【閉塞性睡眠時無呼吸症候群とは】
睡眠中に上気道の部分的または完全閉塞が長時間続く呼吸障害であり、その結果、酸素飽和度の低下や抗炭酸ガス血症をきたす疾患です。
成人では睡眠時無呼吸症候群があると日中に居眠りをしたり、交通事故や産業事故を起こしやすくなります。小児の場合にはこのような社会的影響は少ないですが、身体発育や性格への影響、学業成績への影響が知られています。
【原因】
成人の場合は肥満が多いですが、小児の場合はこの閉塞性が多いです。
アデノイド肥大や扁桃肥大が原因になることが多いです。
【症状】
睡眠中にはいびき、肩呼吸、努力性・陥没呼吸がみられます。日中は傾眠傾向(食事中でも眠る、抱っこをすると眠ってしまうなど)があったり、仰向けでは眠りにくいので寝返りが多くなります。
その他には、睡眠の中断・覚醒、夜尿、寝起きが悪い、体重増加不良、日中落ち着きがない、あるいは過活動傾向、日中、睡眠中、口を開けて呼吸をする(口呼吸)などがあります。
注意欠如・多動症、過眠、うつ病、攻撃性、社会的行動異常なども問題も起こしうることが知られています。
【頻度】
有病率は2〜4%でそのピークは2〜8歳、男女差はありません。
肥満、解剖学的因子(アデノイド肥大、扁桃肥大、下顎後退症・小顎症、舌の大きさ)、上気道の易虚脱性(筋緊張低下、上気道炎など)が挙げられます。
【所見】
口を開いていることが多く、鼻唇溝が浅くなり、ボーッとした顔つきになりやすいです。これをアデノイド顔貌と呼びます。
咽頭の所見ではアデノイド(小児科では見にくいです)や扁桃腺の肥大が確認されます。長期に渡ると漏斗胸や鳩胸などの胸郭の変形が見られることもあります。
【検査】
アデノイドや扁桃肥大の確認のために上咽頭のレントゲンを撮ります。必要があればCTやMRIを撮影することもあります。
アメリカ小児科学会では診断するためには夜間ポリソムノグラフィー(PSG)が必須になっています。これは入院をして睡眠中に起こる生理学的変化を総合的に記録する検査です。眼球運動、筋電図、心電図、などを測定します。また、睡眠中に酸素濃度が低下しないかをSpO2(経皮的酸素濃度測定)を測定します。成人では無呼吸は10秒以上ですが、小児では2呼吸分の呼吸停止があれば無呼吸と判定します。
【治療】
無呼吸があるだけでは治療の対象となりません。無呼吸が患児に対して悪影響を与えている場合のみ治療の対象となります。
原因がアデノイド肥大や口蓋扁桃肥大であればそれらの切除術が適応となります。
その他の治療としては状況によりnasal CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸法)、在宅酸素療法、気管切開なども考慮されることがあります。
【予後】
適切な治療が施されないと上記症状が改善されないばかりか、心拍数の増大、交感神経欠陥反応性の増大、脳血流の減少などの自律神経失調症を呈したり、左右の心室肥大や血圧の上昇などの新血管系にも影響を及ぼす可能性があります。
原因となるものを取り除くことができれば予後は極めて良いと思われます。