【副鼻腔の構造と役割】
鼻の中には、鼻の穴(鼻腔)だけではなく副鼻腔縁という鼻腔を取り囲むように4種類の空間(前頭骨洞、篩骨洞、蝶形骨洞、上顎洞)が8つがあります。これらは小さな穴で繋がっています。
副鼻腔は空気を吸い込む時に空気を加温、加湿、細菌などから守る役割のほかに、匂いや声を出すときの役割もあります。そのため、副鼻腔炎になるとにおいを感じなくなることもあるのです。
【副鼻腔炎とは】
多くの人が風邪をひくと鼻水、くしゃみ、発熱、咳などが出ますが、これらの症状は自然となくなります。しかし、8つの副鼻腔のいずれがにある鼻汁や膿がうまく出せずに溜まり炎症が悪化してしまと副鼻腔炎になってしまいます。
1ヶ月程度までを急性副鼻腔炎、3か月以上を慢性副鼻腔炎と呼びます。
【症状】
鼻汁(性状を問わない)、昼の咳嗽(夜間より増悪することもあります)、いずれか又は両方です。
口臭、倦怠感、頭痛、食欲低下もよく見られますが、急性副鼻腔炎の特徴的な症状ではありません。
【副鼻腔炎の診断】
急性副鼻腔炎は上記のように、風邪のあとに起こることが多いです。
風邪の児が下記のいずれかを認めた場合に急性副鼻腔炎と診断されます。
キーワードは持続、悪化、重症です。
- 持続:鼻汁又は昼の咳が改善せず10日以上持続する
- 悪化:症状が一旦改善した後、鼻汁、昼の咳或いは発熱が新しく出現、再び悪くなる
- 重症:3日以上続く膿性鼻汁(緑黄色の鼻水)と39℃以上の発熱
つまり、鼻水が汚いからと言ってむやみに抗生剤を飲む必要はないと言うことです。
また、急性副鼻腔炎の場合、画像検査(レントゲン、CT-scan、MRI)は実施すべきではないと書かれています。
【副鼻腔炎の起炎菌】
- インフルエンザ桿菌
- 肺炎球菌
- モラキセーラ カタラーリス
【治療】
下記の項目に当てはまるのであれば、3日間の観察も考慮する事になっています。
当てはまらない場合は抗菌剤の使用が推奨されると言うことです。
- 過去4週間以内に抗菌剤治療を受けていない
- 中耳炎、肺炎、リンパ節炎、溶連菌感染症など、他の感染症をともなっていない
- 眼窩内合併症、頭蓋内合併症はない
- 喘息、免疫不全、過去の副鼻腔施術歴、上気道の解剖学的異常などの持病がない
【抗生剤】
AMPC(サワシリン、ワイドシリンなど)あるいはAPMC-CVA(クラバモックスなど)を投与します。
下記の項目に当てはまれば耐性菌の可能性を考えます。
- 2歳未満
- 30日以内の抗菌薬の治療歴
- 保育所通園
初期には原則ペニシリンを使用します。特に理由がなければセフェム系などの抗生剤は投与しません。
【参考にした文献】
Clinical Practice Guideline for the Diagnosis and Management of Acute Bacterial Sinusitis in Children Aged 1 to 18years Pediatrics 2013