【多形紅斑とは】
再発性のある一過性、反応性の標的状または虹彩状の皮膚病変を特徴とする炎症性の反応です。自然に軽快しますがしばしば再発します。以前はスティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死融解症(TEN)などの重症な皮膚疾患を含めた一連の過敏症の軽症型と考えられていましたが、最近では全く異なる疾患だと考えられています。
【病因】
感染と薬剤が原因となります。小児における再発性の多形紅斑は再発性の単純ヘルペスウイルス(HSV-1>HSV2)感染によるものが多いとされています。現在の仮説では、角化細胞に存在するHSVの断片に対するT細胞性の細胞融解反応によって起こるとされています。難しくてごめんなさい。
HSV以外の感染ではマイコプラズマ、C型肝炎が有名です。感染以外では薬剤、ワクチンでも生じます。SLE(全身性紅斑性狼瘡)でも生じることがあり、Rowell症候群と呼ばれことがあります。
【症状】
四肢の遠位部、ときに手掌、足底および顔面に無症状の紅斑、膨疹、小水疱、またはこれらの組み合わせとして突然発症します。古典的な病変は環状で中心部が紫色調で、その外側に淡い輪状の部分があり、その周囲をピンク色の紅暈が取り囲んでいます。(標的状または虹彩状病変)
【診断】
臨床的に診断します。
【鑑別診断】
- 蕁麻疹
通常24時間以内に消退する紅色または白色の膨疹です。多くの場合痒みを伴います。多形紅斑のように標的病変にはなりません。「多形蕁麻疹」は時に多形紅斑と間違えられることがあります。 - スティーブンスジョンソン症候群
皮疹が現れる14日前までに前駆症状(発熱、咽頭痛、倦怠感など)があります。全身症状を伴い、標的病変は少数もしくは非典型的です。
2カ所以上に粘膜病変(口腔内、眼球結膜、眼瞼結膜、肛門部など)を認め、紅斑が水疱、びらんに進展します。重症型の中毒性表皮壊死融解症(TEN)では薬剤により誘発される場合が多いです。 - 血清病または血清病様病変
発熱、関節痛または関節炎様の兆候を伴い、関節周囲の腫脹が見られることもあります。小児では痛みで歩けなくなることもあります。湿疹は大型で紫色の蕁麻疹様になり標的病変や水疱形成は見られません。 - その他
そのほかには血管炎、水疱性類天疱瘡、天疱瘡などがあります。口腔病変ではアフタ性口内炎、手足口病、ヘルペス性口内炎があげられます。
【治療】
自然に消えていくので原則治療は必要ありません。かゆみがあれば抗ヒスタミン剤の投与を行いますが、経口ステロイドの投与は重症でなければ推奨されていません。局所に対するステロイドの塗布は症状を軽減する可能性があります。
再発性のものであり、症状が年5回以上生じ、症状出現の前に必ずヘルペスが出現したりするなどHSVの関連性が疑われる時には抗ヘルペス剤による治療を試みても良いでしょう。
【予後】
湿疹は一過性で自然に消えていきますが、色素沈着を残すこともあります。再発性のものに関しては上記の通りです。