【うつ病とは(診断基準)】
うつ病とはうつな気分(悲しくて惨めな虚しい気持ちになり、やる気や興味が失せる)が長く続いている状態のことです。
誰でも気分の落ち込むことはありますが数日で通常の生活に戻ることができます。
しかし、うつ病の人はこのような状態が2週間以上続き元に戻ることができません。
要因は様々ですが、基本的な要因は「心身のエネルギー不足」と言われています。
DSM-IV-TRでは下記となり、中核症状の一つと他の症状が5項目以上あることで診断されます。
-
中核症状
- 抑うつ気分(イライラ気分)
- 興味または喜びの喪失である。
- 体重の変化、食欲の障害
- 睡眠障害
- 精神運動性の焦燥または制止
- 易疲労性、または気力の減退
- 無価値観、または過剰であるか不適切な罪責感
- 思考力や集中力の減退、または決断困難
- 自殺行動
- 保健所・保健センター
- 自動相談所
- 精神保健センター
- 教育相談期間(教育相談センターあるいは教育相談所)
- 支持療法
治療者が悩みや気持ちをじっくりと聞き、辛い状況を理解・共感することで、子供に安心感を与えます。いわゆる、傾聴と共感です。 - 認知療法
物事をマイナスに捉える認知の歪みを治療者と一緒に見直しながら、子どもがプラス思考に物事を捉えるように導いて行きます。 - 対人関係療法
うつ病の治療のために開発された精神療法で、治療者との会話に中で、ストレスを減らしていく方法です。対人関係がうつ病の主な要因ではなくても効果があります。
関連症状
【子どものうつ病の特徴】
目立つ症状が大人と異なる
小学校低学年では赤ちゃん返り、急に泣き出す、頭痛、易疲労性、食欲低下、睡眠障害、不登校、イライラ、興味がうすれる、そして腹痛などのからだの不調を訴えることが多いです。
小学校高学年では低学年と同様なからだの不調によるものが多くあります。
しかし、それ以外にも行動面の問題も目立ち、朝起きない、食べようとしない、不登校になる、攻撃的になる、ゴロゴロしている、しゃべろうとしない、いらいらする、すぐに疲れるなどもよく見られます。
10歳を境にはっきりとしたうつ病が増えてきます。
中学生では問題行動が激化し、引きこもる、暴力的になる、学業成績が低下する、劣等感や自責の念が強まる、夜更かしする、朝起きない、拒食・過食する、ネットに依存する、アルコール、薬物に手を出す、万引きなどの非行が増えるなどがみられます。
きっかけがある
環境の変化が子どもの心に影響を与えることも多く、学校や友人との関係の変化や家庭環境の変化が誘因となることがあります。
他の疾患が伴うことがある
不安障害、ADHD(注意欠陥多動症)、ASD(自閉症スペクトラム症)、SLD(特異的学習障害)、DSD(発達性協調運動障害)など併存する精神疾患が多く見られます。
幻聴をはじめとする精神病症状を伴いやすい
自殺行動が成人より多く見られる
【うつ病の要因】
うつ病の主な要因は心身の問題と環境の問題に分かれる。心身の問題としては、発達障害、遺伝・性格、脳のトラブル、病気・薬物などである。
心身の問題
発達障害、知的発達症、自閉症スペクトラム、ADHD、吃音、発達性協調運動障害などはうつになりやすいと言われています。
家族にうつ病がいると,子どももうつ病になる確率が高くなります。また、生まれ持った気質や性格も原因となります
。真面目で責任感や正義感が強く完璧主義者、真面目で秩序を大切にし、他人との円満な関係を好む性格はうつ病になりやすいです。
つまり、頑張り屋のよい子ほどうつになりやすいと言うことです。
そのような子は気分転換が苦手で、他人との関係を円満にしようと無理をするからです。
そのため、ストレスを貯めやすく心のエネルギーが枯渇しやすいのです。
環境の問題
うつ病を来たしやすい家庭環境としては、両親の不仲、離婚、再婚、家族の死去、親の思いやりの欠如、無関心、虐待、うつ傾向になったときに叱責されるなどがあります。
学校での環境では、いじめ、転校、勉強のつまずき、部活での失敗、失恋、進学・進級の問題、コミュニケーションの行き違いなどです。
転居、災害、事故などのショックが元になることもあります。
【うつ病の診断のために】
普段の診療において
上記の症状がからだの異常でないことが確認できたらうつ病を疑い、バールソンのうつ病のスクリーニング(DSRS-C)や、エジンバラの産後うつ病のスクリーニングでも用いる2つの質問(① ここ1ヶ月、気分が沈んだり、憂鬱になることが多くないです? ②ここ1ヶ月、物事に対して興味がわかなかったり、心から楽しむことができなかったりすることが多くないですか?を聞き、一つでも陽性であればうつ病を強く疑うことができます。
うつ病の重症度の判定にはPHQ-Aが利用できます。これは成人の重症度に使用するPHQ-9を青少年用に変えたものです。自殺の危険が高い子どもは一人で抱え込まず、チームで対応します。
うつ病など心の病の公的な相談窓口としては下記などがあります。
【うつ病の治療】
環境調整(休養)、精神療法(認知行動療法(CBT))、薬物療法があります。
環境調整
心のエネルギーが枯渇しているので十分になるまでは休養が必要です。
無理をして通学しても病状が悪化します。本人にも親にも休養も治療の一つとであることを理解してもらいます。
精神療法
精神療法には支持療法、認知療法、対人関係療法があります。
薬物療法
中心は抗うつ剤であり、症状に合わせて抗精神病剤、睡眠薬、抗不安薬、気分安定剤が追加されます。