概念
胎生期に始まる内軟骨骨化障害により、四肢長菅骨・短菅骨の成長が障害される遺伝性疾患です。
四肢短縮型の小人症の代表です。
本疾患にはガイドラインがあります。
原因
97%以上の症例でfibroblast growth factor receptor 3 (FGFR3)遺伝子の異常を認めます。
常染色体顕性(優勢)遺伝形式をとりますが、ほとんどの場合(約80%)、新たに生じる突然変異によるものです。
ホモ接合体(父型、母型の量遺伝子に異常がある)の場合は重症となり、新生児期に亡くなります。
FGFR3は恒常的に活性化された状態にあり、異常が生じると軟骨細胞の分化、軟骨基質の賛成および増殖が抑制されます。
そのため、骨が形成される内軟骨性国家が障害されるため、長管骨の身長が不良となり、四肢短縮性低身長になります。
頻度
出生10,000〜30,000に1人と言われています。
症状
身長
生まれた時はそれほど小さくありませんが、成長とともに目立つ様になります。
思春期の成長のスパートがみられず、成人身長は男性130cm程度、女性124cm程度です。
モニタリング、発達、QOL
下記の大後頭孔狭窄により脊髄圧迫による突然死が5〜10%にあるのでモニタリングが必要です。
身長、体重、頭囲、発達を参考にします。
粗大運動はしばしば遅れますが、微細運動は通常送れません。
言語発達はさまざまです。
多くの場合、知的発達は正常です。
大後頭孔狭窄
睡眠時無呼吸、呼吸障害、脊髄症、水頭症、突然死などが見られます。
脳室拡大
真の水頭症ではなく交通性の脳室拡大がほとんどです。
症状としては易刺激性、大泉門膨隆、頭痛、うっ血乳頭、外転神経麻痺、片麻痺、意識障害、血圧上昇、徐脈などがあります。
特に1歳ごろまでは要注意です。
脊柱管狭窄症
年長時でよく見られます。
症状としては四肢のしびれ、筋力低下、運動障害、間欠性破行、膀胱直腸障害などを認めることがあります。
脊椎後弯
小児期、思春期に進行して、成人の15〜30%に不可逆的な後弯変形が認められます。
閉塞性睡眠時無呼吸、呼吸症状
胸郭低形成、上記道閉塞、頸髄延髄移行部圧迫などにより呼吸器症状がしばしば見られます。
中耳炎、難聴、歯科
患児のほぼ90%で中耳炎を経験し、25%で慢性再発性中耳炎を認めます。
再発性中耳炎は伝音性難聴の原因となるため、早期の聴力検査が推奨されています。
歯の歯列不整が問題となることもあります。
四肢合併症
股関節の伸展障害は腰椎仙椎前弯、腰背部痛の原因となります。
学童以上の小児では内反膝がよく見られます。
肥満
本章では肥満の合併がおおく、心血管関連師が多いとの報告もあります。
本症特異的成長曲線を用いて、体重を管理することが重要です。
診断基準
軟骨無形成症の診断基準
症状
- 近位肢節により近い四肢短縮型の著しい低身長(-3SD以下の低身長、指極/身長<0.96の四肢短縮)
- 特徴的な顔貌(頭蓋が相対的に大きい、前額部の突出、鼻根部の陥凹
- 三尖手(手指を広げた時に中指と環指の間が広がる指)
検査所見(単純X線検査)
- 四肢(正面):管状骨は太く短い、長管骨の骨幹端は幅が短く広く防いで盃状変形(カッピング)、大腿骨頸部の短縮、大腿骨近位部の帯状透亮状、大腿骨遠位骨端は特徴的な逆V字型、腓骨が脛骨より長い(腓骨長/脛骨長>1.1、骨化が進行していないために乳幼児では判定困難)。
- 脊椎(正面、側面):腰椎椎弓間距離の狭小化(椎弓間距離L4/L1<1.0)(乳児期には目立たない)、腰椎椎体後方の陥凹。
- 骨盤(正面):坐骨切痕の狭小化、腸骨翼は低形成で方形あるいは円形、臼蓋は水平、小骨盤腔はシャンパングラス様
- 頭部(正面、側面):頭蓋底の短縮、顔面骨低形成
- 手(正面):三尖手、管状骨は太く短い。
鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。
骨系統疾患(軟骨低形成症、変容性骨異形成症、犠牲軟骨無形成症など。臨床症状、X線所見で鑑別し、鑑別困難な場合、遺伝子診断をおこなう。)
遺伝学的検査
線維芽細胞増殖因子受容体3型(FGFR3)遺伝子のG380Rの変異を認める。
- <診断のカテゴリー>
- Definite:Aのうち3項目+Bのうち5項目全てを満たしCの鑑別すべき疾患を除外しもの。または、Probable、PossibleのうちDを満たしたもの。
- Probable:Aのうち2項目以上+、Bのうち3項目以上を満たしCの鑑別すべき疾患を除外したもの。
- Possible:Aのうち2項目以上+Bのうち2項目以上をみたしCの鑑別すべき疾患を除外したもの。
治療
成長ホルモン
全ての患児が適応になるわけではありませんが、成長ホルモンの治療の対象となります。
四肢延長術
低身長、四肢短縮の改善のために実施されることが多いです。