【家族性地中海熱とは】
家族性地中海熱は遺伝性の疾患で炎症経路の一つであるインフラマソームの働きを抑えるバイリンという物質の異常により起こる自己炎症性疾患です。
現在までに本邦では300人程度報告されています。
【原因】
MEFV遺伝子が原因となっていますが、その発症機序は明らかにされていません。
また、遺伝子に異常があっても症状の出ない方もいれば、この遺伝子の異常を認めないヒトも少なくありません。
【症状】
典型例では約4週間毎に突然の高熱が出現して半日から3日持続します。
発熱以外には腹痛(腹膜炎)や胸背部痛(胸膜炎)を訴えます。胸痛により呼吸が浅くなることもあります。
非典型的な症例では発熱期間が1〜2週間持続し、関節炎や丹毒様皮疹を伴うことがあります。
【検査所見】
発熱時には炎症反応であるCRPと血清アミロイドAの著明な上昇を認めますが、症状のない時期には陰性化します。
【診断基準】
1、臨床所見
- 必須項目:12時間〜72時間持続する38℃以上の発熱を3回以上繰り返す。発熱時にはCRPや血清アミロイドA(SAA)などの炎症検査所見の著明な上昇を認める。発作間歇期にはこれらが消失する。
- 補助項目
ⅰ)発熱時の随伴症状として、以下のいずれかを認める。
a.非限局性に腹膜炎による腹痛
b.胸膜炎による胸背部痛
c.関節炎
d.心膜炎
e.精巣漿膜炎
f.髄膜炎による頭痛ⅱ)コルヒチンの予防内服によって発作が消失あるいは軽減する。
2、遺伝子解析
- 臨床所見で必須項目と補助項目のいずれか1項目以上を認める場合に、臨床的にFMF典型例と診断する。
- 繰り返す発熱のみ、あるいは補助項目のいずれか1項目以上有するなど、非典型的症状を示す症例については、MEFV遺伝子の解析を行い、以下の場合にFMF非典型レト診断する。
a)EXON10の変異を認めた場合にはFMFと診断する。
b)Exon10以外の変異を認め、コルヒチンの診断的投与で反応があった場合にはFMF非典型例とする。
c)変異がないがコルヒチンの診断的投与で反応があった場合には、FMF非典型例とする。
【治療】
現時点では根本的な治療はありません。ステロイドは無効であることがわかっています。
約90%の確率でコルヒチン(最大容量0.04mg/kg/day,上限2.0mg/day)が有効です。
コルヒチンが無効な場合は生物学的製剤(カナキヌマブ、インフルキシマブ、エタネルセプト)やサリドマイドを使用することもあります。