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病児保育室 夜尿症

夜尿症は珍しい病気ではありません。
早期に治療してあげることがお子さんの為になります。
小学校に入ってもおねしょがあるときは早めに相談してください。

【夜尿症とは】

5歳以上の子が1ヶ月に1回以上の夜尿が3ヶ月以上持続するときに夜尿症と定義します。週に4回以上を頻回夜尿症、3回以下を日頻回夜尿症と呼びます。
本人は恥ずかしいために「気にしていない」ということがありますが実際はストレスになっていることもよくあります。

 

【頻度】

小学校に入るまでは20%、小・中学性では役6.4%の子に夜尿症があると言われています。これはアレルギー性疾患につぐ頻度の高い病気となります。

 

【分類】

  1. 一次性夜尿症と二次性夜尿症
    これまでに夜尿が消失していた時期があったとしても6ヶ月未満の時を一次性夜尿症、6か月以上の時は二次性夜尿症と呼びます。何故このような分類をするかというと、二次性夜尿症には何らかのストレスが原因であったり、色々な精神疾患の併存率が高いからです。
  2. 単一症候性夜尿症と非単一症候性夜尿症
    下部尿路症状があるかないかで単一性か非単一性に分けられます。非単一性の場合は何か器質性の病気がある可能性がありますので専門施設での検査が必要になることが多いです。

下部尿路症状とは

のことを示します。

 

夜尿の鑑別すべき疾患

 

夜尿の鑑別すべき疾患

 

【夜尿症の病型】

夜尿症は夜間に産生される尿量と膀胱が受け入れることができる容量のバランスにより生じます。いくら膀胱の容量が正常でもその量以上の尿が産生されれば夜尿症は起こってしまいますし、夜間尿量が正常でも、膀胱容量が少なければ起こってしまいます。

  1. 多尿型:夜間の尿量が多いタイプ
  2. 膀胱型:膀胱容量が少ないタイプ
  3. 混合型:①と②の混合型
  4. 正常型:ともに正常のタイプ

これらは夜間の尿量と早朝覚醒時の尿の比重と浸透圧を測定することで分類します。これらの分類は治療にアラーム、薬剤があるのでどちらを第1選択にするかに役立ちます。

 

【治療】

夜尿症治療

夜尿症治療は①生活指導 ②行動療法 ③アラーム療法 ④薬物療法 ⑤その他、からなっています。

①生活指導

生活改善だけでも20〜30%くらいの改善が認められると言います。生活改善には

です。

 

1日の食事と水分の摂り方

1日の食事と水分の摂り方

 

②行動療法

が効果があるとされています。

 

③アラーム療法

約2/3の夜尿症児で有効と言われています。不明な点も多いのですが、アラームにより夜間の蓄尿量が増えることが期待されています。レンタル用のアラームもあります。

 

④薬物療法

抗利尿ホルモンであるデスモプレシン(ミニリンメルト)は夜間の尿量を減らし濃縮する作用があります。ミニリンメルトは食直後に服用してはいけません。投与2〜3時間前から翌朝までの飲水は極力避けることになっています(200ml、あるいは10ml/kgまで)。

以下に投与中止すべき状態を示します。

 

また、抗コリン薬単独での使用は推奨されていません。アラームと抗コリン薬、デスモプレシンと抗コリン薬、あるいはアラーム、デスモプレシンと抗コリン薬の併用となります。特に、単一症候性夜尿への単独投与は有効ではありません。
抗コリン薬を使用するときには定時排尿訓練、便秘の改善を最初に行う必要があります。

抗コリン薬として使用されるものとしてはプロピペリン(バップフォー)、トルテロジン(デトルシトール)、オキシブチニン(ポラキス)およびソリフェナシン(ベシケア)があります。

三環系抗うつ剤は以前よく使用されましたが、心毒性があるため現在ではあまり使用されなくなりました。
その他の薬物療法として漢方薬があります。

 

【効果判定】

Ⅰ 初期効果

 

Ⅱ 長期効果

 

【宿泊行事のあるとき】

夜尿症をもつ子にとって宿泊行事は問題になります。できるだけ早く相談をしてください。

宿泊行事まで1ヶ月未満しかないとき

  1. 上記にある生活指導を行います
  2. 担任の先生にお願いして、
    ・夕食時と夕食後の水分摂取の制限をおねがいする。
    ・就眠前の排尿または夜間に起こして排尿させること。
    ・他の子に気付かれないように別室での就寝をさせること
    ・パジャマは黒、紺など色の濃いものを選ぶこと

宿泊行事まで1か月以上あるとき

  1. 生活指導
  2. デスモプレシン(ミニリンメルト)を少なくとも1ヶ月前(ガイドラインでは6週前)から使用してみること
  3. 上記の1ヶ月未満のときと同じ事を担任にお願いする

夜尿症診療ガイドライン2021のCQ.

ガイドラインは公益財団法人日本医療機能評価機構が作成した「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に準じてエビデンス総体と推奨グレードを設定しています。ちなみにMindsとはmedical information network distribution serviceの略です。

それによるとガイドラインとは「診療上の重要度の高い医療行為について,エビデンスの SR(Systematic Review)とその総体評価,益と害のバランスなどを考量して,患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」となっています。

下記のCQとはClinical questionのことです。

ガイドラインのCQの外来診療に役立つ部分をまとめました。

【CQ1】夜尿症の診察において積極的な治療は推奨されるのか?

推奨: 患者・家族が悩んでいる場合には、積極的に治療を行うことを推奨する。

解説: 夜尿は小児成長とともに治っていくものとされているが、0.5〜数%は解消されないまま成人へと移行する。また、夜尿症(nocturnal enuresis: NE)の既往を有する小児が、成人になっても切迫性尿失禁などの別の下部尿路症状(lower urinary tract symptoms : LUTS)を発症する可能性が高率であるという報告もある。さらに、小児のNE患者の自尊心や健康関連QOL(health related quality of life : HRQOL)が損なわれていることが報告され、治療により損なわれた自尊心やHRQOLを回復できる可能性がある。国際小児禁制学会(International Children’s Continence Society : ICCS)でも、NEが解消しないことによる精神的・社会的弊害は大きく、治療に取り組むことの重要性を唱えている。

【CQ2-1】夜尿症の診療において尿検査、血液検査は推奨されるか?

要約:すべての夜尿症患者に対して、初期診療で尿検査を行う。夜尿症以外の症状を認める患者に対して、血液検査を検討する。

解説:尿検査によって、糖尿病、尿崩症、潜在的な尿路感染症のスクリーニングが可能である。特に急に出現したNEをみた場合には必ず尿検査を行う。我が国ではNEに対するデスモプレシンの保険診療の条件に起床時の尿の浸透圧や尿比重検査が必要である。

NE患者に対して初期診療におけるルーチンの血液検査は不要である。

追加評価を検討すべき代表的な徴候

追加すべき徴候
(warning sign)
検査 想定される疾患
尿検査 血液検査
体重減少、成長障害、悪心 尿糖 血清クレアチニン 糖尿病、慢性腎不全
異常な口渇、夜間多飲 尿糖
早朝尿浸透圧
血清クレアチニン 糖尿病、尿崩症
急に出現した二次性夜尿 尿糖 糖尿病
その他、夜尿に加えて何らかの随伴症状を伴う 必要に応じて、尿検査・血液検査を検討する

【CQ2-2】夜尿症の診療において腹部超音波検査は推奨されるか?

要約:初期診療において、超音波を一律に施行する必要はない。昼間の下部尿路症状がウロセラピーや便秘治療で改善しない非単一症候性や尿症候群患者に対して、超音波検査による残尿測定を検討する。

解説:NEをきたす可能性がある腎尿路異常としては水腎症、低形成・異形成腎、異所性尿管などがあるが、これらが発見される確率は高くない。

小児の残尿量の異常所見

年齢 1回の残尿測定 複数回の残尿測定(推奨)
4〜6歳 残尿が30ml以上もしくは膀胱容量の21%以上 20ml以上もしくは膀胱容量の10%以上
7〜12歳 残尿が20ml以上もしくは膀胱容量の15%以上 10ml以上もしくは膀胱容量の6%以上

【CQ2-3】夜尿症の診療において腹部単純X線検査は推奨されるか?

要約:初期診療において、腹部単純X線検査を一律に施行する必要はない。

解説:便秘の有無が不確かな場合や直腸指針が困難な場合には、便貯留の有無を判定するために、腹部X線検査を試みてもよい。被曝の問題に留意する必要がある。

【CQ2-4】夜尿症の診療において排尿時膀胱尿道造影法(VCUG)は推奨されるか?

要約:初期診療においてVCUGを一律に施行することは必要ない。

解説:VCUGは再発性の尿路感染症があり、膀胱尿管逆流現象(vesicoureteral reflux : VUR)を疑う場合や、尿流測定(uroflowmetry : UFM)で尿勢低下があり、尿道の病変を疑う場合などが一般的な適応である。

 夜尿症に対しては

  1. 切迫性尿失禁があり、尿路感染の既往がある場合
  2. 切迫性尿失禁があり、UFMで尿勢低下もしくは腹部超音波検査を施行し残尿が認められ、機能性排尿排便障害(bladder bowel dysfunction : BBD)がない場合
  3. 切迫尿失禁はないが治療抵抗性で、UFMで尿勢低下もしくは腹部超音波検査を施行し残尿が認められる場合

【CQ2-5】夜尿症の診療において尿流測定は推奨されるか?

要約:初期診療において、尿流測定を一律に施行する必要はない。

解説:UFMの実施にあたっては、検査機器として受尿器と解析装置からなる専用機器が必要であり、夜尿症患者の初期診療としてUFMは必須検査ではない。

【CQ3】夜尿症の診療において生活指導は推奨されるか?

推奨:すべての患者・家族に対して、生活指導を行うことを推奨する。

解説:夜間の水分摂取は、就寝2時間前(理想的には3時間前)からの制限は考慮される。食事摂取に関しては、夕食時の塩分、タンパク質およびカフェインの過剰摂取を避けることは望ましいが、夜間の運動や習い事がある場合には柔軟に対応すべきと考える。また、紙おむつの使用の是非について現時点での結論は出ていないが、我が国の現状を鑑みると患者・家族の希望をふまえて柔軟に対応するべきである。夜間強制覚醒についても現時点でNE治療にどのように影響するかは不明であり、今後の研究結果が待たれる。

【CQ4-1】夜尿症の診療において排尿指導は推奨されるか?

推奨:単一症候性夜尿症に対して、排尿指導を漠然と続けないことを提案する。非単一性夜尿症の昼間の下部尿路症状に対して、排尿指導を行うことを推奨する。

解説:非単一症候性夜尿症に対する排尿指導は、随伴する昼間尿失禁をはじめとした下部尿路症状(LUTS)に対しては、症状改善に有効であることが報告されている。

「排尿指導」という用語には、NEやLUTSに対する多種多様な計画的行動療法が含まれる。行動療法としては定時排尿(timed voiding)、正しい排尿姿勢の保持、二段排尿(double voiding)、bladder training(飲水行動に加え排尿を我慢することによって膀胱容量を拡大する方法)、retention control trainingやholding exercise(1日1回できる限り排尿を我慢する方法)、stop start training(排尿途中に一時的に中断する方法)などの複数の用語・表現が見られる。しかし我が国で「がまん訓練」と呼ばれている行動療法に相当するものも含まれ、具体的な違いは不明瞭であり、明確な定義は示されていない場合も多い。

【CQ4-2】夜尿症の診療においてがまん訓練は推奨されるか?

推奨:単一症候性夜尿症に対して、がまん訓練を行わないことを提案する。非単一症候性夜尿症の昼間の下部尿路症状に対して、一律にはがまん訓練を行わないことを推奨する。

解説:がまん訓練は昼間尿失禁(daytime urinary incontinence)をはじめとした昼間の下部尿路症状(LUTS)の改善には寄与する可能性があるものの、単一症候性夜尿症の改善効果は証明されていない。一方、非生理的な我慢によって機能障害性排尿(dysfunctional voiding : DV)を引き起こす懸念があることを認識する。

【CQ5】夜尿症の治療において便秘の精査・加療は推奨されるか?

推奨:単一症候性夜尿症に対して、便秘の精査・加療を行うことを提案する。非単一症候性夜尿症の昼間の下部尿路症状に対して、便秘の精査・加療を行うことを推奨する。

解説:夜尿のある小児はない小児に比べて便秘を合併する確率が高く、非単一症候性夜尿症の方が単一症候性夜尿症よりも便秘を合併する率が高い。また、便秘治療によって、夜尿や昼間の下部尿路症状は改善するが、昼間の下部尿路症状の方が便秘治療によって改善する率が高い。

【CQ6】夜尿の診療によってデスモプレシンは推奨されるか?

推奨:デスモプレシン(経口薬)を第一選択の治療の一つとして推奨する。

解説:デスモプレシンの注意するべき副作用は、水中毒や低ナトリウム血症である。特に水中毒はデスモプレシン投与間の多量の水分摂取との関連が指摘されている。このためデスモプレシン投与前に水分を多量に摂取した時はデスモプレシンを服用しないように保護者および患者に十分に説明する必要がある。服薬1時間前から8時間後までの飲水を249ml以内に、あるいは就寝前1時間の飲水量を240ml以内に制限することが望ましい。

デスモプレシンは食直後に服用した場合、血中濃度が十分に上昇しない。そのため、服薬時間が夕食から少なくとも1時間以上空いているか確認が必要である。また、口腔内崩壊錠は口腔粘膜から吸収させないと血中濃度が十分上昇しない。

【CQ7】夜尿症の診療において抗コリン薬は推奨されるか?

推奨:単一症候性夜尿症に対して、抗コリン薬による単独治療を第一選択としないことを推奨する。デスモプレシン単独投与より早期の改善を望む場合や、デスモプレシンで効果が得られない場合には、抗コリン薬とデスモプレシンの併用療法を提案する。

解説:抗コリン薬は、非単一症候性夜尿性に伴う昼間尿失禁、尿意切迫感、頻尿に対して有効である。一方、単一症候性夜尿症に対しては単独治療の効果は乏しく、第一選択薬としては推奨されていない。抗コリン薬の最も注意すべき副作用と問題点は、便秘によるデスモプレシンの効果の減弱と残尿量増加による尿路感染症の発症であり、使用前に適切な排便・排尿習慣の確立を優先させるべきである。
なお、いずれの抗コリン薬も保険適応ではない。
国際小児禁制学会(ICCS)の診療方針においては、抗コリン薬は、通常、デスモプレシンと併用し、第二選択薬として推奨されており、経験的には治療抵抗性の単一症候性夜尿症の約40%に有効と考えられている。
投与量はオキシブチニン(ポラキス)2.5mg、トルテロジン(デトルシトール)2mg、フェソテロジン(トピエース)4mg、ソリフェナシン(べシケア)5mg(就寝前1時間前投与、無効時は2倍量に増量)、投与期間は1〜2ヶ月で評価すべきと記載されている。

【CQ8】夜尿症の診療において三環系抗うつ薬は推奨されるか?

推奨:デスモプレシン、アラーム療法、その両方による併用療法で効果が得られない場合に、三環系抗うつ薬を提案する。

解説:三環系抗うつ薬は国内外でデスモプレシン、抗コリン薬に次ぐ第三選択薬の位置付けにある。我が国で保険適応があるのはイミプラミン(トフラニール)、アミトリプチン(トリプタノール)、クロミプラミン(アナフラニール)である。イミプラミンの有用性は、RCTなどで明らかにされているが、過量投与によって致死的不整脈をきたすリスクがあることが懸念されている。

【CQ9】夜尿症の診療においてアラーム療法は推奨されるか?

推奨:アラーム療法を第一選択の治療の一つとして推奨する。

解説:アラーム療法の作用機序に関しては不明なことが多いが、重篤な有害事象の報告はない。

【CQ10】夜尿症の診療において早期からアラーム療法とデスモプレシンを併用することは推奨されるか?

推奨:アラーム療法またはデスモプレシンで効果が得られない場合には、両者の併用療法を推奨する。アラーム療法単独治療より早期の改善を望む場合や、デスモプレシンで効果が得られないことが予想される場合には、両者の併用療法を提案する。

解説:両者の併用療法は平均夜尿日数を減少させ、夜尿消失達成率が高いことが示されている。
国際小児禁制学会の治療指針では、夜間多尿かつ低膀胱容量を伴う場合、第一選択治療からアラーム療法とデスモプレシンの併用療法を推奨している。

【CQ11】注意欠如・多動症(ADHD)を併存する夜尿症に対して、ADHDの治療は推奨されるか?

推奨:併存するADHD自体の治療を夜尿症の治療を並行して行うことを提案する。

解説:夜尿症、特に非単一症候性夜尿症患者でADHDの併存が多いことは近年国内外から注目されており、ADHD自体に対する薬物治療によって夜尿や昼間尿失禁が改善・解消することが報告されているが、エビデンスレベルの高い報告は未だ少ない。

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