【神経細胞】
脳を構成する細胞には、神経細胞(ニューロン)とグリア細胞があります。
グリア細胞はニューロンを助ける重要な役割をしているだけでなく、その他にも役割があることがわかってきています。
脳は神経細胞がネットワークを形成しています。
神経細胞は細胞体、樹状突起、軸索(神経線維)と呼ばれる部分からなっており、樹状突起は他の神経細胞からの信号を受ける役割をしています。
樹状突起で受け取った信号は軸索の中を伝わっていき、軸索終末と呼ばれる末端にたどり着き、さらに他の神経細胞の樹状突起へ信号を伝えています。
基本的には1つのシナプスは1種類の神経伝達物質しか使用していません。
【グリア細胞】
グリア細胞(ぐりあさいぼう、glial cell)とは、中枢神経系を構成するニューロン(神経細胞)以外の細胞のことです。
神経膠細胞とも呼ばれます。
哺乳類では、神経細胞の数倍から数十倍の数のグリア細胞が存在しています。
主なグリア細胞はアストロサイト、オリゴデンドロサイトおよびミクログリアの三種に分類されます。
神経細胞の働きを助ける役割を担っており、脳の老化や記憶、学習などにも関わっていると考えられています。
【シナプス】
神経細胞同士のつなぎ目周辺部分をシナプスと呼びます。
そのシナプスにある隙間はシナプス間隙と言います。このシナプス間隙で情報を伝えているのです。
【神経伝達物質】
神経伝達物質に100種類以上あると推測されていて、それぞれ役割が異なっています。
その中には信号を伝える興奮性のものだけでなく、信号を弱める働きをしている神経伝達物質もあります。
興奮性、抑制性神経伝達物質の両者によって脳内の情報伝達がコントロールされているのです。
【おもな神経伝達物質】
上述のように神経伝達物質は100種類以上あると推測されていますが、その働きが明らかなものはまだ多くはありません。
興奮性・抑制性という分類のほか、その構造からアミノ酸、モノアミン、ペプチド(神経ペプチド)などにも分類することができます。
アミノ酸
グルタミン酸 :最も代表的な興奮性伝達物質
γ-アミノ酪酸(GABA):代表的な抑制性の伝達物質(グルタミン酸がGAD(グルタミン酸脱炭酸酵素)により分解されて作られるもの)
グリシン :抑制性の伝達物質
モノアミン
アセチルコリン:最初に発見された神経伝達物質、興奮性、記憶などにも関係
【カテコールアミン系】
ドーパミン :興奮性の伝達物質、快感、やる気に関係
ノルアドレナリン :興奮性の伝達物質、怒り、やる気に関係
アドレナリン :興奮性の伝達物質、恐怖、やる気に関係
【インドール系】
セロトニン :精神を安定させるなど調整役の神経伝達物質
メラトニン :睡眠などの生体リズムに関係
神経ペプチド(アミノ酸が2つ以上つながった物質)
【麻薬様物質】脳内麻薬と呼ばれています。
エンドルフィン :痛みを和らげ幸福感をもたらす
エンケファリン :痛みを和らげ幸福感をもたらす
覚醒剤は、その成分が神経伝達物質のドーパミンに似ているために、異常な快楽を感じるようになるのです。
【主な神経物質の役割】
セロトニン
セロトニンは必須アミノ酸(生体内で合成することができないアミノ酸)であるトリプトファンから作られます。
脳内の幸せホルモンとも呼ばれています。
実はセロトニンの90%は消化管に、8%は血小板に存在します。実は脳内には2%しか存在しません。
消化管のセロトニンは消化管の運動を調節し、血小板では止血作用、血小板収縮作用があります。
脳内のセロトニンはノルアドレナリン、ドーパミンの活動を調節し、不安感をなくし世親を安定させます。
また、睡眠、覚醒、食欲、性欲にも関与します。
そのため脳内のセロトニンが不足するとうつ病、不安障害、睡眠障害を生じます。
逆にセロトニンが過剰になるとセロトニン過剰症候群といい、不安、幻覚、興奮頭痛、吐き気、イライラなどを生じます。
朝日を浴びると、睡眠中は休止状態にあったセロトニン神経系が活動し始め、セロトニンを分泌するようになります。
同時にノルアドレナリンも分泌され、脳が覚醒し活動を開始します。
メラトニン
メラトニンはセロトニンから合成されますが、セロトニンもメラトニンも睡眠に重要な神経伝達物質です。
太陽の光を浴びセロトニンが分泌され交感神経を刺激します。
セロトニンの量が増えれば、メラトニンの量も増え良い睡眠を得ることができます。
最近は覚醒するためにはオレキシンという物質も覚醒に重要であることがわかっています。
メラトニンは脳の興奮を鎮め、体温を下げ睡眠を誘発します。
メラトニンは体内の活性酸素を取り除く抗酸化作用や細胞のガン化を防ぐ抗がん作用もあります。
朝日を浴びるとメラトニンの分泌は停止します。
ドーパミン
ドーパミンは快楽物質と呼ばれています。
楽しい時にワクワクするのはドーパミンの分泌後亢進しているからです。
ドーパミンの神経系系は黒質(A9神経)と腹側被蓋野(A10神経)から伸びています。
黒質では運動機能を、腹側被蓋野では快楽、意欲、動機付けに関わっています。
ドーパミンが不足すると無気力、うつ病にも関係し、パーキンソン病にもなります。
逆に過剰になると興奮状態になったり、攻撃的になることもあります。
また、覚醒剤はドーパミンに構造が似ているために、ドーパミンと同じような作用を脳に与えるため快感をもたらします。
また、依存症、厳格、妄想、統合失調症にもなりえます。
ドーパミン神経系は、欲求を感じたときと、その欲求が満たされたときに活性化されます。
腹側被蓋野から伸びるドーパミン神経系は報酬系とも呼ばれます。
ドーパミンが放出されると脳が快楽を覚え、その欲求を記憶します。
そのため、その行為をしたくなるのです。
その欲求が勉強や仕事などであればプラスに働きますが、ギャンブルや酒、タバコなどではマイナスになってしまします。
また、ADHD(注意欠如多動症)ではこの報酬系の障害もあります。
覚醒剤(アンフェタミン、メタアンフェタミンなど)はドーパミンを構造が似ているために、脳内のドーパミンの過剰状態になってしまうため、依存症になってしまうのです。
コカインやアヘン、LSDなどの薬物も、ドーパミンやノルアドレナリン、セロトニンの農道を上げる作用があります。
パーキンソン病では黒質という部分が変性し、ドーパミンの濃度が下がります。
ドーパミンはもともと線条体に豊富なアセチルコリンを抑制する作用があるために、パーキンソン病ではアセチルコリン過剰状態になってしまい、運動き脳などの障害を生じます。
ノルアドレナリン
ノルアドレナリンは興奮性の神経伝達物質です。
脳では脳幹にある青班核(A6繊維)などから神経系を伸ばして放出して、神経伝達物質として働いています。
交感神経でも伝達物質として標的器官へ作用します。
また、副腎皮質ではホルモンとして分泌されています。
主な働きは「戦うか逃げるか」という緊急事態の際に短期間のうちに身体と脳を恐怖と不安など外からのストレスに対応させます。
恐怖の時を考えればわかりますが、心臓の鼓動が早くなり、血圧が上昇、瞳孔が拡大、鳥肌が立ったりします。
痛みもあまり感じなくなります。
ノルアドレナリンが過剰になるとパニック発作などを起こしてしまいます。
欠乏するとうつ状態や、不安障害、自律神経失調症になります。
アドレナリン
アドレナリンは日本人の科学者、高峰譲吉が分離、結晶化に成功しアドレナリンと命名しました。
同じ頃アメリカでも発見されたためアメリカではエピネフリンと呼ばれています。
ノルアドレナリンとほぼ同じ作用ですが、ノルアドレナリンが神経伝達物質として働くのに対して、アドレナリンは主にホルモンとして血液中に放出されます。
ドーパミン→ノルアドレナリン→アドレナリンと変化して作られていきます。
アセチルコリン
アセチルコリンは最初に発見された神経伝達物質です。
脳内では神経伝達物質として働き、学習、キオック、覚醒、睡眠に関係します。
身体においては交感神経系のノルアドレナリンが臨戦態勢をとらせるのに対して、副交感神経系のアセチルコリンは休息を取らせます。
アセチルコリンが減少するとアルツハイマー型認知症にあり、過剰になるとパーキンソン病になります。
アセチルコリンを受け取る受容体にはムスカリン性受容体とニコチン性受容体があります。
ムスカリン性受容体:瞳孔を縮小させます。ベラドンナの多年草には、この受容体は阻害するアトロピンが含まれており、眼科で瞳孔を開かせる時に点眼剤として使用します。
ニコチン性受容体:ニコチンと結合することで名付けられました。アセチルコリンと同じ作用があります。タバコを吸うとアセチルコリンの覚醒作用により、イライラがおさまったり、頭がスッキリしたりするのです。
グルタミン酸とγ-アミノ酪酸(GABA)
グルタミン酸は興奮性の伝達物質です。
記憶、学習にも関係します。
グルタミンが過剰になるとてんかん発作を起こし、減少するとアルツハイマー型認知症や、統合失調症になります。
γ―アミノ酪酸(GABA)は最も一般的な抑制性の伝達物質です。
グルタミンからGAD(グルタミンデカルボキシラーゼ)による産生されます。
減少すると不安障害、睡眠障害、うつ病、統合失調症になります。
β-エンドルフィン
脳内麻薬とも呼ばれる神経伝達物質です。
体内にあるモルヒネ様物質という意味です。
多幸感、鎮痛作用があり、ランナーズハイの時に分泌されます。過剰になると性腺刺激ホルモンの分泌を抑制するため生殖障害を起こす可能性があります。