新型コロナウイルスとインフルエンザ
当院でもインフルエンザが散見するようになりました。ここでは忽那先生のデータを参考に新型コロナウイルスとインフルエンザ感染症を比べてみましょう。
【共通する症状】
咳、喉の痛み、鼻汁などの気道症状、発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、だるさなどの全身症状は共通です。また、一定の割合で無症状の方もいます。
味覚症状、嗅覚症状はオミクロンでは少ないですが認めることがあります。オミクロンでは咽頭痛、鼻汁が多いので両者を区別することは難しいです。
【潜伏期】
新型コロナウイルスの潜伏期は当初5日程度とされていましたが、徐々に短くなっておりオミクロン株では約3日となっております。
これに比べインフルエンザでは1〜4日(約2日)です。
【周囲にうつす期間】
感染様式はどちらも飛沫感染、エアロゾル感染ですが、インフルエンザでは発症から3〜4日間が最も感染力が強いのに対して新型コロナウイルスでは症状が出る前から人に感染させることがあり、発症する前後が最も感染力が強いと考えられています。
また、ウイルスが付着した表面や物体からの感染はインフルエンザでは可能性がありますが新型コロナウイルスではほとんどないことがわかっています。
【重症化のリスクのある人】
新型コロナウイルス
65歳以上の高齢者 悪性腫瘍 慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病、糖尿病、脂質異常症、心血管疾患、 脳血管疾患 肥満(BMI30以上) 喫煙 免疫不全者(固形腫瘍臓器移植後、免疫抑制薬/調整薬の使用、 CD4 200未満のHIV感染症) 妊娠後半期 |
インフルエンザ
生後6ヶ月から5歳の小児 50歳以上の人 慢性肺疾患(喘息を含む)、心血管疾患(呼応血圧症を除く)、 腎疾患、肝疾患、神経疾患、血液疾患、代謝性疾患(糖尿病を含む)を 有する成人および小児 免疫不全者(免疫抑制剤使用、HIV等を含む) 妊婦 アスピリンやサリチル酸を含む薬を服用しており、インフルエンザ罹患 後にライ症候群を発症するリスクのある小児および青年(生後6ヶ月から 18歳まで)著名な肥満8BMI>40の成人) 介護施設や慢性期病棟の入所者 |
新型コロナウイルスでは小児は成人に比べ重症化しにくいと言われていますが、2022年に入ってからの20歳未満の死亡数は40例を超えており、インフルエンザによる死亡者数と同程度になっています。
新型コロナウイルスの死亡率は徐々にインフルエンザに近づいていますが、70歳以上の高齢者ではまだ新型コロナウイルスの方が高いです。
【治療薬】
新型コロナウイルス 現時点では原則重症しやすい方のみの適応になっています。
- 抗ウイルス薬(ウイルスの増殖・拡散を抑えるもの)経口薬
・モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)
・ニルマトレルビル・リトナビル(商品名:パキロビットパック)
・エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)
- 抗ウイルス薬点滴薬
・レムデシビル(商品名:ベクルリー)
- 中和抗体(注入した抗体がウイルスの表面に結合して細胞に侵入するのを防ぐ)
・カシリビマブ/イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ)静脈注射
・ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ)静脈注射
・チキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)筋肉注射
- 抗炎症薬
・デキサメタゾン(商品名:デカドロン):ステロイド
・バリシチニブ(商品名:オルミエント):JAK阻害剤
・トシリズマブ(商品名:アクテムラ):抗IL-6抗体
インフルエンザ
- 経口薬
・オセルタミビル(商品名:タミフル)
・バロキサビル(商品名:ゾフルーザ)
・アマンタジン(商品名:シンメトレル)
・吸入薬
・ザナミビル(商品名:リレンザ)
・ラニラビル(商品名:イナビル)
- 点滴
・ベラミビル(商品名:ラピアクタ)
【予防法】
どちらも感染様式は一緒ですので基本的な予防方法は同じです。こまめな手洗い、屋内でのマスク着用、部屋の換気などが重要です。
またどちらもワクチンがありますので接種を検討してください。
【まとめ】
インフルエンザ | 新型コロナ | |
潜伏期間 | 約2日 | 約3日 |
症状 | 咳、喉の痛み、鼻汁、発熱、頭痛、関節痛・筋肉痛、
だるさ、下痢、嘔吐 |
|
感染力のある期間 | 発症後から発症5日後くらいまで | 発症前から発症10日後くらいまで |
重症化リスク | 生後6ヶ月から5歳の小児
高齢者、妊婦、基礎疾患 |
高齢者、肥満、妊娠後期、基礎疾患など |
治療薬 | オセルタミビル
ラニナミビル ザナミビルなど |
レムデシビル
ニルマトレルビル モルヌピラビル エンシトレルビルなど |
ワクチン | あり | あり |