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診療案内 急性散在性脳脊髄膜炎(Acute Disseminated encephalomyelitis; ADEM)

【ADEMとは】

急性に発症し多彩な神経症状を呈する自己免疫性炎症性脱髄疾患です。多くはウイルス感染などの先行感染後に発症します。
ワクチン接種後でも起こりうるとされています。以前、日本脳炎ワクチン後に発症があったとして接種が控えられたことがありましたが、その原因がワクチンだったかどうかは不明です。
麻疹、風疹、インフルエンザ、EBウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型(突発性発疹の原因)などのウイルスや、マイコプラズマ、溶連菌、カンピロバクターなどの細菌感染でも生じます。

 

【原因】

先行感染の病原体が脳の髄鞘構成蛋白(特にミエリン)に抗原として類似している場合に、間違って自分の脳に攻撃し発症するとされています。
顕微鏡で脳を見ると脱髄所見というものが見られます。

 

【頻度】

好発年齢は5〜8歳ですが、どの年齢でも起こりえます。小児では年間10万人あたり0.4〜0.68人程度の発症頻度です。

 

【定義】

少し難しいですがこのようになっています。
以下の条件をすべて満たすものとする。
・炎症性脱髄が原因と推定される。はじめての多巣性の、臨床的な中枢神経系の事象。
・発熱により説明できない脳症。
・発症から3ヶ月以上経って新たに出現する臨床的およびMRI所見がない。
・急性期(3ヶ月)の間に、頭部MRIの異常がある。
・頭部MRIでは典型的に;
▷主に大脳白質を含む、びまん性、境界不鮮明で、大きな(1〜2cm)病変
▷白質のT1低信号病変はまれである
▷深部白質病変(例;刺傷または基底核)は存在しうる

 

【症状】

先行感染から数日から1ヶ月程度ののちに発症することが多く、症状は多彩であることが特徴で、精神症状を含め、
あらゆる神経徴候の可能性があります。
意識障害も軽いものから強いものまで存在します。発熱、頭痛、嘔吐、意識障害、痙攣などの症症状に加え、麻痺、視力低下、
失語、精神症状などを認めることがあります。
症状の経過は急性で1〜数日の経過でピークを認め、通常は単相性(軽快増悪を繰り返さない)で、
軽症の場合は無治療でも数週で自然軽快します。

 

【検査・診断】

血液検査で軽度の炎症所見(白血球増加、CRP上昇など)
髄液検査で細胞数の軽度増加、蛋白の上昇、頻度は少ないですがオリゴクロナールバンドが検出されることがあり、
MBP(ミエリンベイシックプロテイン)が上昇します。
診断のためにもMRIは必須です。多発性の境界不鮮明な斑状の病変が見られます。

【治療】
軽症であれば無治療で、中等症以上ではステロイドのパルス療法やγ-グロブリン大量療法や血漿交換療法も選択されます。

【予後】
おおむね良好ですが後遺症として運動障害、視覚障害、認知障害を認めることもあります。

【類縁疾患・鑑別疾患】
鑑別として最も重要なものは多発性硬化症(Multiple sclerosis; MS)です。
以下に鑑別ポイントを記載しますが、ADEMでも多巣性のことがあり鑑別は用意ではありません。

 

ADEM MS
経過 原則として単相性 多相性
先行感染 大半で存在 まれ
年齢 10歳以下が中心 若年成人
性別 やや男性が多い 女性が多い
視神経炎 両側が多い 変速が多い
症状 多様性あり 単症状が多い
けいれん 多い まれ
髄膜刺激症 多い まれ
MRI所見 灰白質 あり まれ
脳室周囲 まれ あり
脳梁 まれ あり
炎症所見 多い 少ない
髄液オリゴクロナールバンド陽性率 低い 高い

 

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