【不登校とは】

厚生労働省の定義によると「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童・生徒が登校しない、あるいは登校したくてもできない状況にあるために年間30日以上欠席したもの(ただし、病気や経済的理由によるものは除く)をいう」となっています。
現実的には部分登校の子供もいます。また、放課後のみ登校、部活にだけ参加、保健室登校、相談室や適応指導教室に参加、フリースクールの利用など、不登校状態であっても子供の居場所は以前より多様になっています。
以前は登校拒否とも呼ばれていましたが、「拒否」という言葉には「意図的に学校に行くことを拒んでいる」「反学校的」というニュアンスがるため、子どもに烙印を押す効果や、本人の意思とは異なる誤解を招くという問題が指摘されるようになるました。そこで1990年代に「不登校」とういう言葉が使用されるようになりました。アメリカでは包括的な用語として「登校拒否行動」や「学校恐怖症」などの言葉が使用されています。
【現状】
文部科学省の統計では小中学校における不登校の人数は約35万人で、小学校では約13万5千人、中学校では約21万5千人におよびます。児童生徒全体に占める割合は3.9%です。年々増えています。
【症状】
もちろん学校に行かないことが症状ですが、不登校児の約74%が初期段階で不定愁訴を訴えます。この不定愁訴で小児科を受診することが多いのです。子どもは嘘の症状ではなく、本当にその症状で困っていることがほとんどです。
【不登校を疑う症状】
- 登校や特定の行事、教科と、症状の増悪に関連がある(登校前や日曜の夜に調子が悪くなる。体育のある日は調子が悪い、給食の前に保健室にいくなど)
- 学校に行かなくても良い状況で症状が改善する(週末や長期休暇中は比較的調子がよく、平日でも「今日は休んでいい」と言われると改善する)。
- 症状に次のような特徴がある:症状の部位と程度に変動性がる。訴えのわり重症感がない。理学的所見と症状が合わない。
- 喘息などの慢性疾患が、学校との関連で改善・増悪する。
- 症状の出現する少し前に、学校で新たな役割(クラス委員、クラブの部長、生徒会長役など)に就いた。
などです。
【対応】
まず、体調不良があれば必要な検査を行います。その結果で異常がなければ、「少なくとも重大な病気である可能性が低い」ことを伝えることができます。そして継続的に経過を見て行く必要があることを伝えます。
家族には「症状には、学校に行きたくないという気持ちが関係している可能性があること、何か思い当たることはないか」を尋ねます
子どもに対しては「学校で困っていることはないか」を聞きます。反応がなければ「それならいいよ」と流します。不登校の原因は一つとは限らず複合的であること、本人自身も何が原因かわからないことがあるので、一度は不登校の原因・誘引を聞いても良いと思いますが、何度も尋ねるのはあまりよくありません。
2週間後くらいに再度受診してもらいます。不登校では継続した受診が重要です。症状が改善と増悪を繰り返すので一喜一憂しないことです。この間に生育歴などの詳しい情報を収集します。発達障害や精神疾患の可能性も検討します。情報収集には乳児期からの保育園(幼稚園)、小学校、高等学校での様子、発達歴、好んでいた遊び、登園、登校の行きしぶりの有、行事への参加の様子、保育士、教師からの指摘、友達関係で問題になったことなどを聞きます。また、ご家族が不登校に対して、どこか相談したかも含めてどのように対応してきたかも教えていただきます。現状維持ができていることを肯定的にとらえていけば良いのです。
- 家庭生活が安定しない時期は、登校を促すことをやめ、生活リズムの改善を図ります。
- 家庭で退屈して学校が気になり始めたら、部分的な登校を提案します。
- 学校で生活する時間が増えてくると、友だちや先生との間で問題が発生し、子ども自身の持つ課題がはっきり見えてきます。
【再診時】
- 身体症状の変化(症状の経過)
- 行動の変化(登校の様子、生活リズム)
- 気分変化(イライラしたり、落ち込んでいないか)
【心身症】
身体症状を示す病態のうち、その発症や経過に心理社会的因子が関与するすべてのものを「心身症」といいます。
- 起立性調節障害:立ちくらみ、めまい、頭痛、嘔気などを主症状とする思春期に多い自律神経失調状態です。
https://tsudashonika.com/disease-cat/other/od/
を参考にしてください。
- 過敏性腸症候群:腹痛を下痢、便秘を繰り返す機能性の腸疾患です。ストレスで悪化します。脳と腸はつながっており、脳腸相関と呼びます。我々もストレスでお腹が痛くなることありますよね。
- 機能性頭痛
緊張型頭痛と片頭痛が代表です。
【合併する疾患の確認】
- 身体疾患:悪政疾患、血液疾患、内分泌疾患、膠原病、
- 発達障害
- 精神疾患
- 解離症(解離性障害)・変換症(転換性障害)
- 病気不安症(心気障害)
【不登校の状態評価】
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状態0 |
登校できる |
外出できる |
ほぼ平常に登校している |
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状態1 |
遅刻。欠席がしばしばある 保健室通いが多い |
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状態2 |
保健室・相談室登校 半分以上欠席 |
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状態3 |
登校できない |
学校以外の施設に定期的参加ができている |
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状態4 |
比較的気軽に外出できる |
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状態5 |
外出できない |
家庭内では安定しているが外出は難しい |
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状態6 |
部屋に閉じこもり、家族ともほとんど顔を合わせない |
- 状態6::家庭内の生活を安定させるのが目標になります。学校には行けなくて良いが人間らしい生活だけはできるようにしましょう。
- 状態5:機会があれば、できるだけ外に出るようにしましょう(夜の散歩休日のドライブ、日々の買い物など。子どもの話に興味や関心を示し、時間を共有しながら一緒に楽しむ(感動体験を共有する)のが大切です。
- 状態4::表情が落ち着いており、「退屈だ」という言葉が聞けるようになれば、適応指導教室への参加や、保健室・相談室登校を勧めます。
- 状態3:学校への拒否感が強ければ、この状態を一応のゴールと考えても良いでしょう。
- 状態2:調子が良かったのに再び動けなくなるのは、周囲が子どもと相談せずに要求を増やしている時が多いです。焦りは禁物です。
- 状態1:状態2と同じように現状を維持し、焦らないことです。
- 状態0:不登校の状態ではありませんので、さりげなく子どもを励ましましょう。
【薬物療法】
不登校における薬物療法にはいくつかの意味があります。
- お守りとしての効果:もっとも問題となる症状を1~2つ取り上げ、その軽減を目標に薬物療法を行います。
- 贈り物としての効果:子どもの訴え対して小児科医が目に見える形で与えることができるのが薬物療法です。
- 話題としての効果:身体症状を訴える子どもは、アレキシサイミア(失感情症)のために、自分を十分表現できないことがあります。薬物の効果を確認することが言語による自己表現を助けることになります。
- 身代わりとしての効果:薬物療法に対する抵抗や副作用に対する過敏反応は治療への不信、インターネットなどの情報に露湯ことがあります
- 自主性を育てる効果:治療に対する自主性を育てる効果が期待できます。
- 治療意欲を見る効果:服薬状況を見ることにより、子どもと家族の治療意欲を推定することができます。
【ゴール】
もちろん学校に行けるようになることが望ましいのですが、本人にもご家族にも、「不登校は特別な問題行動ではない」ということを理解してもらいます。登校させることを目標とせず、学校を休む必要性を認めることや、家庭、学校以外の第3の居場所を作ることが必要です。もちろんクリニックもその一つですので、通院を継続することに意味があるのです。
15歳の時点で不登校だった子どもの7割は社会復帰できると言われています。










