【蕁麻疹とは】
皮膚のマスト細胞(肥満細胞)から何らかの機序、通常IgEを介した反応により、脱顆粒(ます細胞内の顆粒が外に出ること)し、皮膚組織内に放出されたヒスタミンなどの化学伝達物質が皮膚小血管と神経に作用して、血管拡張(紅斑)と、決勝成分の漏出(膨疹)と痒みを生じるものです。
鯖による蕁麻疹などが有名ですが、実は蕁麻疹全体の7割は原因が特定できない特発性のものです。実際には原因が特定できることは少ないので後述するように原因になる抗原を特定できることはまれです。
【症状】
地図状や環状の膨疹(盛り上がった湿疹)が出現し、数時間以内に消えたり場所が変わったりします。
病院を受診するときには消えていることも多いです。
逆に湿疹があったにも関わらず受診時に消えている時は蕁麻疹が疑わしいです。
発症してからの期間が6週間以内を急性蕁麻疹、6週間を超えて出現するものを慢性蕁麻疹と定義します。
【種類】
1. アレルギー性の蕁麻疹
原因として食物、薬品、植物、昆虫の毒素などがあり、これらの原因物質がIgEを介して起こるアレルギー反応です。通常原因物質である抗原に暴露して数分から数時間以内に起こります。
2. 食物依存性運動誘発性アナフィラキシー
特定の食物摂取後、2〜4時間以内に運動負荷が加わると起こるアナフィラキシーです。それぞれ単独では起こらず、原因食品を摂取することと運動が加わって生じます。小麦、甲殻類が多いとされていますがそれ以外でも生じます。部活による運動が行われる中学生以降が多いとされています。
3. 非アレルギー性蕁麻疹
アレルギー機序を介さないもので造影剤や青み魚によるスカンボイドリアクションなどがあります。非ステロイド性抗炎症薬である解熱鎮痛剤により増強されやすいです。
4. アスピリン蕁麻疹
アスピリンをはじめとするNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)により誘発される蕁麻疹です。
5. 物理学性蕁麻疹
皮膚の表面いき快適刺激、寒冷暴露、日光照射、温熱負荷、圧迫、水との接触により起こります。
6. コリン性蕁麻疹
入浴、運動、精神的緊張など発汗による刺激で起こります。
7. 血管性浮腫
通常の蕁麻疹より深い皮下組織に生じる浮腫のため、あまりかゆみを伴いません。顔、口唇、眼瞼に起こりやすく、以前はクゥインケの浮腫と呼ばれていました。一部は遺伝性で生命を脅かすものもあります。これについてはまたお話しします。
8. その他の蕁麻疹および蕁麻疹類似疾患
a.蕁麻疹様血管炎
皮膚の症状や経過は蕁麻疹に似ていますが、個々の皮疹が24時間以上持続して、皮疹が消えていく時に色素沈着を残します。全身性エリテマトーデス(SLE)に合併することがあるので注意が必要です。
b.色素性蕁麻疹
皮膚に増すと細胞が過剰に集まって色素沈着を認める病気です。湿疹の部分を擦るとその部位に蕁麻疹が出現します(ダリエ徴候)。重症だとアナフィラキシーを起こすこともあります。
c.Schnitzler症候群およびクリオピリン関連周期発熱症候群(cryopyrin-associated periodic syndrome; CAPS)
Schnitzler症候群は慢性蕁麻疹と主にIgM-κ型のMタンパク血症を呈する疾患で子供では極めて稀です。
CAPSは自己炎症症候群で、周期的な発熱と関節炎、発心、眼症状、腹部症状などを伴います。
当院の下記のサイトも参考にしてください。
https://tsudashonika.com/disease-cat/immunity/cryopyrin-associated-periodic-syndrome-caps/
【検査】
原因となる物質があるのであれば、血液検査が有効です。
しかし、食物アレルギーと同様にあくまでも補助的であることを忘れてはなりません。
【治療】
原因や悪化因子がわかるのであればそれらを避けることが第一の予防となります。
しかし、ほとんどの患者さんで原因を見つけることはできないので症状が出た時に対処的な治療をすることになります。
一般的には抗ヒスタミン薬、特に鎮静作用の低い第二世代を使用します。
気をつけていただきたいのは、抗ヒスタミン薬は痙攣を誘発する可能性があるので痙攣の素因のある子ども達には注意が必要です。
1種類の抗ヒスタミン薬で効果が十分でない時には、他の抗ヒスタミン薬を追加あるいは、倍量服用をします(アレグラ、デザレックス、ビラノアの倍量服用は保険適用外)。
ステロイドの併用も効果がありますが短期間の服用に止めるべきです。
欧米ではロイコトリエン拮抗剤(モンテルカスト(キプレス、シングレア)プランルカスト(オノン))を併用、H2ブロッカーである胃薬のファモチジン(ガスター)などを併用することもあります(日本では保険適応外)。
慢性の蕁麻疹も急性の蕁麻疹と同じ考え方で良いと思います。難治性の慢性蕁麻疹には生物学的製剤のオバリズマブ(ゾレア)が使用可能です(12歳以上)。
【予後】
一般的には良好です。一部のアレルギー性蕁麻疹ではアナフィラキシーショックを、遺伝性血管性浮腫では気道浮腫による窒息で致死的になることがあるので注意が必要です。