン薬より鼻閉の改善率が有意に高い。モンテルカストは投与期間に応じて治療効果が増す。

抗PGD2・TXA2薬(ラマトロバン(小児適応なし)に関しては、投与4週間後に通年性アレルギー性鼻炎患者の鼻閉が有意に改善することが報告されている。

【CQ5】漢方薬はアレルギー性鼻炎に有効か。

推奨: 小青竜湯は通年性アレルギー性鼻炎のくしゃみ発作、鼻汁、鼻閉を有意に改善する抗κがあり、弱く推奨する。

解説: 漢方薬だけでの治療も考えることはできるが、麻黄を中心とする漢方薬は鼻噴霧用ステロイド薬を中心とする基本的な治療におけるレスキュー薬としての役割を担うとするのが現状である。

【CQ6】アレルギー性鼻炎に対する複数の治療薬の併用は有効か。

推奨: 抗ヒスタミン薬と塩酸プソイドエフェドリンとの配合剤(ディレグラ)は、抗ヒスタミン薬単独よりスギ花粉症に対する鼻閉改善効果において有効であり、併用を弱く推奨する。

解説: 抗ヒスタミン薬と抗ロイコトリエン薬の併用の効果は、鼻噴霧用ステロイド薬の鼻症状への効果と同等と評価されている。鼻閉では鼻噴霧用ステロイド薬単剤が有意に効果を示したとされる。抗ヒスタミン薬と塩酸プソイドエフェドリンとの配合剤(ディレグラ)は、抗ヒスタミン薬単独よりスギ花粉症に対する鼻閉改善効果において優れる経口抗ヒスタミン薬と鼻噴霧ステロイド薬の併用は経口抗ヒスタミン薬単独より鼻症状への効果はあるが、鼻噴霧用ステロイド役単独とは有意差が認められない。

【CQ7】スギ花粉症に対して花粉飛散前からの治療は有効か。

推奨: 鼻噴霧用ステロイド薬の初期療法は、シーズン中の平均鼻症状スコアを有意に改善し、費用対効果の面で優れており、弱く推奨する。

解説: 第2世代抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、鼻噴霧用ステロイド薬による初期療法では、症状が少しでも出た場合、花粉症飛散前でもすぐ内服すべきである。しかし症状がない場合、花粉飛散開始時から初期療法を開始すれば、症状発現は抑制できる。

 花粉飛散前から少量の花粉飛散で症状を発症する症例は1〜2割存在することから、花粉飛散ピーク時にどう症状を抑えるか、使用薬剤と個々の症例に応じて対応する必要がある。

【CQ8】アレルギー性鼻炎に対するアレルゲン免疫療法の効果は持続するか。

推奨: すぎ花粉症に対するSLITを15ヶ月間投与後中止しても次の2〜3シーズンは有意に症状が改善し、室内塵ダニ単独感作例に対するSLITを3〜5年行うと7〜8年間有効である。効果持続を期待するためにアレルゲン免疫療法を実施することを弱く推奨する。

解説: 上記の通り。

【CQ9】小児アレルギー性鼻炎に対するSLITは有効か。

推奨: 小児SLITのアレルギー性鼻炎に対するランダム化プラセボ対照二重盲検比較試験のメタアナリシスにおいても有効性が示されており、実施することを強く推奨する。

解説: 本邦の疫学調査では5〜9歳のスギ花粉症の有病率は3割、通年性アレルギー性鼻炎2割となっている。小児アレルギー性鼻炎は罹患率の増加に伴い低年齢発症も増加し、アトピー性皮膚炎や気管支喘息を伴う場合が多い。アレルギー性鼻炎は寛解率が低いため、低年齢で発症すると重症する傾向にある。乳幼児期にアレルギー性鼻炎の症状があると、学童期の気管支喘息や運動誘発性喘息を発症する可能性が高くなる。

 小児では鼻閉、鼻汁、鼻のかゆみ、くしゃみが辛い症状で学業や睡眠への影響もある。管理の基本は抗原回避である。治療法としては薬物療法、アレルゲン免疫療法、手術療法が存在する。小児アレルギー性鼻炎で重症の場合、炎症効果に優れた鼻噴霧用ステロイド薬を使用し、年齢に応じて第2世代抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬を併用する。くしゃみ、鼻漏型、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、慢性湿疹がある場合は、第2世代抗ヒスタミン薬、鼻閉型または充全型、気管支喘息を合併する場合には、抗ロイコトリエン薬を選択する。十分な効果が期待できない場合も多く、原因抗原が明確であればアレルゲン免疫療法(SLIT)を積極的に行う。

【CQ10】妊婦におけるアレルゲン免疫療法は安全か。

推奨: SCIT、SLITともに妊娠中に導入することは禁忌だが、アレルゲン免疫療法の継続は妊娠中の継続に関しては安全性が示されており、弱く推奨する。

解説: 妊娠5ヶ月以降から 分娩までは、鼻症状が日常生活に影響する場合は薬物療法を検討する。治療上の有益性が危険性を上回ると判断された時にのみ、安全性の高い薬剤を使用する。局所薬は血中への移行が少ないため、妊婦や授乳婦に治療を行う場合には鼻噴霧用ケミカルメディエーター遊離抑制薬、鼻噴霧用抗ヒスタミン薬、鼻噴霧用ステロイド薬などの局所用薬を少量用いる。点鼻用血管収縮薬の局所投与も最少量にとどめる。

 妊娠中の症例に、アレルギー性鼻炎に対する手術療法も避けるべきである。

【CQ11】職業性アレルギー性鼻炎の診断に血清特異的IgE検査は有用か。

推奨: 低分子抗原に対する免疫学的検査は、陽性率が低く有用でない。実施しないことを弱く推奨する。

解説: 毛皮取扱業(獣毛)、パン製造業(小麦粉・ライ麦粉)、麺製造業(穀物粉)、ブリーダーなど動物取扱業(動物皮屑)、木材加工業(材木)などで鼻炎発症の頻度が高い。診断には問診が重要である。

 職業性アレルギー性鼻炎の診断は、原則的には通常のアレルギー性鼻炎に対する診断と同様である。問診をベースに免疫学的検査を行い、診断の確定には鼻誘発試験を行う。動植物などの高分子抗原では、免疫学的検査は陽性になるので有用である。一方、金属や染料などの低分子抗原はハプテンとして作用するため、単独では抗原性がない。したがってイソシアネートなど一部を除いて免疫学的検査の陽性率は低く、結成特異的IgE検査は有用でない。

【CQ12】アレルギー性鼻炎の症状改善にプロバイオティクスは有効か。

推奨: アレルギー性鼻炎症状を改善する有効なプロバイオティクスが存在する。実施することを弱く推奨するが、現状では標準治療を優先する。

解説: Bifidobacterium longum BBB536(グリコからヨーグルトがある)はスギ花粉症の症状緩和に効果的である。
季節性アレルギー性鼻炎に対してLactobacillus gasseri KS-13、Bifidobacterium bifidum G9-1、B.longum MM-2も症状スコアを改善した。

 その他、Lactobacillus plantarum YIT 0132(LP0132)で発酵された柑橘類ジュース(ヤクルトからジュースあり)を用いた通年性アレルギー性鼻炎に対する試験でも有意な効果を認めている。

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