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診療案内 神経線維腫症I型(フォン・レックリングハウゼン病) von Recklinghausen病

【概要】

神経線維腫症は神経の症状と皮膚の症状を持ち合わせる神経皮膚症候群の一つです。

神経線維腫症にはI型とII型がありますが、I型は神経線維腫、視神経膠腫、骨の異常、カフェオレ斑などを主症状とする疾患です。
II型は両側性に発生する聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)を主徴とし、その他の神経系の腫瘍とがん病変を伴う遺伝性疾患です。

ここでは神経線維腫症1型であるvon Recklinghausen病に関して述べたいと思います。

【原因】

17番染色体長腕(17q11.2)に存在するNF1遺伝子の機能がなくなることにより、がん遺伝子でもあるRasタンパクの機能が活性化し、細胞増殖が亢進することにより神経繊維腫などを生じます。

【遺伝形式・頻度】

常染色体顕性(優勢)遺伝形式をとります。
親からの遺伝頻度は1/2です。

出生2,500〜3,000人に1人に発症し、本邦では約4万人といわれています。
患者さんの半数以上は突然変異による孤発例で家族歴はありません。

【症状】

皮膚症状

ミルクコーヒー色から濃い斑で、長円形のものが多く、辺縁のギザギザは見られません。
小児では0.5cm以上、思春期以降では1.5cm以上のものが6個以上あることを基準とします。

神経線維腫には皮膚の神経線維種、神経の(叢状)神経線維腫(くさむらの様に多くが集まっていることを叢状といいます)、びまん性(叢状)神経線維腫があります。皮膚の神経線維腫は思春期頃から全身に多発しますが、成長とともにほぼ全ての患者さんに見られます。

叢状神経線維腫は患者さんの約半数に見られますが、深部病変の場合見つからないこともあります。
びまん性神経線維腫は皮膚の大きな局面が柔らかく隆起するもので、徐々に大きくなりたれさがります。

美容的問題だけでなく、機能的な問題があるため外科的な切除が必要になることもあります。
悪性末梢神経鞘腫瘍は末梢神経から発症する肉腫で、患者さんの2〜4%に生じます。
雀卵斑様色素斑は細かいそばかす様の扁平母斑で腋窩や鼠蹊部に見られます。

眼症状

虹彩小結節は虹彩に生じる過誤種という良性の腫瘍です。
視力には影響ありませんが、神経線維種症1型に特異的な所見なので診断的価値が高いです。
2個以上あれば有意とします。

視神経膠種は6歳以下の小児に発症し、失明、眼球突出をきたすことがあります。
進行が遅いため、成人になるまで気が付かれないこともあります。

骨病変

蝶形骨を主とした頭蓋・顔面の骨欠損、四肢の変形・病的骨折、脊柱側弯、胸郭の変形などがあります。
脛骨の偽関節は出生時からあり、弯曲して短くなります。

中枢神経病変

視神経膠種、脊髄腫瘍、毛様細胞性星細胞種を認めることがあります。
知的発達症の頻度は6〜7%程度です。

半数以上に限局性学習障害や注意欠如多動症などの発達障害を認めます。

その他の腫瘍性病変

gastrointestinal stromal tumor(GIST)、褐色細胞腫、白血病の合併が知られています。

心血管病変

小児では肺動脈弁狭窄、肥大型心筋症を認めることがあります。
成人では高血圧をしばしば合併します。

ほとんどが本態性高血圧ですが、時に腎動脈狭窄や大動脈縮窄、もやもや病を伴います。

その他

生後の発育遅延が1/3にみられます。
思春期早発による成長促進時は視神経膠種を疑います。

不均衡な四肢の成長は蔓状視神経線維種(主に体の内部に発生する神経線維腫)の存在を疑います。

【診断基準】

[その他の参考所見]

【検査】

各種合併症の併発を早期に発見するためにも定期的な診察と経過観察が必要です。
小児期では半年〜1年に1回、成人では1〜数年に1回程度の経過観察が必要です。

頭部MRIにてunidentified bright objects (UBOs)という病変が見られることがあります。

【治療と予後】

症状に応じた治療を対処的に行います。
悪性腫瘍の発生の有無により予後が左右されます。

小児慢性特定疾患および指定難病のため治療費は援助されます。

【新しい治療】

経口治療薬「コセルゴカプセル(セルミチニブ)が販売開始になりました。
切除不能の叢状神経線維腫に適応があります。

セルメチニブは細胞増殖に関与する酵素である分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ(MEK1およびMEK2)を阻害することで、腫瘍細胞の増殖を抑制します。

【鑑別診断】

カフェオレ斑を呈する他の疾患にはRussell-Silver証拠群、Bloom症候群、Noonan症候群、LEOPARD症候群、Sotos症候群、Proteus症候群、Dubowitz症候群、Klippel-Trenaunay-Weber症候群、毛細血管拡張性運動失調症(Ataxia Teleangiectasia)、Carney症候群などがあります。

【叢状神経線維種と蔓状神経線維腫】

叢状神経線維腫と蔓状神経線維腫は、どちらも神経線維腫の一種ですが、その形態と位置に違いがあります。

叢状神経線維腫は、複数の神経線維腫が束になり、塊のように見えるもので、蔓状神経線維腫は、神経に沿って蔓のように長く伸びる神経線維腫です。

【患者会】

任意団体 To smile、
社会福祉法人 復生あせび会があります。

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