【脊髄性筋萎縮症とは】

おもに脊髄前角という部位の細胞の変性、脱落により、進行性の筋萎縮、筋力低下をきたす下位(脳ではない)の運動ニューロン病です。
【原因遺伝子】
5番染色体13.1(5q13.1)という領域にあるsurvival motor neuron(SMN1)がほとんどの場合原因遺伝子になります。この部位は500kbにおよぶ反対方向に並ぶSMA遺伝子があり(逆位重複:inverted duplication)、また、neuronal apoptosis inhibitory protein(NAIP)遺伝子が存在することがわかっています。
【遺伝形式】
常染色体性潜性(劣勢)遺伝形式をとります。
【診断基準】
1992年の国際SMA協会の定めた診断基準を示します。
| 包含項目 | I 筋力低下
1 対称性 2 近位筋>遠位筋 3 下肢>上肢 4 体幹および四肢 II 脳神経 1 舌の線維束性れん縮 2 手の振戦 3 筋生検:萎縮繊維の群 4 筋電図:神経原性変化 |
| 除外項目 | 1 中枢神経機能障害
2 関節拘縮 3 外眼筋、横隔膜、心筋の障害、聴覚障害、著しい顔面筋罹患 4 知覚障害 5 血清クレアチンキナーゼ>正常上限の10倍 6 運動神経伝達速度<正常下限の70% 7 知覚神経活動電位の異常 |
【頻度】
欧米では10,000出生につき1人ですが、我が国の発症は欧米より低く100,000人に1~2人程度と言われています。
【分類】
発症時期により分類されています。
| 発症 | 最大運動能力 | 生命予後 | |
| 0型
(最重症型) |
胎児期 | 出生児より人工呼吸 | 出生児死亡 |
| I型
(Werdnig-Hoffman病) |
~6m | 坐位不能 | 多くは乳幼児期に死亡 |
| II型
(中間型) |
6~18m | 坐位可能、歩行不能 | 多くは10~20歳代まで生存 |
| III型
(Kugerlberg-Welander病) |
18m~ | 歩行不能 | 長期生存可能 |
| IV型 | 10Y~ | 普通に歩行可能 | 長期生存可能 |
【症状】
I型はフロッピーインファント(グニャグニャ児)で早期に呼吸障害を認めます。
II型、III型は運動発達の遅れや筋力低下で気づかれます。II型はI型とIII型の中間の重症度です。
線維束性収縮(fasciculation)(舌、手指でよく見ることが多い筋肉の一部がピクピク動く現象)が見られます。
【治療】
- 対処療法
- 特異的治療薬
- スピンラザ(ヌシネルセン)髄液への注射薬剤
少し難しいですが、SMA遺伝子にはSMA1とSMA2があります。本来の遺伝子は SMA1です。SMA2はSMN1遺伝子から作られるタンパク質と同じ働きをしますが、SMN2は構造上の違いによりその大半が機能しないため、SMAの治療において重要な役割を果たします。 このSMN2のスプライシングを調節して不足するタンパク質を増やし、運動機能を維持・改善させる薬です。
- エプリスデイ(リスジプラム)経口内服薬
エプリスデイもスピンラザと同じ機序を利用した経口薬です。
- ゾルゲンスマ(オナセムノゲン アベパルボベク)遺伝子治療
の3つがあります。それぞれの有効性の比較したデータはありません。ゾルゲンスマは保険適応ですが、1回の治療で1億円以上することが話題になりました。
3剤の比較(日本小児神経学会HPより)
| 一般名 | ヌシネルセンナトリウム | オナセムノゲンアベバルボベク | リスジプラム |
| 販売名 | スピンタザ髄注12mg | ゾルゲンスマ点滴静注 | エブリスデイ
ドライシロップ60mg |
| 承認年 | 2017年 | 2020年 | 2021年 |
| 作用機序 | SMA2 pre-RNAをターゲットとするアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)で、選択的スプライシングを修飾し、△7 mRNAからエクソン7を含んだ完全長mRNA の産生を促進し、完全長の機能性SMNタンパク質を増加 | アデノ随伴ウイルス9型のカプシドを有するヒトSMNタンパク質を発言する非増殖性遺伝子組み換え
アデノ随伴ウイルスベクターで、SMN1遺伝子の機能欠損を補充することでSMNタンパク質を産生する |
SMN2 pre-RNAをターゲットとする低分子化合物で、選択的スプライシングを修飾し、△7mRNAからエクソン7を含んだ完全長mRNAの産生を促進し、完全長の機能性SMNタンパク質を増加 |
| SMA2遺伝子コピー数 | 1コピー以上が必須条件(1または4以上の有効性、安全性は確認されていない) | 記載なし | 1コピー以上が必須条件(1または4以上の有効性、安全性は確認されていない) |
| 未発症者
(出生前診断、新生児スクリーニングでの検出)への適応 |
有 | 有 | 無 |
| 対象年齢 | 年齢制限なし | 2歳未満 | 2ヶ月以上 |
| 特定の背景を有する患者への注意 |
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| 投与方法 | 髄腔内投与 | 静脈内投与 | 経口内服 |
| 投与量 | 乳児型:初回投与後、2週4週および9週に投与、以降4ヶ月の感覚で投与を行う
乳児型以外:初回投与後、4週および12週に投与し、以降6ヶ月の感覚で投与を行う いずれの場合も1~3分かけて髄腔内投与 |
60分かけて静脈内に単回投与する。再投与は不可。
副作用予防のため、プレドニゾロン内服を治療前後で併用する。 |
1日1回食後に投与 |
| 投与量 | 乳児型:日齢により、9.6mg~12mg
乳児型以外:12mg |
体重2.6kg以上に1.1×1014ベクターゲノム(vg)/kg
13.6kg以上では、体重に基づき投与量を算出 |
生後2ヶ月以上2歳未満:0.2mg/kg
2歳以上で体重20kh未満:0.25mg/kg 2歳以上で体重20kg以上:5mg/kg |
| 安全性検討事項 | 水頭症
血小板減少 |
肝機能障害
心筋トロポニン上昇 血小板減少 血栓性微小血管症 |
網膜毒性
胚胎児毒性 雄性生殖能への影響 |
| 抗AAV9抗体妖精例への投与 | 可 | 不可 | 可 |
【スクリーニング】
早期の発見が大切なため、現在では新生児スクリーニングで発見する試みがなされています。










