【アレルギー性鼻炎と花粉症とは】
鼻粘膜のアレルギー反応で、原則的には発作性反復性のくしゃみ、鼻水(水様性)、鼻づまりを主な症状とします。
花粉症は花粉を抗原(アレルギーの原因物質)とするアレルギー性鼻炎で、代表的なものに春のスギ花粉症があります。
夏はイネ科の植物、秋にはブタクサなどの花粉症もあります。
最近は花粉症の低年齢化が問題になっており、1歳での発症もみることがあり、3歳ではまれではありません。
【鼻炎の種類】
1.感染性a.急性鼻炎 b.慢性鼻炎 |
2.過敏性非感染性a.複合型(鼻過敏症)
I)アレルギー性:通年性アレルギー性鼻炎 2)非アレルギー性 :血管運動性(本態性)鼻炎、好酸球性鼻炎 |
3.刺激性 |
4.その他 |
【症状】
くしゃみ、鼻水、鼻づまりが症状です。
花粉症ではその他に、目のかゆみ、皮膚のかゆみ、咳、のどの痛み、微熱などを伴うことがあります。
【診断と重症度】
アレルギー性かどうかの診断には問診(お話を聞くこと)、鼻鏡検査(鼻の粘膜をみること)、鼻副鼻腔X線検査、血液・鼻汁好酸球検査、血清非特異的IgE抗体検査があります。
原因物質の同定には皮膚テスト、血清特異的IgE検査、誘発テストがあります。
鼻かぜの初期にはくしゃみ、鼻水がみられるので鑑別が難しいですが、風邪では数日で鼻水が粘液性にあり、1〜2週間程度で治ります。
【予防】
最も大切な事は、原因となるものを避けることです。通年性のものであればダニを、スギ花粉症であればスギを、ペットによるものではそのペットを避けることです。それぞれについて述べたいと思います。
1. ダニ
- 掃除がけは、吸引部をゆっくりうごかし、1畳あたり30秒以上の時間をかけ、週に2回以上行う。
- 布張りのソファー、カーペット、畳はできるだけやめる。
- ベッドのマット、ふとん、枕にダニを通さないカバーをかける。
- 布団は週に2回以上干す。困難なときは室内干しや布団乾燥機で、布団の湿気を減らす。週に1回以上、掃除機をかける。
- 部屋の湿度を50%、室温を20〜25℃に保つように努力する。
- フローリングなどのホコリのたちやすい場所は、拭き掃除のあとに掃除機をかける。
- シーツ、ふとんカバーは週に1回以上洗濯する。
2. スギ
- 花粉情報に注意する。
- 飛散の多いときの外出を控える。外出時にマスク、メガネを使う。
- 表面がけばだった毛織物などのコートの使用を避ける。
- 帰宅後、衣服や髪をよく払ってから入室する。洗顔、うがいをし、鼻をかむ。
- 飛散の多い時のふとんや洗濯物の外干しは避ける。
- 掃除を励行する。特に窓際を念入りに掃除する。
3. ペット(とくにネコ)
- できれば飼育をやめる。
- 屋外で飼い、寝室に入れない。
- ペットと、ペットの飼育環境を清潔に保つ。
- ユカのカーペットをやめ、フローリングにする。
- フローリングなどのホコリのたちやすい場所は、拭き掃除をした後に掃除機をかける。
【治療】
1.薬物療法
多くのお飲み薬があります。抗ヒスタミン薬が代表的な飲み薬ですが、その他にもケミカルメディエーター遊離抑制剤(インタール、リザベン、アレギサール、ソルファなど)や、鼻閉タイプに効果が期待できるロイコトリエン受容体拮抗薬(オノン、シングレア、キプレス(小児で適応があるのはオノンのみ)、プロスタグランディンD2・トロンボキサンA2受容体拮抗薬(バイナス(小児では適応外)),ステロイド薬(セレスタミン)、漢方薬などがあります。
抗ヒスタミン薬とステロイドの点鼻、時にロイコトリエン受容体拮抗薬が用いられることが多いと思います。
気をつけなければいけないのが、点鼻用血管収縮剤とステロイドの筋肉注射です。
点鼻用血管収縮剤は2歳未満は禁忌です。また、長期に使用すると逆に鼻閉が悪化するので最長でも2週間以内の使用となっています。
また、ステロイドの筋肉注射はリスクを伴うためアレルギー学会でも使用を控えるようにと指示が出ています。時に「私も使用していますが、問題ありません。」とうたっているホームページがありますが、気をつけて下さい。また、飲み薬のセレスタミンも症状が悪化した際に1週間以内の使用が推奨されています。
どの薬剤が効くのか、強いのかではなく、個人個人に合う薬剤を見つけることです。
2.その他
鼻を洗うこと、すなわち鼻うがいも効果的です。鼻についている原因である花粉を取り除くことができます。ダニの場合は少し難しいかもしれません。
【舌下免疫療法】
現在、ダニ、スギに対しては5歳以上の方に舌下免疫療法の適応があります。
詳しくはホームページの舌下免疫療法 http://www.tsudashonika.com/sublingual を参考にして下さい。
【重症花粉症に対する新しい治療法】
重症花粉症に対してゾレア(抗IgEモノクローナル抗体)の適応が追加されました。月に1〜2回の皮下注射になります。通常最高で3ヶ月までになります。
大変価格の高い薬〔自己負担も高価です〕ですので、投与するには色々な制限があります。
- スギ花粉による季節アレルギー性鼻炎の確定診断がなされていること。
- 本剤初回投与前のスギ花粉抗原に対する血清特異的IgE抗体がクラス3+以上であること。
- 過去にスギ花粉症抗原の除去と回避を行ったうえで、医療機関にて鼻アレルギー診療ガイドラインに基づき、鼻噴霧様ステロイド薬およびケミカルメディエーター受容体拮抗薬(抗アレルギー薬)による治療を受けたものの、コントロール不十分な鼻症状が1週間以上持続したことが確認できること。
- 12歳以上で、体重および初回投与前血中総IgE濃度が投与量換算表で定義される基準を満たすこと
- 投与開始時点において、季節性アレルギー性鼻炎とそれ以外の疾患が鑑別され、本剤の投与が適切な季節性アレルギー性鼻年であると診断されていること。
自己負担額(検査費等を含む)によっては高額療養制度が適用になるケースがあります。詳しくはソーシャルワーカー、健康保険加入先に問い合わせて下さい。