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診療案内 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021のCQ.

【はじめに】

  ガイドラインは公益財団法人日本医療機能評価機構が作成した「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に準じてエビデンス総体と推奨グレードを設定しています。ちなみにMindsとはmedical information network distribution serviceの略です。

 それによるとガイドラインとは「診療上の重要度の高い医療行為について,エビデンスの SR(Systematic Review)とその総体評価,益と害のバランスなどを考量して,患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」となっています。

 下記のCQとはClinical questionのことです。

 ガイドラインのCQの外来診療に役立つ部分をまとめました。

【CQ1】アトピー性皮膚炎の治療にステロイド外用薬はすすめられるか?

推奨: アトピー性皮膚炎の治療にステロイド外用薬は有効と考えられ、適切な使用を前提に副作用を考え含め、すすめられる。

解説: ステロイド外用薬は年齢に関係なく、プラセボより有意に効果的であることが示されている。アトピー性皮膚炎の治療に有効と考えられた効果について有意差を示せていない報告はclass VII(lowest potency)に分類される1%hydrocortisone(ロコイド、パンデル)などの弱いステロイドを対象としており、使用に対して適切なステロイドの処方が望まれる。

 外用回数に関しては、class IIに分類される0.1% halcinoideやclass III〜IVに分類される0.05% fluticasone propionateなどの強いステロイド薬では1日の外用回数が1回でも複数回でも有意差がなかったが、中程度class Vに分類される0.1% hydrocortisone butyrateでは寛解率に差を認めた。急性期には1日2回外用が勧められるが、1日1回でも効果は期待できると考えられる。

 長期投与による副作用は、適切に使用されれば全身的な副作用は少なく、安全性は高い。mometasone(フルメタ)やfluticasoneの数週間の連日塗布に続く週2回塗布数ヶ月の観察期間中に重篤な副作用はなく、皮膚萎縮もほとんどみられなかった。

【CQ2】皮疹が十分に軽快した後もステロイド外用薬を継続する場合、塗布頻度を減らす方法とランク(強さ)を下げて連用する方法のどちらがよいか?

推奨: 再燃する恐れのある中等症から重症の患者に対しては、アトピー性皮膚炎の皮疹が消失した後は、ステロイド外用薬の塗布頻度を減らして保湿剤へ移行することが好ましい治療と考えられる。

解説: この2つの治療法を比較した臨床試験の報告は存在しない。いずれの治療も、その効果が個々の患者の重症度やアドヒアランスなどに大きく左右されるため一概にどちらが優れているかを結論できない。しかしエビデンスという観点では、ステロイド外用薬を継続する場合には、ストロングクラスのステロイド外用薬であれば塗布頻度を減らして、保湿剤に移行する方法が好ましいと考えられる。

【CQ3】アトピー性皮膚炎およびその治療は眼病変のリスクを高めるか?

推奨: アトピー性皮膚炎及びその治療に伴って眼病変が生じることがあるので、重症なアトピー性皮膚炎、特に、顔面の皮疹が重症な症例では適宜眼科医の診察を受けることが望ましい。また、眼合併症の予防のために顔面、特に眼囲の皮疹を早期に十分コントロールすることが重要である。

解説: アトピー性皮膚炎の主な眼合併症として、眼瞼炎、角結膜炎、円錐角膜、白内障、緑内障、網膜剥離、細菌およびウイルス感染症等がある。重症のアトピー性皮膚炎では角膜炎や結膜炎の頻度が高い。白内障は必ずしもステロイド外用薬と関連せず、顔面の皮疹や罹患年数と関連し、眼をこすったり叩打したりする物理的刺激の両方が関与している。網膜剥離はステロイドの影響ではなく、眼への物理的な刺激と関連がある。緑内障はステロイドにより眼圧が上がることが原因となるが、アトピー性皮膚炎自体の関与も言われている。円錐角膜は重症のアトピー性皮膚炎で頻度が高く、眼への物理的刺激が大きな要因とされているが、炎症も肝油しているという考えもある。また、アトピー性皮膚炎では黄色ブドウ球菌や単純ヘルペスウイルスによる眼感染症も起きやすい。局所カルシニューリン阻害薬(プロトピック)は皮膚萎縮を来さず、経皮吸収も少なく、成人でも小児でも眼への安全性が高く、眼周囲にも安全に使用できる。

【CQ4】アトピー性皮膚炎の症状を改善するために抗菌外用薬を使用することはすすめられるか?

推奨: アトピー性皮膚炎の皮膚症状改善を目的とした抗菌外用薬の使用はすすめられない。

解説: 皮膚感染症合併症例では抗菌外用薬が治療選択肢の一つとなりうる。その一方で、抗菌外用薬を用いることによりクロルへキシジン、フラジオマイシン等は感作されやすい抗原として知られている。また、長期使用により耐性菌を生じる恐れもある。

【CQ5】アトピー性皮膚炎の治療にタクロリムス軟膏(プロトピック)はすすめられるか?

推奨: 2歳以上のアトピー性皮膚炎の症状改善を目的としてタクロリムス軟膏はすすめられる。

解説: 局所の有害事象として、灼熱感、掻痒、紅斑などが確認されている。これらは使用継続により軽減、使用中止によって速やかに消失することが多い。皮膚感染症に関しては細菌による二次感染、ウイルス感染症(単純ヘルペス、伝染性軟属腫、疣贅など)に留意する。ステロイド外用薬の長期使用による有害事象としてみられる皮膚萎縮はタクロリムス軟膏では確認されていない。以上により、適正に使用する場合、2歳以上のアトピー性皮膚炎の治療にタクロリムス軟膏はすすめられる。

【CQ6】アトピー性皮膚炎の治療にデルゴシチニブ軟膏(コレクチム軟膏)はすすめられるか?

推奨: 2歳以上のアトピー性皮膚炎患者の症状改善を目的としたデルコシチニブ軟膏はすすめられる。(現在は6ヶ月から使用可能)

解説: デルコシチニブは、ヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリー(JAK1、JAK2、JAK3、TYK2)のキナーゼをすべて阻害する薬剤である。種々のサイトカインシグナル伝達を阻害し、免疫細胞の活性化を抑制する作用を有する。
 外用薬の副作用として、毛包炎や痤瘡、カポジ水痘様発疹症、単純疱疹、接触性皮膚炎が報告されている。1回5g(1日10g)を超えた使用や、びらん面への塗布、本剤と古典的外用薬の貼付療法との併用療法や密封療法などによって、本剤の血中濃度がさらに高まる可能性があるため、いずれも行なってはいけない。血中濃度の上昇により悪性リンパ腫や固形癌の悪性腫瘍の発現が危惧されるので留意すること。

【CQ7】タクロリムス軟膏の外用は皮膚がんやリンパ腫の発症リスクを高めるか?

推奨: タクロリムス軟膏の使用は皮膚癌やリンパ腫の発症リスクを高めるとはいえない。

解説: タクロリムス軟膏使用者は非使用者と比較してT細胞性リンパ腫の発症頻度が高いとの報告がある。しかしアトピー性皮膚炎およびリンパ腫の診断の確実性に問題があること、さらには重症アトピー性皮膚炎自体がリンパ腫発症リスクを高めるとする報告があることから、タクロリムス軟膏がT細胞性リンパ腫の発症を高めるエビデンスにはならないことがFDAから指摘されている。

【CQ8】アトピー性皮膚炎の治療に抗ヒスタミン薬はすすめられるか?

推奨: 抗ヒスタミン薬は、抗炎症作用と保湿外用薬による治療との併用で掻痒を軽減する可能性があり、これらの外用療法の補助療法として提案される。使用に際しては非鎮静性第二世代抗ヒスタミン薬を選択する。

解説: アトピー性皮膚炎の掻痒発現メカニズムは多様であり、抗ヒスタミン薬の掻痒抑制効果は患者の重症度や病像などにより異なる。したがって、抗ヒスタミン薬による補助療法が必要か否かを患者ごとに判断し、開始後は掻痒に対する有効性を評価することが望まれる。

【CQ9】再燃を繰り返すアトピー性皮膚炎の湿疹病変の寛解維持にプロアクティブ療法は有用か?

推奨: プロアクティブ療法は、湿疹病変の寛解維持に有用かつ比較的安全性の高い治療法である。

解説: 13件のRCTと1件のシステマティックレビューにおいて、プロアクティブ療法は寛解維持に有用であることが示されている。安全性に関しても、多くの報告が基剤の外用に比べて有害事象の有意な差はないとしており、比較的安全性の高い治療法であると考えられる。必要塗布回数、連日投与から間欠塗布への移行期間、終了時期等については個々の症例に応じた対応が必要である。

【CQ10】アトピー性皮膚炎の治療に保湿剤外用はすすめられるか?

推奨: 皮膚炎の状態に対してはステロイド外用薬やタクロリムス軟膏と併用して保湿剤を外用することがすすめられる。また、急性期の治療によって皮膚炎が沈静化した後も、保湿剤の外用を継続することがすすめられる。

解説: 皮膚の乾燥はアトピー性皮膚炎の主症状の一つであり、表皮のバリア機能を低下させる原因の一つと考えられている。保湿剤の外用は、低下している角質水分量を上昇させ、皮膚の乾燥の症状やかゆみを軽減する。治療により皮膚炎が寛解した後にも保湿剤の外用を継続することは、皮膚炎の再燃を予防し、かゆみが軽減した状態を保つために有効である。接触性皮膚炎には注意が必要。

【CQ11】アトピー性皮膚炎の発症予防に新生児期からの保湿剤外用はすすめられるか?

推奨: 現時点においてアトピー性皮膚炎の発症予防に新生児期からの保湿剤外用は一概にはすすめられない。

解説: 新生時期からの保湿剤使用によるアトピー性皮膚炎発症予防効果に関しては相反する複数のエビデンスが示されている。対象者の背景(発症リスクの有無あるいは強弱、アドヒアランス、気候)、対照における保湿剤許容範囲、使用される保湿剤の特性・薬効、介入時間、評価時間・方法等の要因により結果が異なる可能性が考えられる。

【CQ12】アトピー性皮膚炎にシャワー浴は有用か?

推奨: アトピー性皮膚炎の症状にシャワー浴は有用である。

解説: 国内で3件の介入試験があり、いずれもアトピー性皮膚炎症状を有意に改善した。その他、シャワー浴介入開始4週間後に皮膚に定着した黄色ブドウ球菌のコロニー数の有意な現象が確認されている。有害事象はない。

【CQ13】アトピー性皮膚炎の病勢マーカーとして血清TARC値は有用か?

推奨: 小児および成人のアトピー性皮膚炎の病勢マーカーとして、血清TARC値の測定は有用と考えられる。

解説: 血清TARC値は小児および成人のアトピー性皮膚炎において、血清IgE値、末梢血好酸球数などのバイオマーカーと比べて、病勢をより鋭敏に反映する最も信頼性の高い指標であると考えられた。ただし血清TARC値は、小児では年齢が低いほど高くなるので、年齢によって基準値に違いがあることに注意する必要がある。また、血清TARC値は水疱性類天疱瘡や菌状息肉症、薬剤性過敏症候群などアトピー性皮膚炎以外の皮膚疾患でも上昇するので、注意が必要である。

*TARC(thymus and activation-regulated chemokine)は、表皮角化細胞などで産生されるケモカインの一種で、皮膚の病変部位などにTh2細胞を遊走させる働きがある。

【CQ14】アトピー性皮膚炎の病巣マーカーとして血清SCCA2は有用か?

推奨: 小児のアトピー性皮膚炎の病勢マーカーとして、血清SCCA2値の測定は有用と考えられる。

解説: SCCA(Squamous cell carcinoma antigen)は子宮頸がんで初めて同定され、いくつかの扁平上皮癌の治療選択やモニタリングに利用されてきたが、皮膚の炎症性疾患(アトピー性皮膚炎、乾癬など)において血清や組織で高発現すること、特に、アトピー性皮膚炎患者血清での上昇が著明で、その発現がIL-4やIL-13で誘導されることから、現在は皮膚のTh2型炎症であるアトピー性皮膚炎のバイオマーカーとして注目されている。
 SCCAはセルピン(serpin)スーパーファミリーに属するセリンプロテアーゼインヒビターでSSCA1とSCCA2という2種類のタンパクとして存在する。そのうち、SCCA2がSCCA1やTARCに比べて、0〜6歳の小児においてアトピー性皮膚炎と正常者をより鋭敏に鑑別できることが報告されている。TARCと同様にSCCA2も1歳以下で高値を取る傾向があるが、カットオフ値は1.6ng/mLで年齢に関係なく鑑別が可能である。
 SCCA2はいくつかの扁平上皮癌や乾癬などの他の炎症性皮膚疾患でも上昇するので、成人においては鑑別診断に用いることは適当でない。保険収載も小児(15歳以下)のみである。

【CQ15】難治性アトピー性皮膚炎の治療にシクロスポリン内服はすすめられるか?

推奨: ステロイド外用やタクロリムス外用、スキンケア、悪化因子対策を十分に行なった上で、コントロールが困難なアトピー性皮膚炎にはシクロスポリン内服を行っても良い。

解説: 成人に対しては上記の通りだが、小児においては、有効性は検証されているものの長期の安全性については十分な検証がなされておらず、現在国内ではアトピー性皮膚炎に対して使用が認められていない。

【CQ16】難治性のアトピー性皮膚炎も治療に光線療法はすすめられるか?

推奨: 外用やスキンケア、悪化因子対策で軽快しない例や、従来の治療で副作用を生じている中等症から重症のアトピー性皮膚炎には、光線療法を行なっても良い。

解説: 紫外線には皮膚の免疫に関係する細胞の働きを抑制する作用があり、アトピー性皮膚炎の皮疹を軽快させる効果が期待できる。紫外線療法としては波長340〜300nmのUVA1と波長311nmをピークとするナローバンドUVBの有用性が数多く報告されている。紫外線療法では皮膚発がんが懸念され、長期にわたるPUVA(psoraren ultra violet A)療法はそのリスクを上昇させるが、ナローバンドUVB療法ではそのリスクは有意には上昇させないとの報告もある。しかし、ナローバンドUVB療法も、小児に対する長期治療の安全性に関する情報は不十分である。免疫抑制薬との併用や皮膚がんの既往あるいはハイリスク因子、光線過敏症がある患者には避けた方が良い。

【CQ17】難治性のアトピー性皮膚炎の治療にデュピルマブ(デュピクセント)皮下注はすすめられるか?

推奨: 外用療法で寛解導入や寛解維持が困難な中等症から重症のアトピー性皮膚炎の寛解導入および寛解維持療法としてデュピルマブ皮下注はすすめられる。

解説: デュピルマブは、湿疹といったアレルギー性疾患の治療のために設計されたヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体である。副作用にはアレルギー反応、口唇ヘルペス、角膜の炎症がある。小児でも6ヶ月以上に適応がある。

【CQ18】難治性のアトピー性皮膚炎の治療にバリシチニブ(オルミエント)内服はすすめられるか?

推奨: 外用療法で寛解導入や寛解維持が困難な中等症から重症のアトピー性皮膚炎に対して、バリシチニブ内服を行っても良い。

解説: バリシチニブ は、経口のヤヌスキナーゼ 阻害薬である。投与に際しては、特にカポジ水痘様発疹症を含む単純ヘルペスウイルス感染症、蜂窩織炎、肺炎などに注意する。

【CQ19】アトピー性皮膚炎の治療に漢方療法は有用か?

推奨: ステロイドやタクロリムスなどの抗炎症外用薬や抗ヒスタミン薬内服、スキンケア、悪化因子対策を十分に行なった上で、効果が得られないアトピー性皮膚炎の患者に対して、漢方療法を併用することを考慮しても良い。

解説: 本邦で効果が検討されているものには黄連解毒湯、温清飲、白虎加人参湯、小柴胡湯、十味敗毒湯などがあるが、エビデンスレベルは低い。甘草を含み方剤による偽アルドステロン症や、補中益気湯による間質性肺炎、肝機能障害、黄疸が報告されている。

【CQ20】アトピー性皮膚炎の治療に環境中のダニ抗原除去はすすめられるか?

推奨: 問診や血液検査などからダニ抗原が皮疹の悪化に関与していることが疑われる患者に対して、居住環境中のダニ抗原を減らす対策を行うことを考慮しても良い。

解説: ダニ抗原対策によってアトピー性皮膚炎の皮疹の改善が得られる患者の特徴は明らかでなく、臨床症状のみ、あるいは血液検査の結果のみで判断してはならない。環境の変化によって皮疹が悪化するあるいは軽快する場合には、換気や寝室や居間の掃除の励行(3日に1回以上)や天日干し、シーツの選択などのダニ対策を行なって皮疹が軽快するかを観察するのも一つの方法と考える。

【CQ21】乳児アトピー性皮膚炎の治療にアレルゲン除去食は有用か?

推奨: 特定食物によるアトピー性皮膚炎の悪化が確認されている場合を除き、一般的にアレルゲンになりやすという理由で特定食物を除去することは推奨されない。

解説: エビデンスレベルの高い研究はない。一方、厳格な食物制限は体重減少や栄養障害など健康への悪影響を引き起こす危険性が高い。アトピー性皮膚炎に食物アレルゲンが関与する場合もあるが、食物除去を行うためにはアトピー性皮膚炎に対して抗炎症外用薬による治療を十分に行なった上でアレルゲン除去試験を行うべきである、アレルゲンになりやすいというだけで摂取する食物を制限することはアトピー性皮膚炎の治療のために有効でないと考えられる。

【CQ22】妊娠中・授乳中の食事制限は児のアトピー性皮膚炎発症予防に有用か?

推奨: 妊娠中・授乳中における母の食事制限は、児のアトピー性皮膚炎の発症予防に有用でない。

解説: 母親が摂取した食物は、胎盤や母乳を通して児の免疫系に影響を与えることが考えられるが、アレルギー疾患発症との関係は明らかになっていない。妊娠中の食事制限が胎児の発育を妨げる可能性もあり、妊娠中の食事制限はアトピー性皮膚炎の発症予防には有用ではなく、推奨しない。

 授乳中の食事制限も、発症予防には有用でないと報告された。
 妊娠中に特定の食物の過剰摂取は食物アレルギーの発症を促進する可能性はあるが、現時点では妊娠中・授乳中の食事制限は、積極的に推奨するだけの医学的根拠はなく、有用でないと結論づけられる。

【CQ23】アトピー性皮膚炎の症状改善にプロバイオティクスやプレバイオティクスを投与することは有用か?

推奨: 現時点でアトピー性皮膚炎の症状改善にプロバイオティクスやプレバイオティクス、両方を組み合わせたシンバイオティクスは推奨しない。

解説: プロバイオティクス、プレバイオティクス、およびシンバイオティクスいずれも効果があるというエビデンスはない。

【CQ24】アトピー性皮膚炎の発症予防にプロバイオティクスやプレバイオティクスを投与することは有用か?

推奨: 発症予防でのプロバイオティクスおよびプレバイオティクスの投与は推奨しない。

解説: 多くのシステマティックレビューでは、妊娠中の母親と出生後の乳児にプロバイオティクスを投与することに、乳幼児のアトピー性皮膚炎を予防する効果があると結論づけている。一方で、出生後の乳児のみへの投与、乳酸菌の一菌種のみの投与については効果なしとしている文献もある。

 プレバイオティクス単独については、予防効果ありとする複数のRCTが存在する。系統的レビューでは効果なしと結論づけている。
 プロバイオティクスには発症予防の効果が期待できるものの、対象、時期、菌種などの具体的な方法についてはさらなる検討が必要であり、現時点では診療現場で妊婦や乳児に推奨することは時期尚早と考える。

【CQ25】アトピー性皮膚炎は年齢とともに寛解することが期待できるか?

推奨: アトピー性皮膚炎は年齢とともにある程度の割合で寛解することが期待できる。ただし、寛解率は症状の程度などによって異なる。

解説: 一般に寛解率が高くなる因子として、軽症なこと、発症年齢が高いこと、食物アレルギーがないことなどが挙げられる。

【CQ26】妊娠・授乳中の抗ヒスタミン薬内服は安全か?

推奨: 妊娠中の抗ヒスタミン薬投与は多くの疫学的研究とそのメタ解析により先天異常が増加しないと報告されているが、エビデンスとしてはまだ十分ではない。治療上の有益性が大きい場合には、バックグラウンドの奇形発生率(2〜3%)と比較したリスク等を示してインフォームドコンセントを行なった上で、安全と報告されている薬剤の投与を行なっても良い。母乳中に移行する薬物量は非常にわずかであるが、授乳中ではほとんどの薬剤で授乳を避けることの記載があり、注意を要する。いずれも、ここの薬剤については、添付文書や安全性に関する最新の情報に基づき対応することが大切である。

解説: 妊娠中のの抗ヒスタミン薬投与はほぼ安全と考えられるが、エビデンスが十分でないので、治療上必要とされる場合(強い掻痒感が母親のQOLを阻害して、生活に支障を来すなど)、安全とされている薬剤の投与を行なっても良い。

【CQ27】妊娠・授乳中のステロイド外用は安全か?

推奨: 妊娠中、授乳中ともにステロイド外用薬は通常の使用であれば安全であり、胎児/乳児への影響を心配することなく使用してよい。ただし、強いランクのステロイド外用薬を大量・長期使用することは出生時体重を低下させる可能性があるので、避けるべきである。

解説: 授乳中のステロイド外用薬使用は、全身への吸収が少ないという理論的根拠から安全と考えられる。ただし、乳房への外用は、授乳直前は避け、授乳直前に清拭するなどの指導をする。

【CQ28】石鹸・洗浄剤の使用はアトピー性皮膚炎の管理に有用か?

推奨: 石鹸・洗浄剤の使用は、皮膚の状態、使用する石鹸・洗浄剤の種類、洗浄方法を考慮すれば、アトピー性皮膚炎の管理に有用であると考えられる。

解説: 乾燥が強い症例や部位、季節、あるいは石鹸・洗浄剤による刺激が強い場合には石鹸の使用を最小限とし、熱すぎない湯(38〜40℃)に十分にすすぎを行う。石鹸はなるべく脱脂力が制御されているものを選択する。脂性肌や脂漏部位、軟膏を毎日塗る部位、皮膚感染症を繰り返す部位には悪化因子回避の目的で石鹸・洗浄剤の積極的な使用を検討してよい。適切な洗浄剤を選択し、よく泡だて機械的刺激の少ない方法で皮膚の汚れを落とし、洗浄剤が皮膚に残存しないように十分にすすぐ事も大切である。

【CQ29】乳児の湿疹に沐浴剤は有用か?

推奨: 沐浴剤の使用により明らかに皮疹を改善するというエビデンスは無い。保湿効果があるものもあるため、接触性皮膚炎を起こさなければ悪影響を及ぼすことも少ない。

解説: 入浴剤の効果を示すものはあるものの、沐浴剤をそれだけで洗浄と保湿を行い洗い流さないものと定義すると、沐浴剤の使用が湿疹を改善させると示したものは存在しなかった。洗い流さないことで接触性皮膚炎を起こす可能性もあることから、湿疹がある児には推奨されない。

【CQ30】アトピー性皮膚炎の治療にポンピドンヨード液(イソジン液)の使用は有用か?

推奨: ポンピドンヨード液の仕様は積極的に推奨するだけの医学的根拠はない。ステロイド外用などの基本治療では治療が困難で、その原因に感染が関与していると考えられる症例に対する補助療法として考慮することもあるが、安全性が懸念されるので安易に行うべきではない。

解説: アトピー性皮膚炎患者の病変では、健常者の皮膚に比較して黄色ブドウ球菌が高頻度に分離されることが知られており、古くからその増悪因子と考えられてきた。しかし、RCTはなく、その有用性は経験的なものに留まる。副作用として、びらん面に対する刺激による皮膚炎の悪化、アレルギー性接触皮膚炎、アナフィラキシー、甲状腺機能への影響などの可能性がある。

【CQ31】アトピー性皮膚炎の治療にブリーチバス療法はすすめられるか?

推奨: ブリーチバス療法は、現時点ではすすめられない(国内で人に使用する製品がなく、ブリーチバス療法の臨床効果がけんとうされていないため)。

解説: 欧米では古くから次亜塩素酸が消毒薬として使用されており、近年、黄色ブドウ球菌の増殖を制御し皮膚細菌叢の多様性を保つ治療として、0.005%程度に次亜塩素酸を希釈した風呂に週2回ほど入浴するブリーチ療法の有効性が報告された。2014年にAmerican Academy of Dermatologyは中等症〜重症のアトピー性皮膚炎で、感染の関与が考えられる症例に対して、治療選択肢としてブリーチバス療法を推奨すると発表し、2018年にはThe European Task Force on Atopic Dermatitisは、次亜塩素酸などの消毒液を希釈した風呂への入浴はアトピー性皮膚炎の治療に有効な可能性があるとしている。

【CQ32】日焼け止めはアトピー性皮膚炎の悪化予防にすすめられるか?

推奨: 過度の太陽光への暴露はアトピー性皮膚炎の皮疹の悪化因子の一つになるので、紫外線の強い季節・時間帯など長期間外出する際は、紫外線吸収剤を含まないサンスクリーン製品を使用することを考慮する。

解説: 紫外線には皮膚の免疫に関係する細胞の働きを抑制する作用がある。一方で、赤外線によって皮膚表面温度が上昇し発汗することで湿疹病変の紅斑やかゆみが増強する可能性や、紫外線により皮膚バリア機能が低下する可能性を考えると、過度の太陽光への暴露はアトピー性皮膚炎の悪化因子の一つと考えられる。アトピー性皮膚炎は、いわゆる光線過敏症ではないので、厳重な遮光は必要ない。

【CQ33】ペットの飼育、動物との接触を回避する指導はアトピー性皮膚炎の発症予防や症状改善に有用か?

推奨: 発症予防を目的として、妊婦と小児に対してペット/動物との接触を回避する指導は有用とはいえない。ペット/動物に感作し、接触によって増悪することが明らかな症例に対しては接触を回避する指導は有用である。

解説: 飼育歴の有無にかかわらずネコ抗原に感作されている症例も多く、特異的IgE検査結果でネコとの接触が増悪因子として判明する症例は少なくない。ただし、ペットはヒトの精神的な支えになりうることから、患者個々のペットとの関わりの強さに応じて指導の是非を考える必要がある。

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